act.6 ハイエナの提案
『いい機会ですから、こちらへは二度と登校されないよう、伊奈西さんと若朔さんにお伝えいただけますか?』
「はい?」
問い返す声に、覚えず険が混じってしまう。どういう意味だろう。
緋凪の表情が見えない電話の相手は、構わず言葉を継ぐ。
『いえ……二、三日前から、伊奈西さんのお母様の件で、学校の周辺にマスコミがうろつくようになったんです。そちら様は、昨日から若朔さんにお世話になっていらっしゃるそうですから、お聞きでないかも分かりませんが』
「……それで?」
『校長から、昨日の時点で通達されたんです。今日は伊奈西さんが登校しても、すぐに家へ帰し、退学するよう言うようにと……毎日マスコミがうろついては、ほかの児童にも迷惑ですから』
どこかで聞いた話だ。というか、どこも同じか。そう思うと、自然スマートフォンを握る手に力が入ってしまう。
『校長の意向としては、伊奈西さんには二度とこちらには登校しないで欲しいそうです。つまり、繰り返すようですが、当校からはこのまま退学して欲しいと』
「退学?」
完全にトゲの混じった声音に、瞬時、相手が息を呑むのが分かる。しかし、前言を取り繕うことなく女性教師と思える声は続けた。
『……はい。あとはそのままほかの学校へ転校を考えるなり、ご自由にしてください。とにかく、当校としては伊奈西さんにこちらの学校へ通うのを辞めていただければそれでいいので、当校へ来続けるのでなければ、あとはそちらがどうされようと構いません。私個人としては、伊奈西さんはまだ四年生ですから、義務教育の最中に退学というのはあまり納得できない措置ではありますが……』
「なるほど? 正面切って反対するとあなたも職を失くすから、まあ長いモノには巻かれとこうって、そういう考えですか」
『いえ、あの……』
おたつく相手の反応に、緋凪はやや溜飲を下げた。だが、それだけだ。
(電話代わる前に、録音でもしとけばよかったぜ)
後手に回った自分の対応に、内心で舌を打つ。
そうしておけば、一乃が名誉を回復した時、学校のモラルを叩けただろう。
「そちらのお考えはよく分かりました。ただ、これは不当退校要求です。何かあった時には、それなりの対応をさせていただくので、お覚悟くださいと校長先生にもお伝えください」
では失礼します、と締めた緋凪は、相手の返事を待たずに通信を切った。
「お兄ちゃん……」
緋凪の傍に立って、通話を見守っていた文乃が、不安げに緋凪を見上げている。
金井という教師とやり合ったことで、毛羽立った気持ちを落ち着けるように深く息をして、柔らかい微笑と共に文乃に目を向ける。
「……文乃も今日からしばらくお休みだ」
「えっ?」
「お前が悪いんじゃない。ただ、向こうが分からず屋なだけだ。だから気にするな」
床に片膝を突いて、複雑な表情をした彼女と目線を合わせながら、スマートフォンを返した。泣きやんだばかりでまだ熱を持つ頬に、優しく手を這わせて、ポンポンと肩を叩く。
「……ところで文乃。一つ、訊いてもいいか?」
「何?」
緋凪は、一つ吐息を漏らした。正直言って、訊き辛い。だが今後、彼女の母親の無実を明かす過程の為には必要なことだ。
「先に謝っとく。多分、文乃には辛いことを訊く。ごめんな」
どういうコト? と問うかのように、文乃が小首を傾げる。円らな瞳から、視線を逸らしたい衝動に抗いながら、緋凪は口を開いた。
「文乃の母さんのこと……職業じゃなくて、今警察にいるってこと、もしかして学校の友達にも知られたりしてないか?」
途端、文乃は顔を強張らせる。
「悪い。でも必要なことだから、正直に答えてくれ。さっき、先生が言ってた。マスコミが、学校周りうろつき始めてるらしいな。それで、クラスの皆にも知れて、何か……嫌なこと言われたりとかしてないか?」
文乃は、尚も沈黙した。ただ、強張らせた顔の中で、眉根が寄り、眉尻が下がる。
その表情が、やはり雄弁に答えを語っている。
緋凪は、再度息を吐いて立ち上がり、文乃を抱き寄せた。
「……分かった。もう何も言わなくていい」
文乃の頭を優しく撫でていると、やがて彼女の手が緋凪の背に回る。
「……お兄ちゃん」
「ん?」
「悔しいよ」
ポツリと落ちた呟きに、緋凪は目を瞬いた。
それが見えない彼女は、緋凪の答えを待つことなく、背に縋り付いた手に力を込める。
「何でお母さんは何もしてないのに警察に連れて行かれなきゃならないの? 何で、あたしや弥生が嫌なこと言われなくちゃいけないの? お母さん何もしてないのに、何で知らない人があたしたちのコト訊いてくるの?」
言葉が、出なかった。
今まで誰も、彼女の怒りや不安を聞いてやらなかったのだろう。
あるいは彼女自身が、人に言ってはいけないと、自分を戒めていたのかも知れない。言えば、周囲に心配を掛けるから。妹の前では、弱い自分を見せまいとしていたということも、あるのかも知れない。
「ねえ、お兄ちゃん。お母さん、何もしてないよ。お兄ちゃんは、信じてくれる?」
顔を上げた文乃の黒目がちの目が、縋るように緋凪を見つめる。
「当たり前だろ。兄ちゃんだけじゃない。瑞琉おばちゃんや、冴綯姉ちゃんだって、信じてくれただろ?」
「うん……」
文乃は、ホッとしたように息を吐いて、再度緋凪の胸に顔を埋めた。
「大丈夫だ。必ず兄ちゃんが、母さんの無実を証明するから」
「うん」
文乃が小さく頷いた、直後。
チャイムの音が、静寂に近い空気を震わせた。
その音に反応してか、彼女の手に再度力が入るのが分かる。それまでローテーブルの前に座っていた弥生までもが、小走りに駆けて来て、緋凪の足にぶつかるようにしがみついた。
チャイムが鳴ったというただそれだけの現象に、過剰なまでの反応だ。
彼女らの母が誤認逮捕されてから今日までの間に何があったのかは分からないが、想像できる事象は色々ありすぎて緋凪には判断できない。
「……文乃。弥生、頼む」
静かに言うと、文乃は明らかな不安に濡れた目で緋凪を見上げた。
「多分、兄ちゃんの知り合いだ。怖い人じゃないから大丈夫」
微笑して見せて、安心させるように彼女の頭をポンポンと叩く。文乃はまだ緊張の解けない表情ながらも小さく頷いて、弥生を緋凪の足から優しく引き離した。
だが、朝霞が到着したにしては早すぎる。
(さーて。鬼が出るか蛇が出るか……)
そっと息を吐いて、インターフォンの『出』のボタンを押した。画面に映し出されたのは、昨日会ったいけ好かないあの男だ。
(ヤロウ、何でここに)
一瞬、居留守を使うことも考えた。しかし、誰も出なければ、あの男は一定時間チャイムを鳴らし続けるだろう。
それでは瑞琉や紗綯の安眠を妨害することになる。
チャイムをオフにすることも頭に浮かぶが、そうしたら彼がここへ足を運んだ理由が分からないままだと思い直した。相手の動向が見えないのは、今はあまり好ましくない。
(仕方ねぇな)
舌打ちをどうにか呑み込みつつ、やむなく「はい」とインターフォンに応答した。
『あ、こんにちはー。私、こういう者なんですけどー』
こちらの様子は、来客には見えない。よって男――北里功也は、まさか自分の目の前にある画面の向こうにいるのが緋凪だとはまだ思っていないらしい。
自分の名刺を画面一杯に映るように掲げる。
そして、こちらが名刺の内容を読んだと思しき間が空いたあと、名刺を引っ込めた。
『前にあなたが運営するクラブで働いてた、伊奈西一乃さんのことでお話伺えたらと思って来たんですがぁ。今、お時間よろしいですかぁ?』
緋凪は反射的に背後を振り向いた。
母親の名が聞こえたのだろう。弥生はすっかりおびえた顔になっている。文乃のそれも大方似たようなものだ。
彼女ら姉妹が、母親の誤認逮捕からこっち、母の名とセットで迫り来るマスゴミの、こういう心ない取材に曝されてきただろうことは想像に難くない。
緋凪が身振りで静かにするように文乃に示すと、文乃は心得ていて頷いた。彼女は妹を抱えるように連れて、姉妹の寝室代わりになっている和室へ引っ込む。
そのタイミングで、焦れたように北里が畳み掛けた。
『もしもーし。聞こえてますぅ?』
「聞こえてマスよ! ったく、お時間よろしいわけねぇだろが、このクソハイエナのマスゴミが」
『は……え?』
途端、明らかに家主が放ったのでない言葉遣いにか、北里が瞬時、戸惑ったように表情をフリーズさせる。
「只今家主は応対デキマセン。どーぞお引き取りを」
おざなりな敬語で重ねて言うと、北里はやはり唖然としていたが、同時に考えるような表情になった。
そして、やがて何かに気付いたのか、彼の口元がジワジワと笑みの形に弧を描く。
『……ねぇ。もしかして、そこにいるの緋凪君?』
「チッ、バレたか。あんたにファーストネームで呼ばれる筋合いねぇんだけど」
『じゃあ、何て呼べばいいのさ』
「必要なら苗字で呼べよ。あんたにファーストネームで呼ばれると寒気するし、そこまで親しくなった覚えもねぇ」
『あっ、そ。じゃあ千明君。ちょっと出て来れない?』
「あんたと雑談と洒落込むほど親しくもねぇぞ。言ったはずだぜ、お引き取りを、って」
素っ気ない対応にも、北里は頓着しない。
『いーじゃん、別に。僕は君についても詳し~く知りたいなぁ』
ゆったりと画面の横に肘を突いて、囁くように続けた。
『たとえば三年前の事件について……とかさ』
ピクリ、と眉尻が震えるのを感じる。しかし、北里にはそれは見えないはずだ。
こちらの沈黙をどう取ったのか、彼は言葉を継ぐ。
『公明正大な主義思想は結構だけどさ。君みたいな過去持ちの子が、よりによって僕に名刺渡しちゃったのはちょっと軽率だったね。それでなくても君の顔は目立つ。一度でも見れば印象は強烈さ。調べてみたら案の定ってヤツだよ。まだ君の写真はネットの海に漂ってる。もちろん、大本の写真はもう削除されてるし、漂ってんのも三年前の写真だけど』
「……何が言いたい」
普段よりオクターブ低い冷え切った声音にも北里は動じない。
『僕としてはさ、ゴシップが追えればそれでいいわけ。その対象は問わない。だから交換条件といかない?』
「交換条件だ?」
『そ。君が三年前の事件について取材に応じてくれるなら、僕は志和里ちゃんの件に関して手を引くよ。これならどう?』
「それ、確実に守られる保証がどこにあんだよ。第一、そんな交換条件に応じる義務も義理も俺にはないね。全っ然公正じゃねぇし」
『あれれ、いいのかなぁ、そんなこと言って。取材に応じてくれないなら好き勝手書いちゃうよ?』
「名誉毀損の上に脅迫罪だ。『生命、身体、自由、名誉、または財産に対し、害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役、または三十万円以下の罰金刑に処される』って定めた刑法第二百二十二条にしっかり抵触してるぜ、あんたのやってること」
『うっわぁ怖いね。それに随分詳しい。さすが、千明緋向サンの息子さんだね』
「父さんの名前出して動揺させようってのも甘いぜ。公的機関に通報できねぇと思ってるのもな」
『そうだね。いざとなったら君はイギリス大使館に守ってもらえる』
嘲るように言われたところで、緋凪のほうもそのくらいで動揺する可愛らしい神経は、とっくに磨耗している。
「そこまで調べついてんならもう帰れよ。でもって、月並みな台詞だけど二度と俺の前に姿現すな。その面、髪一本でも視界に入ったら顔の形が変わると思え」
『ねぇ、矛盾してない? 君だって刑法何条だっけ? 脅迫罪に充分抵触してるよ、その台詞』
「うるせぇ、正当防衛だ。そっちが先に脅迫して来たんだからな。殴り返したってイーブンだろが」
『んー……』
呻くような声を出しながら、北里は口元を自身の片手で覆ってまだ画面を見つめている。やがて、その手を口元から外し、人差し指を立てると口を開いた。
『じゃ、こうしよう。志和里チャンの母親の冤罪、晴らすの協力するよ。そうしたら君が僕の取材を受ける。これならどう?』
「はあ?」
緋凪は思う様、眉間にしわを寄せる。
「それこそあんたに何の得があるんだよ。いきなり善人の真似でもしたくなったってのか?」
こういう輩が、正義感の欠片でも持ち合わせているとは、とても思えない。
しかし、北里はゆったりと腕組みして続けた。
『君にとって悪い話じゃないはずだろ。それにそこにいるってことは、君はクラブ・セリシールのオーナー・若朔瑞琉サンや、伊奈西一乃サンとも関わりがあるんじゃない?』
「だったらどうだってんだよ」
『なら、彼女たちを君の言うところのマスゴミから守れる絶好のチャンスだよ』
「ますます分からん。取引がしたけりゃ分かるように話せよ。一応文章で食ってんだろ」
内容がゴシップでもな、と脳内で付け足す。
それを知ってか知らずか、北里は似合わない満面の笑みで特大の爆弾を落とした。
『だって僕、真犯人知ってるもん。多分ね』
***
「――何……ですって? それでまさか凪君、取引に応じる気じゃないわよね」
十時半を回って瑞琉の家まで来た朝霞は、緋凪が淹れたコーヒーの残りを手に一息吐く間に聞いた経緯に眉根を寄せた。
ソファの背に浅く腰を預けた緋凪は平然と「応じるけど?」と答える。
「凪君!」
朝霞が、座っていた高椅子を蹴るように立ち上がった。
「正気なの!? そんなの、凪君に取材したいが為の出任せに決まってるじゃない!」
「実際に聞いてみねぇと分からねぇだろ」
「聞くまでもないわよ、そんなハイエナみたいな」
「朝霞ちゃん」
その頃には起き出して来て、一緒にその場にいた瑞琉が、指先を唇に当てて和室のほうへ視線を動かす。
和室への襖は閉じているが、その向こうには幼い姉妹がいるはずだ。同様に起床した紗綯に姉妹の相手を頼んだものの、二人にはあまり不穏な話を聞かせたくはない。
それは朝霞にも分かっているのか、眉根を寄せたままの表情ながら、彼女は一旦口を閉じた。
「それで? その対談、今すぐにってわけじゃなさそうだけど」
朝霞が沈黙したのを見て取った瑞琉が、話を戻すように緋凪を見る。
「今日の午後二時に、近所にある喫茶店で待ち合わせた」
「嘘でしょ、そんな」
またも朝霞は反射で大声を出しそうになったのか、瞬時ヒュッと喉を鳴らし、声量を落とした。
「……どうしてあたしに一言の相談もないのよ」
「相談する時間があったと思うか?」
緋凪は、淡々と朝霞を見つめ返す。彼女は不満を隠さず、半ば緋凪を睨み据えた。
「保留にすることはできたでしょ?」
「そういう保留の間は、相手に付け込む隙を与えるんだよ。それが相手の油断になればいいけど、アイツの場合は多分違う」
「だからって」
「朝霞はアイツと直にやり合ってないからな。アイツとの間合いは俺のほうが分かってる」
直にやり合ってない――その事実を言われると弱いのか、朝霞がまた一瞬口を噤む。
その隙に緋凪は敢えて踏み込んだ。
「とにかく、それまでに今後の整理をしときたい。こっからなら待ち合わせの喫茶店まで徒歩で十五分だから、二十分前にここ出れば余裕で間に合う。猶予は三時間とちょっとだ、無駄に内輪で議論する時間はねぇ」
「それで済まさないで!」
抑えた声音で朝霞が鋭く反論する。同時に肉薄した彼女は、緋凪の胸倉を掴み上げ、逸らすのを許さない強さで目を覗き込んだ。
「分かってるの? 向こうはいくつだか知らないけど、体術の心得まであるならそれなりに修羅場くぐってるのよ」
「そんなの俺だって負けてねぇ」
「言い負かされない自信があるっての? あんたまだ十七よ。それだけの人生経験しかないガキが、海千山千のハイエナに舌戦で勝てる気でいるなら考え甘過ぎるって言ってるの!」
今度は緋凪が瞬時口を噤んだ。
「……生きた年数言われちゃ反論できねぇけど」
「本当にそう思ってるの? 生きた年数っていうのはね、侮れないの。ぼんやり生きてたってそれなりの経験になってるんだからね」
「だから倍生きてるあんたの忠告、黙って聞いとけってか?」
「うるさい、倍にはまだ二つ少ないわよ失礼ね!」
「二年前は倍だったじゃん」
「やかましい! 掛け算もマトモにできないの、高校生のクセに!」
「ねぇ、その対談、一対一でしなくちゃダメなの?」
脱線した舌戦に展開していくのを見兼ねたのか、それまでほとんど黙ってやり取りを聞いていた瑞琉が、ふと口を開く。緋凪は瑞琉のほうへ視線を転じて、軽く首を横に振った。
「いや、そういう約束はしてねぇけど」
「じゃ、朝霞ちゃんか宗君に付いてって貰えば?」
釣られるように瑞琉に目を向けていた朝霞の手から力が抜けて、緋凪の胸倉から落ちる。
リビングには、少し長めの沈黙が広がった。
やがて、朝霞が顔ごと瑞琉に向けていた視線を、ノロノロと緋凪に戻す。
「……画面越しにでも直にやり取りしたんでしょ? 本当に嘘吐いてる感じはなかった?」
「分かるかよ。アイツ、そーゆーところは朝霞の言う通り色々くぐり抜けてる所為か、嘘かホントかの区別は疎か、感情も碌々読めねぇからな」
「そこまで分かってて、どーして相手の話に乗っちゃうかな。ハッタリって可能性は考えないわけ?」
「仮にハッタリだったって分かったら、その確認ができるからそれでいいし、本当に志和里の父親の殺害事件について真犯人を知ってるってんなら願ったり叶ったりじゃねぇか。延いては文乃たちの母親の嫌疑を晴らす突破口にもなると思ったんだよ」
「それに、宗君なら現職の警官よねぇ」
いつの間にかローテーブルの上にお店を広げていた瑞琉が、身支度の一環か、ネイルの手入れをしながらのんびりと言う。
「もしそのハイエナ君が下手なことしたら、その場でお縄にできるわよ? 仮にそれが軽犯罪とか、軽い罰にしか処されない犯罪だとしても現行犯で前科が付くわ」
艶やかに紅くなった彼女の唇が、ふっと自身の爪に息を吹き掛けた。
「いくらいつもブラックゾーンの違法スレスレで逃げ切ってきたハイエナでも、現役刑事の目の前で前科の付く行動ができるかしら」
ゆったりとソファの背に肘を突いた瑞琉が、婉然と、それでいて獰猛に微笑んだ。
「度胸拝見といこうじゃない?」
©️和倉 眞吹2021.




