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バルガク。  作者: ホワイト大河
第二章 気づいてしまえば、戻れない
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生徒会選挙に神現る(6)


あ、すごい無理。無理なんじゃけど。

もうスピーチ当日が来てしもうた。神様全然自信ないけん。


「何言ってんのよ大樹!あと数十分もしたら始まるわよ!」


そんな事言うてももう神様の精神状態終わっとるよ?

絶対全部失敗するけえ、もう謝っとくね。


「オチ君並みのネガティブ……もういい加減にして!あたしだって緊張してたのに、解けちゃったじゃない!」


「よっ大樹、それから綿華さんもだっぺ!緊張してるけ?」

「あ、後藤先輩……そうなんですよ、大樹は本当にもう……」


…………。

後藤俊平と、菊池博明が来たようだ。ハッ、弱い所は見せられん。


「ハッ、大丈夫です。お互い頑張りましょう、後藤先輩。」

「その意気その意気!平常心でいけば大丈夫だっぺ!」


後藤俊平は笑いながら、菊池博明は一言も口を開くことなく、

ステージ方面へ向かっていった。今日の彼らは神の敵である。


遠くの方には桜塚紅が、原稿を入念にチェックしぶつぶつとつぶやいている。

その隣の勝村幸夫の周りには、謎の人だかりが出来ていたが、

一同に敬礼し、即座に全員立ち去った。何だあれは、新興宗教か?

もし新興宗教ならば容赦はせんぞ。神は唯一にして絶対の存在であり、異教は……


「さっきの緊張はどこ行ったのよ!もう、あたし達も行くわよ!」


ステージに数人が上がると共に、神も綿華君に腕を荒々しく引かれた所で、

入口の扉を荒々しく開けて、多数の男を引き連れながら、

月山和佳子と、そのすぐ後ろに花園翔希が入ってきた。


「ワカコ様!かならず投票いたします。」

「ありがと。投票してくれたらすぐ消えていいから。」

「ワカちゃん!投票するから付き合ってくれないかな?」

「それなら投票しなくて良いわ。バイバイ。」

「月山さん、俺ずっとあなたの事……」

「永遠にさよなら。」


「……そういえば月山先輩、原稿はどうしたんすか?」

「は?そんなのぶっつけよぶっつけ。私の事ナメてんの?」

「え、や、でも」

「口答えしない!何やってんの、早く歩いて。」


……少し花園翔希が可哀想に思えてきたな。これを機に信仰を勧めてみるか。

これで事務局立候補者四人と、その推薦代表者四人全員が揃ったわけだ。


「後藤先輩は「寮生」、月山先輩は「ファン」、桜塚君は「勝村軍団」というスポンサーがついてるけど、私達には何もないわ。」

「ハッ!神を信仰する者は隠れ信者を含めてざっと三百人ほど」

「うん、隠れ信者いない。オチ君うのぽんたっちゃん、せいぜいヒデくらいでしょ?だから、相当厳しい戦いになるわよ。」

「ハッ!苦境など全て跳ね返してくれる。」


……そして直ちにリハーサルが行われ、

ステージ上での立ち位置や順番を一通り確認した後、神らはステージを降りた。

続いて次にリハーサルの控えた副会長立候補者、

さらには会長立候補者たちが次々と体育館へ現れる。


会長立候補者の花園総希とその推薦代表者花園優希、

また別のドアから渡透とその推薦代表者佐久馬氷紀。

二人はお互いに最大の敵と見なしているのか一言も言葉を交える事は無い。


さらにもう一人、二人の影に隠れてもう一人の立候補者が現れた。


「花園、お前には勝てないだろうけどさ……とうとうこの日が来たかー。」

「……いえ、戦ってみなければ分かりませんよ。お互い頑張りましょう。」


「渡君、一年生なのに度胸あるんだな。俺も一応頑張ってみるわ。」

「……そうですね。先輩達には負けるつもりはありませんけど。」


渋谷 隼人(シブヤハヤト)」。大人しい色の茶髪の男で、

ありふれた顔だがパーツがハッキリしていてなかなかイケメンの男だ。

……少し痩せている。筋肉が無いだろうから神のタイプでは無いな。

そのバックには、現図書委員長の西条小五郎が控えていた。


……生徒会長戦もなかなか面白い戦いになりそうだ。


続いて体育館に姿を現したのは、扇子を携えた、現学級委員長の城崎勝。

その後ろに城崎仁。立候補者であるはずの彼が、まるでサポーターのように、

前に立つ城崎勝は凛々しく、最たる気迫を持って歩いていた。


「大した仕事でも無かろう。……仁、手筈通りに言うのだぞ。」

「……はっ。」



そして最後に入って来たのは、つい昨日立候補したという噂でもちきりの、

当選すれば二年目の生徒会執行部となる、赤髪の爽やか男子桜塚翼。

どことなく緊張した面持ちであるが、いつも通り爽やかだ。

バスケ部のエースであるため、爽やかな筋肉を持ち合わせている。


はあはあその爽やかさは犯罪です!

突然恋の雷に打たれた僕をその汗臭い身体で抱き締めて下さい!

ふっ……服を脱ごうか?さあ戦いを始めよう。


おっと、神とした事が。爽やか系男子に釣られてしまったではないか。

しかしそんな神の目を、神だけでなく一同の目を引いたのは、

彼が連れてきた推薦代表者。長い黒髪をポニーテールで縛った、

「清楚」の一言が最も似合う、どこか緊張した様子の女子。「城崎 弓」だった。


周囲と同じく視線をそちらに向けた城崎兄弟は、ただちに足を止める。

まさかこの場に末の妹が、しかも敵として現れるとは思っていなかったからだ。

他の立候補者たちもざわつく中、城崎勝が彼女に近寄る。


「どうした弓。血迷うたか。」

「おいおい城崎先輩、こっちの大事な推薦代表者に手出さないでもらえませんか?誰も無理矢理誘ってなんかいませんし……」

「……桜塚。そちは随分な口をきくようになったな。余の恐ろしさ忘れたなら、再び思い出させるのもいとわんが……」

「……!」

「質問に答えよ弓。そちの意志で応じたのか?」


一歩さがった桜塚翼を見て、城崎勝は、末の妹に尋ねる。

城崎弓はやはり長兄を恐れているようだったが、それでも答えた。


「はい。私の意志であり……前から一つ申し上げたい事がございました。」

「……ほう、楽しみにしておるぞ。」


体育館はしんと静まり返っていたため、その会話は良く耳に入ってきた。

……どうやら事務局の戦い以上に、他は熾烈な戦いになりそうだ。



予鈴が鳴った。いつしか時計は八時二十分を指しており、

生徒が続々と体育館へ向かい始める。

会長・副会長立候補者らがリハーサルを急いで進める中、

神たちはステージの裏手で待機した。

この朝の時間と一時間目のLHRを使い、立候補者所信表明演説は行われる。


生徒会執行部は会長・副会長一名ずつ、書記二名、各委員長で構成されていたが、

書記二名から事務局三名に変更になった上、

三名は選出後それぞれ「会計」「書記」「庶務」に割り振られるというのだ。

ちなみに委員長は、この選挙で選ばれた執行部五名による推薦である。


枠自体は去年より増えているとはいえ、

やはり単純に楽になったとは決して言えないだろう。

神の神による神らしい戦いになって来たではないか――。

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