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ツァークの声を聞け。  作者: 十珀
3, efect
22/22

3-4

なんとか更新です。また音信不通に戻ります。今度はいつになってしまうんだ…

申し訳ないです。

 








 イザクやシーアに続いて少し開けた焚き火のある今日の寝床に戻ると、子供がいた。子供は俺たちの足音に気がつきこっちを見る。3人の背から少し顔を出すとそいつと目線があった。するといきなり肩をビクつかせてかかっていた毛布を頭からかぶる。




「おいおい、いきなりかよ」




 思わず呟く。シーアがその目つきだからなと小突いてくるが気にしない。そんなこと自覚済みだ。

 とりあえずため息をついておこう、でも近づかなければ話せないからそろりと怯えさせないように足を向ける。

 子供はますます震えて僅かな隙間から覗くだけだ。声をかけようとすれば




「お前、スカーサハの仲間かっ、めちゃくちゃにしやがって!」




 と砂をかけられる。ついてと言わんばかりにぺっと唾までそれはもうご丁寧に。

 …俺かてな、子供には優しくしてぇんだよ?ちくしょうめ




「…無理だな。初対面にしちゃあやってくれるじゃねぇか」


「うわっ、離せっ!!!」


「先にやってきたのはお前だろうが。このまんま放り投げられるかぶん殴られるか、どっちか選べ」


「ほぼおんなじだ!」


「うるせぇ、早くしろ」




 なんでこんなガキに唾かけられなきゃいけないんだ。それもよくわからん理由で。つかスカーサハって誰だよ、俺の知り合いにそんな奴はいないし会ったこともない。それは多分イザクも同じだから俺たちには全く関係ないってことだ。


 ガキは俺がいよいよ投げ飛ばしそうになったんで慌てて謝った。一旦睨みつけてから地面に下ろしてやると改めて向きなおる。とりあえず座って、シーアたちも俺の周りに腰を下ろす。イザクに「目怖すぎ」と頭を叩かれるが脛を殴ってやったから問題ない。

 悶絶してるイザクをよそに俺は、で?とガキに言った。




「お前は誰だ、そんでここで何してた?」




 まだ俺に不満があるのか顔をそっぽに向けたままで、答えようとしない。いい加減ね、俺もイライラするんだが。俺は子供の扱いっていうのが得意じゃない。さっきの話で少し虫の居所が悪いのにこれじゃあ、なぁ…

 ともあれもう一回、今度はドスを効かせて聞けば「ジーン…」とだけ答えた。



「ジーン、この辺りでは聞かない名前ネ。流浪カ」


「ううん、俺たちはそこの…沈んだ街に住んでた。俺たちのずっと前の人が作った街で、その人たちはずっと旅をしてたみたいだけど、その…」



 言葉が詰まる。どうした、と促しても続きを言おうとしない。

 俺はじゃあ、と言葉を変えた。



「今街を沈めてる水はそこの精霊の河の水だろう…その辺りに住むということはお前たちは精霊師の一族か」



 頷く。



「…スカーサハっていうのは沈めたヤツ、だな」



 頷く。



「なんで、俺が仲間だと思った?」


「…………感じが、似てる、から」



 その感じ、っていうのは見た目の話じゃないだろうな。力やそういった方向の感じ。こいつが似てるって言ったのは俺の呪いの感じなのかそれとももっと別の何かなのか…

 俺が答えを出す前にガキは俺のコートのポケットを指差した。



「そこにあるのと、スカーサハはすごく、似てる」



 そこにあるのは俺の記憶のカケラだった。

 食い損ねていたカケラ。何故か食う気に慣れなくてずっとポケットにしまいっぱなしだった。

 それが、似ているだって?


 俺は動揺した。追いつかなくて、シーアが代わりに聞きたいことをガキに聞く。すれば、スカーサハとかいう奴は真白い髪をした青目の女でありえないことを、要は魔法を使ったと言った。魔法は俺たち人間には使えない。使えるのはシーアやノインのようの魔人、それと一部の例外、そしてその例外の中にこういうのがいる。


 …〈神遺物〉を食う


 〈神遺物〉には俺の記憶(カケラ)も含まれていた。



「なー?その、スカーサハ?だかいう奴は本当に人間だったの?」


「魔神とかだったら、街に入ってこれない。そもそも河に近づけないから…」


「では、ほぼ確実に人間であった、ということになりますな」



 ガキは言った。俺のこのカケラとそいつは似てる、と。

 …人が俺の記憶を持ってる?

 そういうことになる。どういうことだ。それは。

 ぼおっとする俺の肩に手を置いたのはイザクだった。その目はとても落ち着いていて俺を諌めた。

 きっと俺の顔は、頼むような顔をしていたんだろう。イザクはジーンにそれが本当なのかもう一回聞いて、頷かれると息を吐いた。そして諦めるように笑うと「とりあえず、飯にしよう」と半分消えかかっている焚き火に目を向けた。





 □

「へぇ、あんた操魂師なんだ?」


「そうヨ。この辺りじゃちと珍しいかネ」



 何気に意気投合してんのはテオバルトだった。精霊と身近な人間にとって操魂師っていう人種は珍しい、どころか摩訶不思議な存在にも等しい。知識としては知っている、でも見たことがない。何を考えているかなんて文字の上じゃあ全くわからなかった。


 ジーンは興味深そうにテオバルトの杖や服を見ていた。話を聞いていると、やっぱり水と油のようだ。生活様式も信仰(まぁ当たり前だけど)、自己の認識すら違った。

 操魂師たちは自分を世界の中心に近いものと考えて

 精霊師たちは自分たちを摂理に使われるものと考える。



「ジーンはもう成人式はやったのカ?精霊師は成人とともになる聞いたヨ」


「来年だった。でももうほとんど一人前だけどね。杖さえあれば今すぐにでも精霊術使えるぜ」


「精霊師の杖って、アルキコの木から作るんだよな?」


「……なんで知ってんだよ」



 クッソ睨まれる。流石にそこまで露骨だと傷つくぞ。

 なんか覚えてたんだよ、と半泣きで答え、そういやなんで覚えてんだろう、と記憶を遡ってみた。


 最も、この世で一番信用できないのが俺の記憶な訳だが。












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