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バルガク。  作者: ホワイト大河
第二章 気づいてしまえば、戻れない
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ようこそ!生徒会執行部(1)

第六部「生徒会選挙に神現る」を読むとより分かりやすいです。

 12月10日(月) 16:21


こんにちは。綿華小百合よ。

短い間ながら、語り手を務めさせてもらうわね!

こういうの、あまり慣れてないけど……まあ雰囲気で何とかするわ。

とりあえずみなさんよろしくね。




「……おい、何をしてるんだ。」


神様は私を何度か呼び掛けたらしい。

神様があたしの前に来て、その青い眼鏡が視界に入るまで、

あたしは全く気付いていなかったみたい。


「あ、そうね、行きましょうか!」


今日は執行部会で、始まるまでもう十分も残っていない。

何となく息苦しいあの空間には、まだあまり慣れてないから、

あたしは足繁く通う事が出来ないでいる。


翔ちゃんは早くも執行部に溶け込んでいるのか、もう姿が見当たらない。

まあいずれ慣れるんだろうけど、やっぱり先輩たちの中で、

小百合節も発揮できないから、まだ動きづらいのが普通でしょ?

神様もこうしてあたしを待ってから行くわけだし。


あたしたちは廊下に出た。

冬の寒い風が、換気で開けられた窓から吹き付け、神様の前髪を揺らす。

多くの生徒は部活に向かうなり下校するなりするから、

階段を下へと下って行くわけだけど、

あたしたちは生徒会室のある四階へ上がって行かなければならず、

しかも三階から下りてくる三年生とすれ違う。

……この時期の三年生は、みんなどことなく暗い面持ちで、

聞こえてくる話題も入試についてばかり話してるわね。


「あっという間に一年終わっちゃったわね。」


あたしが思わずつぶやいたのは、そんな感想だった。

まだそれほどこの学校に居た気はしないのに、もう一年も終わり。

学園生活の三分の一を終えた事になるのは不思議だった。


「ハッ!神の世界では年などという単位は取るに足らないものであり」

「う~ん……時間止められないかしら……」


あと二年この学園で過ごしたら、あたしは今すれ違った三年生たちの様に、

受験勉強に明け暮れるのだろうか。どんな自分になるんだろ?

神様の話を適当に聞き流しながら道なりに進むと、

他の教室よりも若干古びた様子の生徒会室にたどり着いた。

相変わらずその戸は、どうしても他の教室よりも大きく感じてしまう。

……グイグイ開けようとする神様を一度止めて、深呼吸した後に、

扉へと左手を伸ばすと、ドアはひとりでに開いた。


「大樹!何してるっぺ!綿華さんも!遅いっぺ!」

「ハッ!それは申し訳ないです。まだ一応三十分にはなってないかと。」

「それでももうみんな来てるっぺ!」


後藤先輩だ。このテンションでいきなり現れる点を除いては、

後輩思いで面倒見のいい良き先輩だとあたしは思ってる。


「急がなくていいぞ!ただ、もうすぐ始める。」


桜塚先輩はそう答えつつ、今日配る予定なのだろうプリントを整えている。

横には終始笑顔の花園先輩が。本当にあの四兄弟は得体が知れないわ。

翔ちゃんや渡君を含めた一年生ももう席についていたので、

今度立ち止まり神のポーズをしていた神様を無理矢理席へと誘導する。


神様の真横の勝村君が、神様が遅刻したのを軽く鼻で笑ったようだった。

神様は応酬とばかりに何かしようと企んだみたいだったが、

花園先輩が桜塚先輩に目配せし、間もなく会議を始める。



「じゃあ時間になったし、メンバーも揃ったから始めるぞ。今回は引き続き書類整理をやってもらう。えー前回は事務局にやってもらったがその続きだ。今回はまた前のとは違うからな。」


桜塚先輩が早速二十束くらいの書類をそれぞれに行き届くように配り始め、

あたしはそんなに書類を作る必要があるのかと少し疑問に感じたが、

まあそういうものなんだろうと思った。

……というかこれが保健委員長の初仕事なんですか。

あたしのななめ前方に座る花園先輩がそんな疑問を見越したように説明を始める。


「前回は皆さんに集まってもらっただけだったので、今回が初仕事ですね。一つ理解しておいていただきたいのは、皆さんは委員長であると同時に、生徒会執行部という組織の人間であるという事です。こうして全員で共同作業を行うという事は少なくありません。」

「まああまり面倒じゃない程度だがな。それを一番やんなきゃならないのが事務局だし、基本は事務局にやってもらうんだが、今回のは期限が早くてな。」


肘をついて別の所を見ている月山先輩。口を開けてボーッとしている後藤先輩。

何故か一人上から目線で勝ち誇っている神様。事務局大丈夫なの?


そうして円卓の向かい側の事務局を見ていると、

右隣に座った渡君が、パラパラと書類をざっと見た後に発言した。


「これだけ量があるなら、個人で書類を作成するよりも、幾つかのグループで分担する方がより効果的だと思いますが。」

「そうですね。ご安心を、もうグループ分けを考えていますので。」


渡君の考えの一歩先を行った花園先輩が、また桜塚先輩に目くばせし、

それから桜塚先輩が黒板にそのグループ分けを書き出した。


A:★月山和佳子 飯島聖也 綿華小百合

B:★上川大樹 勝村幸夫 菊池博明

C:★後藤俊平 花園翔希 渋谷隼人

S:★花園総希 桜塚翼 渡透


「S以外のチーム、A、B、Cについては、一度同じ仕事をやっている事務局のメンバーをリーダーに据えますので、その指示に従って下さい。私を含めたSチームは、書類作成には携わらず、今後の計画案を立てていきます。」


まあ誰がどう見ても分かる通り、仲良しで集めた組分けではなかった。

二年生同士の関係はよく知らないので、この中であたしが戦慄したのは、

神様と勝村君が同じチームに所属している事だった。末恐ろしい。

でもそのもう一人が菊池先輩。……うーん何とかなるかもしれない。

当のあたしはと言うと、豊満グラマラスな月山先輩と、掴み所のない飯島先輩。

親しくなるチャンスって事よね。うんうん、多分大丈夫!


書き終わった桜塚先輩が、チョークのついた手を払って、

紅い前髪をわずかに払った後、少し笑った。


「見ての通り、親睦も兼ねてるからな。仲良くやってくれよ!」


その時桜塚先輩が、一度花園先輩の方をちらと見返し、

花園先輩も、いつも通りの笑いと少し違う意味ありげな笑いだったので、

恐らくこのグループ分けに何か意図があるのだという事は感じ取った。

それがあたしには分からない意図だったのかもしれないにしても。


話の切れ目に、二組の飯島さんと同じ髪、似た顔をした飯島先輩が、

その資料の数を見ながらつぶやいた。


「……これ今日一日で終わる量じゃないっしょ。」

「え?ああ、そうだな飯島。一週間を一応期限とするか。」


飯島先輩が、桜塚先輩の声を聞いて、ああ、一週間あるのかと、

少し安心したのは束の間で、すぐ驚いて立ち上がった。


「ちょっと待てって、え?来週試験じゃねーの?」

「執行部のメンバーは基本試験に困ってないはずだが。困ってるとしても拘束するわけじゃないから、空いた時間に自分で勉強してくれ。」


……とんだ無茶振りも良いとこね。

ブラックだわ。とは思うけれど、抗う術もなく。



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