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バルガク。  作者: ホワイト大河
第一章 踏み出したから、始まった
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幼なじみの衝撃(5)

 9月 3日 (月) 12:43


この言い方ならとくに問題無かろう。プライバシーは守っているはずだ。

ツヨシがたくあんをポリポリとかじりながらこう聞いた。


「テル君とヨウジ君?」

「ごほっ!……プライバシーの問題上あくまで友達A、Bとしておこう。」

「タツヤって、テル君とヨウジ君とリョウスケ君しか友達居ないじゃん。」

「おいおい人をぼっちみたいに言うなよまったく。」


一発で当てられるとは思わなかったが、いや思うべきだったか、

確かによくテルやヨウジ達の話を俺はツヨシにしていたのだから、

当ててもなんら不思議ではない。しまったな。くぎを刺しておこう。


「ま、まあとにかくそいつらだと認めたわけじゃないが、口外するなよ。」

「ういー。」

「別に誰も言う相手いないんですけど……あ、僕も友達いないんで。」

「「も」って何だ「も」って。いや、ツヨシはヨウジと結構仲が良いみたいだし、コウタはテルと同じクラスだからな。念のため。」

「自分からヨウジとテルって言っちゃってるじゃん。」


あえて最後のツヨシの突っ込みは無視した。

時計を見ると結構時間が過ぎている。1時からは掃除だと言うのに。

俺は残りの弁当を全部口に詰めながら感想を述べた。


「しかしこんな近くにゲイが潜んでるとはな。恐ろしいぜBL学園。」


このつぶやきの後、しばらく二人からなぜか言葉が返って来なかったが、

ツヨシがいつもの調子で突っ込んだ。


「それお前の幼馴染の話じゃん?BL学園関係ないし。」

「……ハッ!盲点!」

「……タツヤさんパナイっす、はい。」



最後にコウタがそういうと、弁当の箱をまとめて立ち上がった。

そしてこちらを向いてペコリと一礼し、五組へと戻っていった。


ツヨシと二人で掃除場所を確認すると、ツヨシは教室なのに対して、

どうやら俺の班は運悪く下駄箱掃除だったようで、

チャイムが鳴ってから、それになるべくのろのろとそこへ一人向かった。


着くなり学級委員の神崎に怒鳴られる。

やれやれ兄は生徒会長、弟は学級委員。真面目な兄弟だねえ。

しかしちょいとのんびりしただけで何故同級生に怒鳴られにゃならんのか。

まあ仕方なく素直に従っといてやるよ。まったく。



「あ、タツヤ今日下駄箱~?」

「ん?おう。」


振り向く前に声の主が分かった。テルだ。

外を掃くために使うほうき数本とちりとりを両手によろよろと歩いている。


「テルは今日裏庭か?」

「うん~。」

「見るからに大変そうだが大丈夫か?」

「平気だよ~。」


と言いながらテルはその手のほうきを一本地面に落とした。

俺は仕方なく近寄ってほうきを一本持ってやる。

それをテルに返そうとするものの、この一本分を持つためのスペースが、

何故か無くなってしまっていた。困った顔をしたテルがこちらを見る。


「ごめんね~、ちょっと付いてきてくれる~?」

「へいへい。」


仕方なくテルに付き添う事になったが、パタリと会話が途絶えた。

ヨウジはあっけらかんとしていたが、やはりテルはそうでもないか。

何とか気まずいムードを払拭しようと、俺は適当な話題を絞り出した。


「今日は部活あるのか?」

「う~ん、自主練がホントはあるんだけど、今日は用事があるから帰るんだ~。タツヤは部活あるの~?」

「俺はあるかどうか知らないから行かないな。」

「それ単にサボってるだけだよ~。タツヤ不真面目すぎだって~。」

「そんなに褒めるなよ。まあみんなニートな俺と違って大変だな。」


結構歩いている気がするが裏庭は遠いな。

というより、テルの歩幅が狭いからそれに合わせると歩数が増えているのだ。

テルは大変いそいそと足を動かしているように見える。

体格のいいヨウジと一緒に歩くと合わせるのがお互い大変だろうな……。

と思った所でふと思いついた事を口に出した。


「なら今日はヨウジと一緒に帰らないのか?」

「うん~。あっ、そんなに帰りはヨウジと一緒じゃないよ~。」

「そうか……付き合ってるのに?」


しまった。もう少し脳を通してから、言葉を選んでから言うべきだった。

伏せるべき事実なのにストレートに言い過ぎた。

テルから言葉が返ってくるのが遅い。今のは完全に俺のミスだ。


「……スポーツ系と文化系じゃスケジュール合わないしね~。」

「成程な。お前らって週にどれくらい会ってんの?」


俺の口を塞いでやりたい。

興味というものは恐ろしく、勝手に口が動きやがる。


「……ん~、分かんないな~。」

「休みの日とかは出かけたりするのか?」

「……そこそこね~。」


テルは前髪を弄りながら、少し困った顔をしていた。

その顔を見て俺はようやく口を止める事が出来た。

これ以上俺が好奇心を全開にしてテルを困らせるのも悪いな……。

「そうか」という一言を添えて、この会話は終わらせた。目的地も近い。



「おお、月山ありがと……って何か見覚えある人がいるんですけど……。」


俺たちの箒を待っていたのはまさかのコウタだった。

可愛げのない言葉を添えて、俺の登場に驚いたようだ。


「箒を落としたから手伝ってもらったんだ~。ありがとねタツヤ~。」

「ああ。気にすんな。礼ならそこのコウタにしてもらうよ。」

「何で俺?反応に困るわあ……」

「じゃ、俺も戻るからな。」


いつも通りの始終困った顔をしているコウタを後目に、

俺も掃除場所へと足を進めた。


カップルになったら毎日一緒に帰るものだとばかり思っていたが、

やはりそれは彼女いない歴十六年の俺の妄想だったか。クソッ。

しかしほとんど一緒に帰らないとなると、「付き合っている」二人を繋ぐのは、

毎朝の通学と、休日の……デート?のみになるわけか。

テルとヨウジがどこかに出かける姿をあまりイメージ出来ない。

俗に言うお家デートだったりするのだろうか。

そう言われてみればヨウジの「友達の延長線上」という言葉も納得だ。

家で二人で遊んでる分には、友達と全く変わらないだろう。

そう、たった一つの夜の行為が、二人を恋人にしているのだろう。

……ううむ。未だに想像し難い。


いやはや、俺の脳内はいつのまにかテルとヨウジの件に振り回されている。

事実を聞いてからというものの、二人がどうしているのかを想像してばかりだ。


そうこうしている内に掃除時間は残り五分。

下駄箱掃除に戻った時には班のみんなが掃除の片づけに取り掛かっていて、

学級委員長神崎が鬼のような形相で迫ってきたのだった。

神崎は一回居なくなっても良い。俺が許可しよう。


そんなこんなで、退屈で眠たい午後の授業を終えると、

(授業の描写が無いのは許してくれ。俺に意識が無いのだから。)

放課後がやってきて、再び俺の頭は混乱させられることとなる。


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