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バルガク。  作者: ホワイト大河
第二章 気づいてしまえば、戻れない
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俺の嫌いな引っ込み思案(10)

  ○   ○   ○   ○   ○   ○


今日は最後の日です。人類最後の日という話を聞いた事がありますか?

聞いてなくても構いません。私の人生の方が悲惨です。

あ、すいません人類じゃありませんでした。豚でした……



「おい恒太!」


懐かしい声が僕を呼ぶ声がして、反射的に振り返ると、

そこには……今日の五組見張り番のドアマンの忠告を無視して、

ムリヤリ教室の中に扉から顔を突っ込んだ、達也さんが居ました。


僕の席は教壇から見て一番左の列の後ろから二番目なので、

さらにちょうど後ろの席の人が席を空けていたので、

達也さんは目と鼻の先でした。


ってあれ、何で達也さんここに……。

一緒に食べていたテル君が私の背中を二発ほどこっそりたたきました。

……どうやらテル君には全てバレているようです。あはは。


「……ど、どうしたんですか?」

「お前忙しいって聞いてたけどテルと呑気に昼食べてんだな。まったく、お前うちのクラスに来るの面倒になったのかよ?」

「……あ、いや、これはたまたま……」

「まあ良いや、今日の放課後空いてるか?試験近いからまた勉強しようぜ。」


「あ、普通に部活があるので……」


わーい運命って大好きです。達也さんずっこけました。

色々笑いたいくらいです。なんか感情が上手く整理できません。

あはは、せっかく誘ってくれたのに部活が……みんな大好きです。


「じゃあまた日曜にうちに来いよ。日曜なら空いてるだろ?」


僕はせき込みました。

今までずっとここに来なかったのに、そんな急に積極的な……


「決まりだな。また国語と英語は頼んだぞ。数学は教えてやるから。」

「あ、全然教えれるレベルじゃないですけど分かる範囲なら……それと、数学は教えてもらわなくても結構ですはい。」

「なんだよ、俺の指導が受けられねえって言うのか!冷たい野郎だ!」

「というか全然僕は数学というものが理解出来ないので……」

「……わーったよ、まったく、じゃあ日曜日は決定な。」


達也さんの用件は本当にそれだけだったらしく、

怒る見張り番に何度か頭を下げた後、クラスへ戻って行った。

と思ったらまた顔を出して、変な方向を見ながら言った。


「たまには三組に食べに来いよ。剛司が寂しがってたぜ。」

「……あ、じゃあ……また明日行きます……」


……剛司さんとは毎晩会ってるから、寂しがることはないだろうとは、

私は思っても言いませんでした。うん。

それで達也さんはそのまま三組へと帰って行きました。

今度は戻ってきませんでしたが、しばらく僕はドアを見ていました。


するとテル君が、また僕の背中を何度か叩きました。


「落合、いつまで見てんの~?」

「……え、あ、そうですね。続き食べないと……」

「落合って達也の前だとあんなに変わるんだね~。」

「……そうですか?変わってました?そんなつもりは……」

「でもこれで、良助とのゲームは落合の勝ちだよね~。」

「……ああ、やっぱり知ってたんですか……」

「うん~。もちろん落合を応援してたんだよ~。」

「え、何でですか、というか別に僕は……」


言い掛けて止まりました。僕は今何を否定しようとしたんでしょう?

これは脇坂君からもらった、変われるチャンスかもしれないというのに。



  ○   ○   ○   ○   ○   ○


 12月 5日(水) 12:44

 一年生フロア 廊下にて


何やらニヤニヤしながら、俺にはちっとも気づかずに、

上の空で通り過ぎていく達也を見送りながら、俺も五組へと戻った。

見張り番の会釈を適当に流しながら教室に入ると、

テルと落合が何だか盛り上がっていた。


「これで、良助とのゲームは落合の勝ちだよね~。」

「……ああ、やっぱり知ってたんですか……」

「うん~。もちろん落合を応援してたんだよ~。」

「え、何でですか、というか別に僕は……」


……テルめ。何がどうなっていつの間に落合を応援していたんだ。

まあテルはコロコロ言う事が変わる奴だから、今のセリフも適当だろうし、

初めからそこまで信頼してはいないけどな。

楽しんでいる所悪いが邪魔させてもらおう。


「よお。」

「あ、良助おかえり~。」

「ふああ!あ、はい……」


テルがいつものテンションで答えてくれたのとは対照的に、

背後の俺の気配に気づかなかったらしい落合が、数センチ飛び上がった。

さて何と言うべきだろうか。まあ素直に聞くか。


「達也来てたんだな。」

「……あ……はい……奇跡的にですが……」

「じゃあお前の勝ちだな。約束通り口出しはやめるわ。好きなだけ達也に会いに行って良いぞ。」

「……ありがとうございます……」



落合はペコリとお辞儀をすると、またもやうつむいた。

まだ何か悩んでるらしかった。何だ?もうすべて解決したじゃないか。

テルは空気を読んで黙々とメシを喰い始める。

……というかまだ喰うの遅いな。……そういや俺も飯まだだったっけ。



「あの……」


落合が言い辛そうに顔を上げた。何となくその顔は赤かった。

ただならぬ気配を感じて、テルも手を止めて、その横顔を見た。

落合は何度か口の開け閉めを繰り返して、それから一息ついて言った。



「俺は……達也さんの事が好きです。」


…………。

……知ってるぞ。だからこのゲームが始まったんだろ。


「……自分からそう言った事はありませんでしたが……自信のない僕だけど、この気持ちだけは嘘にしたくないんです。」


……あーはいはい。一番コメントし辛いやつだな。

だがしかし、この数日間で落合のイメージが大きく変わった事は事実だ。

――俺は引っ込み思案という人種が嫌いだ。

チャンスを来るのを待っているだけの人間が嫌いだが、

……この男、落合恒太はそうじゃないようだった。

結局、こいつが得たチャンスは俺が与えたものだとしてもな。


「叶わぬ恋でもせいぜい頑張れよ。」


俺が言ってやれるのはそれくらいしかなかった。

腹も減った。落合やテルの反応は見ずに、俺は席の方へ戻った。

《……いつもありがとね。》

頭の中であの声が蘇ってきた。また俺は損な役回りをするんだな。

……それが俺の人生という事なんだろう。

ちくしょー。


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