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バルガク。  作者: ホワイト大河
第二章 気づいてしまえば、戻れない
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俺の嫌いな引っ込み思案(5)

 12月 2日(日) 14:29

 長瀬宅にて



「おっしゃ!俺の華麗な技を見ろ!グレートアタック!」


達也は結構マジになってゲームに夢中になっている。

正直ここに来ても同じゲームばかりで、意外とつまんないもんだな。


「おいおい、足手まといになんなよ!まったく……」


俺が操作するキャラは、必死で達也のキャラの後を追う。

赤い服を着た、口髭がトレードマークのおっさんに、達也はなりきっている。

さっきのグレートアタックから中二病ゲームを想像するかと思うが、

残念だが不正解で、ただの土管工だ。

俺はというと弱っちいキノコだな。毒キノコだ。

ゲーム自体は何ら面白くないが、達也と一緒に居るのは楽しい。


「ふう、スターゲットだぜ。」

「お疲れさん。」


達也はなんとなく満足げな表情をしている。

そしてチラッと時計を見ると、コントローラーを手放した。


「あーそろそろ何か別のゲームするか。」

「そうだな。」

「……何があったか……と……見事に遊び呆けちまってるぜ、俺たち。」


ゲームソフト入れに手を突っ込む達也が、学習机を見つめる。


「試験多すぎだろ、俺たちを殺す気かよ……まったく。」


前から思ってたがそこまで頑張る必要も無いんじゃないのか。

宇野とつるむようになってから、達也は勉強の事を考えるようになった。


「試験なんか適当でいいだろ。俺はいつも勉強してないしな。」

「俺はテストであんまり悪い点取ったら、お小遣い大幅減額なんだよ……そうしたら俺の命の次に大切なラノベが買えないだろ?」

「大変だな。」

「それに、赤点取ったら補習行きだろ?放課後に残されるとかマジ苦行。」

「お前はサボれば良いだろ。」

「……ふう。これだから部活頑張りクソ野郎は。」


俺は今褒められたのだろうか。けなされたのだろうか。


「部活でそれなりに成績出してるやつはサボるくらいどうって事ないだろうが、俺みたいなニートは絶対逃げられないんだよ。」

「俺こそサボれないぞ。大会前とかは特例もたまにあるが。」

「あー早く勉強会開かないと終わるわ。水曜あたり恒太誘うか……」


……ちょっと待て。

落合との約束を交わしてもらっては困るんだ。


「わざわざ五組に来なくても、宇野に聞けば良いじゃないか。」

「剛司か?……剛司に聞くにはある程度前提知識が居るんだよ!いつも一緒に居る大親友がこんなバカだと思われたくないだろ!」

「そんな事思わないだろ。素直に頭良い奴に聞くのが早いと思うが。」

「……そうか?同じくらいのレベルの奴の方が良くないか?」


しまったな、止めようとつい喋り過ぎた。

達也は意地っ張りな所があるから余計に行こうとするかもしれない。

最後は何となく同意しておいたが大丈夫だろうか。

達也が何か考え始めている。マズイな、気づかれたかも……。

いや、達也に限ってそれは無いか。鈍感の星に生まれた達也は……


「何だよ良助、お前は恒太の事、嫌いなのかよ?」



……うおっふ。



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



『……というわけだ。』

「なんか面白い展開になって来たね~。」


良助は何時になく口数多く、焦って早口で事の顛末を伝えてくれた。

……しかるべき時に聞けば、達也への恋心を認めてくれたかもしれない。

けれど早まった僕は、笑いを含んだ形でその気持ちの有無を聞いたために、

もうその恋心を認める事はきっとないのだろう。


『面白がるなよ。分かっているはずだが、お前が達也に余計な口出ししたり、落合をサポートしたりするんじゃないぞ。元々お前は部外者だからな。』

「分かってるよ~。」


僕がいざという時に達也か良助かどちらかの幸せを考えて、

達也を選択する可能性があるとでも思っているのだろうか。

だとしたら僕の良助との信頼関係もそこまでのものだったのだろう。

けれど、良助を頼ってはいても、それを素直に良助に伝えていないから、

こうして軽薄な男だと思われても仕方のない事だし、

そういった目に見えないものを極力排除してきた僕が、

人と人とのそんな薄っぺらい繋がりに意味を求めても滑稽なだけだ。


洋次とは、最近ようやく上手く波長が合い、良い関係を築けているけれど、

それが本当に良い関係なのかどうかは当事者の僕たちには分からないし、

洋次の笑顔の裏に何が潜んでいるかは実のところまだ分かっていないから、

本当に彼の身体に全てを預けられる日は随分と先なんだなあと思う。


夜空の月は、たまに姿を消す。

けれど太陽だって、見えない日はある。


いつだって眩しくて、その本当のカタチが捉えられないんだから、

月よりずっとズルイじゃないか。



『聞いてるか。』

「うん~。ちょっと良助油断してたんだね~。」


前髪を弄る。それから何か質問を考えよう。

そういえば良助は、達也のその純真な問いに何と答えたのだろう。


「達也に何て言ったの~?落合が嫌いって言っちゃったの~?」

『言ったら色々面倒だからな。ごまかしたよ。』

「でもいつか達也は落合を誘いに来るんじゃないの~?それはやめさせられなかったんでしょ~?」

『それはその時、テルが落合をどこかに連れてってくれれば済む話さ。』

「勝手に計画に加えないでよ~。」

『たまには付き合ってくれ。ところで落合の様子はどうだった。』


……野球部の二人から必死で逃げようとしていた落合を呼び止めて、

わざわざ野球部の二人を断ってまで、僕は昼休み中ずっと落合の相手した。

正直落合に対してあまり興味は無かったけれど、

落合は僕に比べてずっと純粋で、そして深く思い悩んでいるみたいだった。

――達也との事なんか、勝手にさせてあげればいいのに。

僕は少しだけ、良助に反旗を翻したくなった。


「……落合、なんかかわいそうだったよ~。」

『何だと。』

「自分でもどうしたらいいか分からなくなってるみたい~。」

『引っ込み思案ってのは将来が思いやられるな。』

「……じゃあ僕もだね~。」

『お前は意外としっかりしてるだろ。』


ずっと相談してきてる良助の事だ、僕の性格は何となく分かってるんだろう。

けれど、今言いたいのはそんな事じゃなくて。


「……落合の事、許してあげたら~?」

『おいおい。』

「別に変に手を出したり出来ないだろうし、純粋な恋してるんだと思うよ~。僕は応援してあげたいな~。」


○   ○   ○   ○   ○   ○

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