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私は世界を好きになる  作者: タチやん
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 少し遠くに空の生き物を発見。

 最初に見た時のように弧を描きながら飛んでいる。


 興奮してしまう。初めての友達が出来るかもしれないのだ。

 そして今なら逃げられても追い掛けられる自信がある。

 それはもう全速力で空の生き物に近付いていく。


 瞬く間に空の生き物へ近付き・・・止まれずぶつかってしまった。


 失敗した、速く飛ぶ練習はしていたけど、止まる練習はしていなかった。

 空には何も無いし広いから、急に止まる必要がなかったから。


 ぶつかってしまった空の生き物はビックリしたのか、すごい速度で遠くに逃げてしまった・・・と思ったら、下の植物の中に降りて行ってしまった。


 どうしたのだろうか?

 今までは見えなくなるまで遠くに逃げてしまうのに・・・でも植物の下にに居るのは分かっているし、ぶつかった事を謝って、許してもらえたら友達になってもらおう。


 私はゆっくり下に降りて、空の生き物が降りた辺りを探してみる。

 すぐに見つかったが、空の生き物は植物に引っ掛かって、グッタリとしていて、動かなかった。


 指で体を揺すってみる。

 動かない。

 手に乗せてみる。

 だんだん冷たくなっていく。


 飛んでいる時に真っ直ぐ伸ばされていた翼は、グシャグシャに折れ曲がっている。


 分かってきた。

 友達になりたかった空の生き物は、生き物じゃなくなったと。

 そして生き物じゃ無くなった理由は、私がぶつかったからだと。

 私が生き物を、生き物じゃ無くしたと。


 生き物が生き物じゃなくなる。

 私が生き物にぶつかると生き物じゃなくなるのだろうか?

 じゃあ触っても生き物じゃなくなるのか?


 そんなのは嫌だ!

 私は友達が欲しい。

 でも生き物じゃ無くすのも嫌だ。


 分からない。

 どうすれば良いか、分からない。

 教えてくれるモノも居ない。


 だけど・・・私は色々な事を知らないといけないのではないだろうか?

 自分が飛べたことだって、ついさっき知ったのだ。

 私は知ら無さ過ぎる。

 知識が無さ過ぎる。

 分からない事だらけだ。

 よく考えたら、今眼に見えている全てのモノが分からない。


 緑色と茶色のが植物だと言うことは分かる。

 では『植物』とは何か?

 下を見ると地面がある。

 じゃあ『地面』とは何か?

 上を見ると青い空がある。

 『空』とは何か?

 手の上の空の生き物だったモノを見る。

 『生き物』とは何か?

 自分の手を見る。

 『私』とは何か?


 分からない事だらけだ。

 そもそも、私は自分の事すら分からない。


 怖くなった。

 知らな過ぎる事に、知らない事で失敗をする自分に、生き物を生き物じゃ無くした事に。


 知らないといけない。

 知って、分かって、理解すれば、自分の行動で失敗しなくなる。




 気付くと青かった空が赤くなっていた。


 どの位此処に居たのだろうか?

 ずっと洞窟にたから、空が赤くなるなんて知らなかった。空が青いのだって知らなかった。


 青い空も好きだったが、赤い空は綺麗だ。


 周りを見る。

 緑色だった植物は、赤い空の色で黒っぽく見える。それが赤い空の色を際立たせ、より赤く輝く空が綺麗に見える。


 今まで直視できないほど眩しかったモノが、遠くで消えてしまい、それを追うように赤い空が遠くへ消えていく。

 辺りは暗くなってしまった。

 洞窟の内と同じ真っ暗な世界。だけど洞窟より少し明るい。

 空を見上げる。


 そこには小さな光の粒が無数に、数え切れないほど散りばめられていた。


 青い空が好きだ。

 赤い空は綺麗だ。

 この空は・・・何も考えられなかった。

 綺麗過ぎて・・・どんな表現も出てこない。


 翼を羽ばたかせて空高く上っていく。

 もっと近くで小さな光の粒を見たかったから。

 だけど、どんなに上っても光の粒は大きくならない。

 そのうち翼を羽ばたかせても体が上らなくなってしまった。そして寒かった。

 私はもう少し寒くても大丈夫だったが、手に乗せていた空の生き物だったモノの体がとても冷たく、固くなっていた。


 ビックリして急いで地上に戻った。

 また失敗してしまった。

 もしかしたら私以外の生き物が空高く飛びすぎると、冷たくなって固まってしまうのかもしれない。

 だから空の生き物は同じ高さで飛んでいたのだろう。


 空を見て感動していた心は、自分の失敗で冷たく固くなってしまった空の生き物だったモノを見て、再度罪悪感に潰されていった。


 綺麗な空をもっと見ていたかったが、これ以上失敗するのも嫌だったので、洞窟に帰ることにした。

 手の上にある空の生き物だったモノをどうするか迷ったが、此処に置いていくわけにもいかないので、一緒に洞窟へ連れて行く事にした。

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