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バルガク。  作者: ホワイト大河
第二章 気づいてしまえば、戻れない
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生徒会選挙に神現る(10)


「よく来たな!未来の執行部員たち!」


勢いよく扉を開けたのは桜塚翼だ。彼の眼は神以外の二人を捉えている。

花園翔希と、綿華君が少し緊張した面持ちで会釈した。

中には昨日居なかったメンバーが数名、つまり新委員長が揃っているようだ。



「執行部の仕事はいかがですか?あまり皆さんに迷惑をかけませんよう。」


席に着座した途端、右方向から声が飛んできた。

透んだ声ながらも、そこに含まれた悪意。「教祖」勝村幸夫だった。


「ハッ!組織票をもらいながらも選挙に敗れた男が、何を言おうが負け犬の遠吠えに過ぎんな。」

「……軍団を悪く言わないで頂きたい。私のために懸命に頑張ってくれる人達ですから。それに軍団だけが私の力ではないので。」

「ハッ!結果が出せぬ男が何を言おうが後の祭りだ。ところで神の使徒は充分に役目を果たしてくれたものだぞ。」

「貴方の妄想の部下は一人として増えていないはずですが。」

「ハッ!確実に水面下で規模を拡大している。貴様と違ってな「教祖」。」

「随分と気楽なお方ですね。たかが一度試験で高得点を取り、一度選挙で勝ったくらいでもう私に完全に勝った気でいらっしゃるようで。」


生活委員長、勝村幸夫。見て分かると思うが神とは犬猿の仲である。

というより神は相手にする気が無いのだが、奴が勝手に噛みついてくるのだ。

ハッ!どうやら丸くなったというのはただの噂に過ぎん様だな。

ちっとも成長していないあたり、人間としての底が知れる。



「ケンカしてんのけ?仲良しが一番だっぺ!」

「……騒がしい。」

神らを止めに入ってきたのは、寮長後藤俊平と、それから、

美化委員長候補として選ばれた、「公平」菊地博明だった。


それから神の正面に座る男が、黙ってこちらを見ている。

その顔には見覚えがあった。会長選挙で静かに散って行った男、渋谷隼人。

図書委員長に選ばた彼が、笑いながら言った。


「やっぱ執行部って、奇抜なメンバーが揃ってるんだな。いや、俺なんか選んでもらって良いのか?」


渋谷隼人はなかなかの常識人らしく、神の次に常識がありそうだ。

前も書いたが、痩せ型のため神の興味は無い。

ハッ!選ばれたメンバーは先日の選挙に関わった者が多いな。

当然というべきか、あの場所に立ったのは選ばれた人間なのだから。

ただ一人、文化委員長の席に座する男はまだ神の知らぬ人間だった。


「それはこっちのセリフっしょ。俺なんかたいして委員会で功績も残してないし、俺を選んだ理由を訊いてみたいもんだ。」

「そう言うな飯島。俺たち二年の中では反対意見なんて無かったぞ?」


飯島聖也。あの謎めいた相談所を開く同級生の飯島光の兄らしい。

特にこれといった特徴は無いが、強いて言うなら赤眼鏡が似合っている。

これまたガリマッチョ。筋肉ある奴はおらんのか。


「いやー、足引っ張ったら悪いな。先に謝っとくわ。」

「自信持てって!選挙に関わってないのに選ばれたのはお前だけだぞ?」

「……まあ、ベストは尽くすわ。」


飯島聖也は深いため息と共に、少しだけ口元を緩めた。

……さて、大方のメンバーは揃ったか。

月山和佳子は相変わらずふんぞり返っているし、

花園総希は妙な微笑みを浮かべて座っている。

あとは会長の対極に席を設けられる役職――「学級委員長」。

その時、扉は開き、最後の男が到着する。



「遅れてすみません。……ウチのクラスの会議が長引いたもので。」


渡透。目覚ましい統率力で、先の選挙において花園総希と熱戦を繰り広げた男。

順位も渋谷隼人を破っての二位だったらしい。神もさすがに驚かされた。

彼はそのまま花園総希の座る席に近づき、しばらく彼を冷めた目で見た後に、

言うべき言葉が固まったらしく、ゆっくりと口を開いた。


「「学級委員長」という椅子を用意して下さってありがとうございました。とはいえ貴方の執行部に従うかどうかはまた別の話。不甲斐無い様ならばその席、取って代わらせて頂きます。」


獲物を見据えるかのような眼差しを、彼は花園総希に真っ直ぐ向けた。

ハッ!さすがに神も認めなければならんな。

たった今、最も野心に飢え、頂点に立とうという炎を燃やすのは、

神ではなく、この男、渡透であると。


「……そうですね。渡君には期待していますよ?」


対する花園総希は微笑み返すだけだった。

あの渡透の眼差しを受けてもか。やはりこの男は底知れぬな。

この執行部で最も地位の高い椅子に座るだけの事はある。

そして花園総希は渡透が着座するのを見届けた後に、全員の目を見渡して言う。


「集まってくれてありがとうございます。皆さんは今それぞれ、最も皆さんの個性に合った席に座る、つまりこの学校で最も相応しい役割を持っています。

 皆さんの一つ一つの行動が、この学校全体をよくしていく流れに繋がると、私は信じています。皆さんはこの一年、その役割を全うしてくれますね?」


花園総希は笑顔を浮かべている。

座る面々の表情は十人十色だが、神がそうであるように、

それぞれ自分に与えられた任務を何となく、既に理解しているようだった。

花園総希は確かにうなずいた。


「九代目生徒会執行部、発足。これがスタートラインです。」






「あたしちょっとナメてたかも。」


帰り道、となりを歩く綿華小百合は、長い沈黙の後にそうつぶやいた。

ハッ!珍しく自信の無さそうな表情をしておるわ。


「それは神様には言われたくないわね。……はあーみんなの志が高すぎて、あたしきっとついていけないわ。」

「そうだろうか?」

「だってあたし、保健室でのんびりしてただけの女よ?それだけで保健委員長って……確かに仕事を手伝う事もあったけど、別にそれは慈善事業というかなんというか……」


綿華君はうつむき、急に押し黙る。

さてなんという言葉を掛けようかと考えていると、突然顔を上げて彼女は笑う。


「……なんてね!何とかなるわよね!やる前から落ち込んでても仕方ないじゃない!大樹も頑張ってるみたいだし、あたしも頑張らなきゃ!」

「ハッ!……打たれ強いというべきか……」

「さて、今日の晩御飯なんだろ?」


綿華君らしいと言えば綿華君らしい。

持ち前の明るさで、綿華君ならばきっと全て乗り切ってくれるであろう。

だが、どこかに「無理」を隠す女であるのも確かだ。

次の話題に移ろうとしていた彼女に、神は一言言葉を掛けた。


「いざという時は頼るんだぞ。」

「……もしも、そういう時が来たらね!」


こうして、波乱の執行部生活、その序章が始まる――。


ハッ!読者諸君にはもっと神の神々しい生活を見せようと思ったが、

選挙イベントのせいで慌ただしくなってしまったな。

次からはまた主人公が変わるぞ!ハッ!いつでも神に戻ってくるが良い!

さらばだ!


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