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act.2 急転

「ただいまー」


 春生はるきの退学が決まった二日後。

 今日は久々に不良からもスポーツ部の勧誘にも追われず、ごく普通に帰宅した緋凪は、合い鍵で玄関のドアを開けて中へ帰宅を知らせた。

 あれから、春生は学校へ行っていない。

 昨日、父がまず春生の両親にそれぞれ連絡を取り、春生の両親、つまり緋凪には叔母夫婦が一度日本へ戻ることになったらしい。

 とは言え、叔母夫婦は航空機での仕事をしているので(ちなみに叔父がパイロット、叔母がキャビンアテンダントだ)、父と同じようにおいそれとは休みが取れない。一番近い休みが叔母のほうで、一週間ほど先だと言われた。

 そのあいだに、一日でも早く春生を疎開させたい旨を告げた父に、叔母は彼女の夫となるべく早い空き時間に話し合いをすると返したそうだ。

 よって、まだ春生は千明緋向宅にお籠もりを始めたところということになる。

 今日も、春生は家にいるはずだった。けれども、昨日は緋凪の帰宅に、「お帰り」と返ってきた声が、今日はない。

 昼寝でもしているのかと、手洗いうがい顔洗いまで済ませた緋凪は、二階の春生の部屋の扉を、遠慮がちにノックした。だが、返事がない。

「……春姉?」

 返事がないのに、従姉とは言えさすがに異性の部屋に踏み込むのは気が引ける。しかし、どうにも部屋の中に人の気配が感じられない。

「……悪い、開けるぞ」

 一応断りを入れて、ドアノブを回す。

 まるで泥棒にでも入るような仕草で細くドアを開けると、目線だけで室内を確認する。やはり、部屋の主はそこにいないようだ。ベッドの上にも誰もいない。

(……変だな)

 一人で外出しないように父から堅く言われているはずだし、春生自身、今の状況ではそれが危険を伴うことくらいは理解しているはずだ。

 大きく扉を開いて、室内に踏み込む。室内に視線を走らせると、整頓された勉強机の上にスマートフォンが置きっ放しになっているのに気付いた。

(……ケータイ置きっぱってことは……トイレかな)

 だとしたら取り越し苦労だと思ったが、二階のトイレにも階下のトイレにも人はいなかった。

(ケータイも持たずに……どこに?)

 どう考えてもおかしい。

 ひたすら嫌な予感しかしなくなった頃、「お姉ちゃん!」と叫ぶ声と共に派手に玄関ドアが開閉する音がした。

 急いで階下へ降りると、玄関には春生の妹である冬華とうかが血相を変えて立っている。

 滅多なことでは表情を動かさないもう一人の従姉いとこが、珍しくその大きな黒目がちの瞳を不安でいっぱいにしていた。

 その瞳と視線が合った途端、彼女の言いたいことは伝わってきた。

「凪……お姉ちゃんがいないの。ケータイも置いたまま……」

 恐らく彼女は緋凪より早く帰宅し、緋凪と同じ行動をしたに違いなかった。緋凪は早々に自身の端末を取り出すと、父に連絡を取った。


 所轄の警察から連絡が来たのは、翌々日の午前十時を過ぎた頃だった。

 緋凪はもちろん、冬華もその日は学校へ行くどころではなく、欠席の連絡をして家にいたのだ。緋凪の母・みどり=セラフィナも同様である。

「……あなた……」

 受話器を置いた父・緋向ひなたに、翠が不安げに声を掛ける。

「……支度してくれ。緋凪と冬華も」

「……何なんだよ」

「所轄の警察からだ。春生が……西院凛さいりん学園のプールに浮いているのが見つかったそうだ」

「嘘っ……!」

 悲痛な悲鳴を上げたのは、冬華だ。

ふゆ!」

 短く叫ぶなり床に崩れそうになった従姉をとっさに支え、すぐ傍のテーブルの椅子に腰掛けさせる。

「……プールに浮いてただけか」

 冬華の代わりにしたくもない確認を取ると、緋向は眉根を寄せて答えない。それが、何よりの答えだった。


***


 それは、ドラマでよく見る光景のようで、現実感がなかった。

 入室する前に見えたのは、『霊安室』という単語。

 開かれた扉の中には、白布しらぬのを掛けられた――遺体、だろうか。明らかに人間大だということは分かるが、マネキンかも知れない、なんて、それこそ非現実的なことを考える。

「……確認しても?」

 並足で簡素なベッドに近付いた父が、ここまで案内してくれた刑事に確認している姿も声も、どこか遠くに感じられる。

「どうぞ」

 その刑事は、何を考えているのか分からない、淡々とした表情でベッドを示した。数日前、春生と緋凪に応対した、あの刑事だ。名は確か、井勢潟いせかたと言ったか――。

 父の手は、小刻みに震えながらも白布の端を掴み、そっと持ち上げる。

 その下から、見慣れた日本人形のような美貌が現れた。

「お姉ちゃんっ……!」

 弾かれたように冬華がベッドに駆け寄る。

「お姉ちゃん、やだ……お姉ちゃんっ、お姉ちゃん……!」

 冬華が頬に触れ揺すっても、春生はその堅く閉じた瞼を上げることはなかった。

 たちまち冬華の瞳からこぼれた涙が、春生の頬に落ちる。硬く白く、まるで本物の日本人形のようになった肌が、彼女がもう生きていないことを見る者に嫌でも実感させた。

「……どういう状況だったのです。死因は?」

 淡々としているように聞こえるが、父の声も微かに震えている。いつの間にか冬華の傍に立っていた母も、口元を押さえて冬華の肩を優しく撫でてやっていた。

 二人にも、春生は実の娘同然だったのだ。

「こちらへ。ご説明いたします」

 そう言うと、井勢潟はさっさと出入り口に向かって歩いた。

 父は母に向かって目配せすると、母は小さく頷いて、冬華と春生に視線を戻した。春生にしがみついて慟哭どうこくする冬華は、しばらくここから動くまい。

 自分は、薄情なのだろうか。そう思いながら、緋凪は無意識に前髪を掻き上げる。

 春生を姉同然に思っていたのに、今もそう思っているのに、彼女の変わり果てた姿を目にしても、涙さえ滲んで来ない。

 確かに悲しみも、喪失感もある。けれど、それよりも事実をちゃんと知りたい気持ちのほうが強い。

 一時の躊躇ためらいを振り切るように素早くきびすを返す。井勢潟と父が出て行ったあと、閉まり掛けていたドアの隙間へ滑り込むようにして彼らのあとを追った。

 廊下の先に見えた父の背中に、小走りに追い付く。父は、チラリと緋凪を見たが、特に何か言うことはせずに前方へ視線を戻した。


 霊安室を出た井勢潟は、署内本棟のミーティングルームのような部屋へ、父と緋凪を案内した。というより、井勢潟としては父だけを案内して来たつもりが、いつの間にかくっついてきた緋凪に目を留め、あからさまに眉をしかめる。

 そして、やや躊躇ためらったようなののち、「あの」と言って父を見た。

 父と目が合った井勢潟は、緋凪のほうに目配せして父に視線を戻す。しかし、父はビクともせずに言った。

「同席させてやってください」

「……ですが」

「息子はもう中一ですよ。説明すれば分かる年です。それに姪は……被害者の市ノ瀬(いちのせ)春生は、この子にとっては姉も同然でした」

 井勢潟は、尚も迷惑げな表情で父を見つめていたが、やがて諦めたように吐息を漏らした。

「……どうぞ」

 言いながら、室内を示す。

 緋凪に言わせれば、音楽室程度の広さの室内に、四角く長机が並べられている。井勢潟に手で示されるまま、奥まった場所に進んで座る父に、緋凪も続いた。

 それを確認した井勢潟は、父の近くの席へ腰を下ろした。

「君とは会うのは二度目かな。改めて、巡査部長の井勢潟です」

「……どうも。千明ちぎら緋凪です」

 緋凪は無愛想に返す。こいつがそもそも最初にちゃんと対処してくれてれば、と思うと不機嫌な声しか出ない。

 しかし、井勢潟は気にした様子もなく、父に視線を戻した。

「お電話でも軽くご説明致しましたが、姪御さんは西院凛学園の屋内プールに浮いている所を発見されました。第一発見者は、そこを授業で使う予定だったクラスの女子生徒です」

「その女子生徒の名前は?」

「それはご容赦を。千明さんは一般人ですからね」

「被害者の親族です。一時的ですが、春生を我が子として預かっています。いわば保護者ですが」

 食い下がった父の質問を、井勢潟は無視した。

「その女生徒によると、プールサイドに足を踏み入れてすぐ、市ノ瀬春生さんが水面に俯せに浮いているのを見つけたそうです。先日のお話によると、いじめやストーカーを苦にした入水自殺だとこちらでは見ています」

「そんな!」

 思わず緋凪は声を上げた。

「緋凪」

 たしなめるように名を呼ぶ父にも、つい声を荒らげてしまう。

「だって父さん! 自殺なんて有り得ないだろ! 三日前に学校辞めること決めて、春姉だって家ん中でおとなしくしてたんだ。それが急に自殺!? 遺書だってないのに」

「発作的に自殺することはよくある話だ」

 淡々と言った井勢潟に、中学生とは思えない冷え切った視線が向けられる。

「だとしたらケーサツにだって責任の一端はあるだろ」

 しかし、井勢潟もこう見えて警官だ。修羅場をそれなりにくぐっている大人の男に、中学生程度の睨みは利かないらしい。

「どういう意味かな」

 落ち着いた声音に、緋凪はますます腹が立った。

「だってそうじゃねぇか。四日前に春姉と俺がここに駆け込んだ時点で真面目に対処してくれれば、仮に自殺だとしても、春姉がそれを選ぶことなんかなかったかも知れねぇんだぞ。もっとも自殺なんかじゃないと思うけどな」

 すると、井勢潟は緋凪をやんわりと宥めるような声音で言った。

「自殺じゃないと思う理由は、つまり君の憶測だね」

「それだけじゃない。刑事サンの言うように発作的な自殺なら、何でわざわざ学校のプールを選んだ? もっと家の近くで手っ取り早く死ねる所がいくらでもあるし、その気になれば家の中でだってできないことはねぇんだぜ。仮に自殺の場所に学校のプールを選んだんだとしても移動のあいだに頭が冷えそうなモンだ。本当に(・・・)発作的な(・・・・)自殺なら(・・・・)な」

 途端、井勢潟は息を呑み、次いで不機嫌そうな顔になった。

 それを見澄ましたように、父が口を開く。

「息子の言うことにも一理あります」

「いや、お父さん。話して分かる年だとは言え、たかが中学生の言うことに本気で取り合うのですか?」

「私はあなたの父親ではありません。呼び方にはお気を付けてください」

 淡々と返した父は、緋凪に負けずとも劣らない冷えた口調で続けた。

「それに、たかが中学生と仰るが、江戸の時代にはもう元服が近い年頃です。息子より幼い者とて、その年なりに自我があります。年齢だけ見て一人前の人として扱わないのは、一種の侮辱ですよ」

「……失礼を」

 軽く会釈して謝罪の言葉を述べた井勢潟は、しかし心からそうは思っていないのがありありと分かった。

 父にもそれは理解できているのだろう。だが、こういう人種に心からの謝罪を求めても無意味だ。「話を戻しましょう」と短く挟んで言葉を継ぐ。

「とにかく私としても、姪の死因を表面上で決め付けず、もっと深い所の調査を強く要請します。春生の実の両親である妹夫婦も、それを望むはずです」

「いやしかし」

「我々が、四日前に一連の被害の状態を訴え出ていたのをお忘れなく。真摯に受け取ってくださらなかったそちらにも、息子の言う通り責任の一端はあるのです」

 井勢潟は唇を噛んで父を睨むように見据えた。まるで父が無理難題を押し付けていると言いたげだ。

 だが、やがて井勢潟が絞り出したような声で「最善を尽くします」と言ったのを一応の約束として、父は席を立つ。

「では、今後ともよろしくお願いします」

「はい」

 父と井勢潟が互いに一礼するのに、緋凪も倣った。ただ、どうにも不安感が拭えない。信用して大丈夫だろうか。

「春生はもう、引き取ってもよろしいでしょうか」

「いえ。事件性があるとすれば、司法解剖に回さないといけません。しばらくこちらで預からせていただきます。一通りの調べが済みましたらご連絡しますので、お待ちください」

 元弁護士として、決して少なくない数の事件に関わってきた父には、そう答えが返ってくるのは分かっていたはずだ。なのに、敢えて訊ねたのは、父も井勢潟に対し、緋凪がいだいたのと同じ不信感を持ったからだろう。中学生の緋凪が感じたことを、父が分からないわけがない。

 けれど、井勢潟が口にした返事に、微かな期待をしたのか。せめて、春生の死因を追及することで、初動捜査に遅れが出た過ちを、償おうとする気持ちがあることを。

「……分かりました。それでは改めて、よろしくお願いします」

 深々と頭を下げた父に、井勢潟は会釈で応えた。


***


「ねえ、君。千明さんのお宅の子?」


 春生が亡くなってから十日ほど過ぎたある日の帰宅時。そう声を掛けられて、玄関先の門扉に手を掛けたまま、緋凪は声のしたほうへ顔を振り向けた。

 視線の先にいたのは、女性だった。

 意志の強そうな黒い瞳が目を惹く、中々の美人だ。年の頃は、二十代半ばだろうか。キュッと引き締まった小顔は色白で、スレンダーな身体にも無駄な肉が一切付いていない。

 緩いウェーブの掛かった黒髪を掻き上げながら、女性は緋凪を凝視し、少し驚いたように目をみはっている。

「えっ……と、ごめんなさい、あの……日本語分かる?」

 明後日の方角の質問が飛んで、緋凪はそのコバルト・ブルーの瞳を、冷ややかに細めた。

「……一応日本生まれの日本育ちだよ」

 母が日英の混血である為か、緋凪の場合、四分の一しか入っていないはずの英国人の血がなぜか外見に濃く現れてしまっている。その為、欧米人旅行者に出くわすと必ず話しかけられるし、初対面の日本人にもこういう反応を貰うのは珍しくない。

 けれども、はっきり言って英語は得意ではない。母方の祖父との会話だって、未だに細かいところは日本人の祖母と母頼みなのだ。その外見で英語ができないなんて嘘だろうという目で見られるのにも辟易している。

 他方、『日本語が分かるらしい』という事実にホッとしたらしい女性は、安堵の表情で言葉を継いだ。

「じゃあ、十日前に亡くなった市ノ瀬春生さんのさんって、あなた?」

「重ね重ね言ってくれるな……男物の制服着てんだけど」

 いつものこととは言え、若干脱力しながら答える。

「あ、そうだよね、ごめん。あんまり綺麗だから、服装で判断したら失礼かと思って」

 ここまであっけらかんと言われると、早々に怒る気も失せた。

「で、あんた誰」

「あ、申し遅れました。あたし、瀧澤たきざわって言います。東風谷こちたに警察署の者なんだけど、お父様かお母様、いらっしゃる?」

 言いながら、女性はボトムのポケットから警察手帳を掲げて見せる。

「瀧澤……朝霞あさか?」

 聞き覚えのある名前だ。確か、父と春生が一緒に警察署へ行った際に、親身になってくれたという巡査長の名前だった気がする。

「あらら、失礼ね。年上に対する口の利き方がなってないみたいだけど」

 警察手帳をしまった朝霞は、やや顔をしかめて、緋凪をヒタと見つめた。

「ま、いいわ。こっちも女の子と間違えたし、チャラにしてあげる」

「何の用」

 朝霞の言い分を軽く受け流して、緋凪は門扉から手を離し、彼女に向き直る。

「東風谷警察署っていうと俺、悪印象しかないからな。税金ドロボーに使う敬語なんか知らねぇし」

 先刻から温度の下がり気味だった瞳は、あたかもその深い青色がそうさせるかのように、最早氷点下だ。

「理由は分かってんだろ。春姉の訴えを二度も無視して死なせた。東風谷署はこの件、どーゆー姿勢で向き合ってる訳?」

 すると、先刻までおどけるようだった朝霞の表情も、真顔になった。

「……返す言葉もないわね。あたしたちは……東風谷署の刑事は確かに、あなたの言う通りの失態を犯した。挙げ句に人を死に追いやった。それは認めるし心から謝罪するわ。春生さんのご両親にも……もちろん、あなたにも」

 居住まいを正した朝霞は、腰をくの字に追って頭を下げる。

「本当にごめんなさい。謝る言葉もないわ。だからせめて、彼女の死の真相を追及して明らかにしたい。あたしは、そう思ってる」

「ふん、どーだか。口では何とでも言えるさ」

 鼻を鳴らすと、朝霞が顔を上げた。次いで、その白い手が、彼女の髪を掻き上げる。

 縋るでもなく言い募ろうとするでもない、ただ静かな瞳を、緋凪はその青の瞳で見据えた。

「だから行動で示せよ。俺があんたたちを赦すかどうかは、それを見て決めてやる」

「もちろん。その為に今日、あたしはここへ来たの。改めて訊くけど、ご両親のどちらかはご在宅?」

「いや。さすがにあれから十日も経ったら、父さんも母さんも仕事に戻らなきゃならなかったみたいでな。母さんは七時頃帰ると思うけど」

 これが、被害者の実の両親なら話は違ったかも知れない。しかし、緋凪の両親は、春生の伯父夫婦であり保護者代わりではあるが、生みの親ではない。

 朝霞は何を思ったか、チラリと周囲に視線を投げ、緋凪に目を戻した。

「なら、春生さんの妹さんは?」

「冬……冬華なら、自宅だ」

「自宅?」

「ああ。近所にあるけど、普段は春姉と二人きりだったんで、ウチに居候してたんだよ。でも今、叔母さんが戻ってるから」

「つまり、春生さんのお母様?」

「そゆこと」

 結局、父も叔母が日本に帰国するまで、春生のことは言い出せなかったようだ。叔母は帰国後、空港からまっすぐ千明家に来て、初めてそのことを知り、相当なショックを受けていた。

 茫然自失状態だった叔母は、帰国から三日経った昨日までは千明家に居候していたが、そろそろ叔父が戻るのを思い出したのかどうにか気を取り直し(というより自身を奮い立たせ)、自宅へ戻って行った。その時、冬華も一緒に帰ったのだ。

 どちらがどちらの付き添いなのか、緋凪としては判別不能で心配ではあったが。

「それなら、春生さんのお宅へ伺うわ。あなたにも聞いて欲しいから、案内がてら一緒に来て貰ってもいいかな」

「……分かった」

 一瞬躊躇ったのは、荷物を置いたり着替えたりしたいなというのがチラリと頭を掠めたからだ。しかし、捜査が進展したというのなら、着替えなどよりもそれを先に聞きたい。

 緋凪は一つ肩を竦めると、朝霞を先導して市ノ瀬家への道を歩き始めた。


©️和倉 眞吹2021.

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