テンプレ異世界ものは、「知っている」ことが前提にある。
この手のエッセイ、いわばなろう論とでも言うべきものはきっと山のように転がっているでしょう。
でも叫ばずにはいられない。
君たち異世界に行ったからって、やる気出しすぎ!
作中小説 テンプレ夫君の異世界譚1
~テンプレ夫君、爆誕~
ごく普通の高校生だった俺は事故にあって死んだ。と思ったら金髪碧眼の若い女(美人)に抱かれていた。
どうやらネット小説でおなじみの異世界転生ってやつをしたらしい。
転生赤ん坊特有の羞恥プレイを一通り体験した俺は、普通の赤ん坊ならまだ腰も座らない頃から筋力トレーニングと文字の勉強はもちろん、魔法と魔力増強トレーニングに励んだ。
幸い、生まれた家が名門貴族だったので、魔法書はたくさんあった。
家族には秘密だが、生後半年くらいには歩けるようになっていたので、夜中にこっそり書庫に忍び込んで読み漁った。
限界まで魔力を使って回復させるというおなじみの方法で、俺の魔力量はすでに恐ろしいことになっている。
転生チートばんざい。
転生や召喚、トリップに限らず21世紀日本に生きる(主に)若者が、なんかよくわからないけど異世界に行くタイプのお話、いわゆる異世界ものという、この「いわゆる」が頭に付くようになった頃あたりから、「いわゆる異世界もの」の様子が少し変わったように思います。
これはゲームの世界に転生する場合などでも同様なのですが、異世界に行ったあるいは転生したことに関する説明が、「(主人公の)僕はネット小説で読んで知ってるけど、(読者の)君たちも“もちろん”知ってるよね」で省略されるようになったのです。
で、読者の方はというと、はじめは、なにそれ、主人公君なろうユーザーなの、メタいわぁ。ていうか作者手抜きしてんじゃないわよ、と思うかもしれないけど、そのうちこのスタイルに慣れて、あ、いつものパターンね、オッケーオッケー。今回は神様の手違いタイプか。能動的にチート選べていいんじゃないですかね、程度にしか感じなくなる。
つまり、「異世界に転生(召喚でもトリップでも)する主人公は、ネット小説やライトノベルで似たような状況の話を読んだことがあり、また読者も同様なので詳しく説明する必要はない」というお約束が生まれたのである。
テンプレは自分の言葉で説明しなければならないことが少なくて書きやすいから。読者の方も、きっちり一字一句読み込まなくても、ああ、なろうテンプレね。で理解できて楽だから。
そんな理由で、本来欠かせないはずの説明部分が省略され、しかも許されている。
ちょっとした空き時間に端末を開いて、さらっと1話数千字程度の文章を読むというミニマムな読書スタイルにある意味マッチしているといえるかもしれませんね。
それにしても、転生主人公さんたち、生まれて間もない頃からそんなに筋トレして大丈夫なんでしょうかね。
子供のうちから筋肉をつけすぎると背が伸びにくくなるとかいうじゃないですか、いつも心配になります。
時代劇や韓流ドラマがお茶の間のお年寄り、中高年の奥様方に好かれる理由とよく似ていますね
旅先で困っている人に出会ったご隠居が、なんやかんやあって悪代官邸に乗り込んで印籠を見せつけるまでの一連の流れの安心感。大いなるマンネリ。
今週登場した地域の特産と人の生業と悪代官が何を狙っているのか。それさえおさえておけば、
「今何分?」
「8時25分、まだ由美かおる風呂には入ってないよ」
「わかった、チャンバラまでには戻るね」
と、だいたい決まった時間配分に従って、自分の見たいシーンだけ見ても問題ない。話はわかる。
いわば水戸黄門現象がなろうテンプレに起こっているのです。