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バルガク。  作者: ホワイト大河
第二章 気づいてしまえば、戻れない
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ようこそ!生徒会執行部(3)

 12月10日(月) 17:26



「今年の体育祭の日程は……」

「6月3日(日)?」

「……えっと、離任された先生のリストは……」

「英語科二宮良助先生、数学科古谷翔子先生、社会科押切直樹先生、技術家庭科金谷由紀夫先生の四人っしょ。」

「うーん歴代生徒会長のリスト……」

「初代・二代目久保佳織、三代目有明辰巳、四代目坂東直樹、五代目岡本順平、六代目横田拓北、七代目・八代目神崎一樹、現九代目花園総希。」

「……その中で六代目のスローガンとその説明が……」

「「文武両道」、会長は弓道部部長の横田で、生徒会のシステムは大きく変えないまま、部活面での強化に当たり、弓道部と剣道部はその年初めて全国大会に出場、また水泳部、演劇部、ESS部が創設された。また学力面も大いに強化され、学年一位だった横田を中心に、広島三学園の中で平均学力が、OR学園を抜き、バルガクがトップに立った。」


この人の頭どうなってんの?

頭の中の辞書を引くかのように、思い出す作業の時は終始目を閉じ、

眼鏡のブリッジに人差し指を当てている。

それからまるでネットの検索結果を読み上げるかのように、

淡々と必要な情報をきっちり取り出してくる。


それをささっと紙に写したあたしは、横に座る月山先輩にそれを渡す。

すると月山先輩が、達筆でその紙をペンで清書していく。


……あれ、この作業ホントにあたし必要かしら?あれ?

あたしが不安に思い始めた時、生徒会室のドアが勢いよく開いた。

翔ちゃんだった。顔が青ざめ、すごく汗をかいている。

息切れを少し整えてから、絞り出すように彼は言った。


「……わ、綿華……いや、誰でも良いんすけど……た、助けてください……」



  ○   ○   ○   ○   ○   ○


神話では、無謀な人間が神に幾度か無謀な戦いを無謀にも挑んできたものだ。

実にそれを体現しようとする無謀な人間が、神の目の前に立っている。


「上川大樹。このグループ分け……やはり素晴らしい采配だと思いませんか。」

「ハッ!全く思わんな。貴様と一緒とは、狂っている。」

「毎度の事ながら、知覚が致命的に歪んでいるようで。私もあなたと共に仕事がしたくて喜んでいるわけではありません。」

「ハッ!大方貴様の目論みは分かっているわ。神と戦いたいのだろう。」

「無論次の定期試験では、貴方に一歩も負けるつもりはありませんが……、こうした総合力が試される「書類整理」でも、貴方を上回ってみせましょう。」

「ハッ!それは面白い冗談だ。ところでその勝負とやら、一人でやり給え。あいにく神はそんな遊びに付き合う程暇ではないのでな。」

「おや……敗北が怖くて逃げるのですか?」


……実に神をイラつかせてくれるものだ、勝村幸夫。

たかが人間のオス一人に構うのは面倒だが、

二度とこんな愚かな人間が現れぬよう制裁を加えるのも神の仕事だ。


「仕方あるまい。完膚無きままに叩きのめしてくれよう。」

「こちらの台詞ですよ。では枚数勝負という事で良いですか?」

「ハッ!……いつでも始め給え。」

「その顔、青ざめさせてあげましょう。」


残念だが神も進化する。以前の事務局三人での勝負の経験から、

神は効率のいい方法を学んでしまったのでな。

勝村幸夫もなかなかのスピードで進めるが、

その程度で神に勝てると考えたとは愚かな人間らしい。

「教祖」だろうと所詮は人間。さて神の祝祭を始めよう。


ハッ!手が動く頭が動く全てが動く!

心なしか勝村幸夫はスピードが落ちて来たぞ!

ふははは!その程度で神にかなうものか!!ふははは!



○   ○   ○   ○   ○   ○


「大変よ!」


翔ちゃんと共に、二年会議室へ飛び込んだあたしを、

静かに見つめたのは菊池先輩だった。

その横ではすごい速さで、火花を散らしながら、

何やら競っている勝村君と神様が居る。……はーホントあの二人は。


「……何だ?」


隣の戦いを全く気にも留めずに、自分の手を動かし続ける菊池先輩。

あたしたちのグループとは違って、ここは完全に個人競技ね……。


「いや、後藤先輩と渋谷先輩がケンカし始めて……ちょっと俺には手が付けられないんすよ!」

「後藤先輩の事なら菊池先輩がよく分かってるかな、と思って助けを求めに来たんですけど……」


まだ汗の渇ききってない翔ちゃんをあたしがフォローすると、

菊池先輩がふうとため息をついて立ち上がった。


「……行くか。」

「あ、ありがとうございます!ホントすんません……」

「多目的室だったわよね、早く戻った方が良さそうね。」


変に盛り上がるあの二人は、お互いの事は全く見ておらず、

こちらにも完全に気づいて無さそうなので、

放っておいて、菊池先輩を加えた三人で多目的室へと向かう。


腑に落ちなかったのは、感情的な後藤先輩はともかく、

それに対して、どこか落ち着いて見えた渋谷先輩が、

その喧嘩の中心になっているという事だ。

そんな事をひとり呟いていると、菊池先輩はそれを黙って聞きながら、

何か思うような所がある素振りを見せていた。



「……お前それでも責任あんのけ!?選ばれたからにはちゃんとするのが、当たり前だっぺ!」


多目的室の扉を開ける前から、そんな怒号が聞こえた。

菊池先輩が先頭に立って戸を開ける。

いきり立っていた後藤先輩が、急に静かな声でこちらを向く。


「……博明……」

「俊平、落ち着け……」

「けどよ博明、この野郎は」

「……花園が逃げて来たぞ。」

「うっ……」

「……静かにしてろ。」


あっという間に後藤先輩を大人しくさせた菊池先輩。

やっぱり二人は見えない絆のようなもので結ばれてるから、

連れてきて正解だったんだとあたしは思うと同時に、

どうやらそれ以上の「問題点」とあたし達が対峙する事を予測した。


「……それで、渋谷先輩、あなたの持論は……」

「綿華さん彼氏居んの?」

「……は。」


渋谷先輩だ。赤髪を垂らして、小さな机の上に両足を置き、

その足は組んでいて、さらに口には火のついてない煙草をくわえている。

どちらかと言うと真面目そうなタイプだと、あたしは思っていた。

ところで今の質問は何だったのだろうか。えーっと疲れてるのかな?


「ってか処女っぽいな。処女キタコレ。」

「は。」

「良くしてやっから一発ヤろうぜ。ゴムねェけど良いよな?」


「はああああああああああ!!!!????」



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