これからが大変って時
よく考えてみれば、私は金の扱いにおいてはド素人だ。
そういう点では、損得のわかる金銭面に関して有能なパートナーが必要だろう。
そこで、他にどんな人材が必要かを、自分なりに考えていき。
揃えてみた。
「嬢ちゃんは俺が守るから、ガキは見回りにでも行ってな。」
「僕の方が優秀なので、あなたはお帰りになられてもいいんですよ?」
「お前だけじゃ頼りないから俺が呼ばれたんだろうが。」
「頼りないのはあなたの方では?」
顔を合わせるたびに喧嘩しているのは、ボディガードとして雇った二人。
雇い始めてから数日、毎日飽きずによくやるものである。
それぞれ別の経緯で雇ったので、いわゆる商売仇でライバル同士だから仕方ないのだろう。
まぁそれが狙いというか、好都合なんだけど。
ボディガードに裏切られたら打つ手がない。
一人が裏切ったらもう片方に守ってもらえる状況にするために、わざわざ別の所から雇ったのだから。
でも無視とかしないで積極的に話しかけにいってるあたり、なんだか...。
「二人とも、本当は仲が良かったり。」
「しません。」
「しねぇよ。」
えぇ~、どうだか。
「朝食の準備できましたー。今日はスクランブルエッグだよ。」
声をかけてくれたのは、一応メイドとして雇った親友だ。
絶対に裏切らないと信用できる人が傍にいて欲しかったので、彼女を勧誘した。
同性の存在は本当にありがたい。
家事手伝いは彼女一人が全般的に仕切ってくれている。
住むために建てたのは小さめの家なので、彼女だけでもなんとかやっていけているようだった。
「スープが冷める前に食べちゃってくださいね。」
「了解。」
どうせ働くならメイド服を着て成りきりたいという希望に答えての雇用だけれど、実際のところ上下関係は無しだ。
親友として、そこは譲れなかった。
「すいません。食後でいいので、確認してほしいことがあるのですが。」
ファイナンシャルプランナーとして活躍してくれている、おじ様も食卓に現れた。
なにせお金に関する知識があまりにもなさすぎるので、専門家は絶対に雇おうと決めていたのである。
おかげでとても助かっている。
給料の相場とか、買い取った島で必要な物資の買い取りだとか、他いろいろ。
ボディガードさんにもチェックしてもらっているし、実際の資金は私がやりくりしているので、心配することはないはずだ。たぶん。
「ところで、今後の雇用についてもあとでお聞きしたいのですが。」
「あ、しばらくはこのままの人数にしようかなって考えてるんですけど。どうですかね。」
だって知らない人が増えても安心できないし。
顔と名前も覚えきれる自信がないし。
今のところ、それほど人手不足に思えないし。
「このままの人数、ですか。しかしですね。」
「俺は賛成だ。むやみに人手を増やしたところで悪人が紛れ込む危険性がある。」
「僕たちだけで十分ですからね。同意見です。」
おじ様の話を遮って、ボディガードの二人が同意を示してきた。
やっぱり仲いいんじゃないのかな。
「...まぁ、皆様がそうおっしゃるのであれば。」
「大丈夫そう?」
「今のところは。」
増やしたがってたようにみえたけど、そこまで重要じゃなかったらしい。
まさか二人に脅されて諦めた訳じゃないよね。
お金の使い所を一番わかってる人のはずだし、人員が必要になった時にはまた提案してくれることだろう。
「さて、次は何にお金を使うべきかなぁ。」