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バルガク。  作者: ホワイト大河
第一章 踏み出したから、始まった
39/181

さびしーじゃん(6)

 11月 2日(金) 16:24


  ○   ○   ○   ○   ○   ○


というわけでですね。

あんまり面識のない人のところに、一人で行くことになってしまいました。

何で剛司さんは付いて来てくれないんでしょうかね。

一昨日から感じてた事なんですけど、剛司は僕の相談に乗るの、

そろそろやめようと思っているような気がします。

でもゲイをここまで相手してくれた事こそが優しさですよね、はい。


保健室の扉の前に立ちました。あ、自然に吐けそう。

となりのトイレで一吐きしてきまーす。



落ち着きました。また保健室の前に立ちます。

この中には本当に綿華さんが居るんでしょうか。

突然脇坂君とか菊池先輩とか現れて罰ゲーム大会みたいになりませんよね。

大丈夫ですよね。本当大丈夫ですよね。あ、全然開ける勇気ないわ★


勢い良く扉が開きました。


「オチくん何やってるの?ずっと影見えてるんだけど。」

「あ、こんにちはー。」




「ほけんだより」を提出してくると言って保健室の先生が消えた後、

保健室には僕と綿華さんだけが残されました。

もしかしたらこれは綿華さんの人払いだったのかもしれません。

普通の学校で、男女が保健室で二人きりなんてとても風紀が乱れてますが、

ここはゲイだらけ男の花園学園なので、そんな事はありません。



「それで、誰が好きなの?たっちゃん?」


あれー何でバレてるんですか?剛司さんですか?犯人は剛司さんですね?

顔が赤くなってきました。さっそく帰りたい気分です。


「今までに他の男の子を好きになったことはあるの?」

「……え、いや無いです。」

「それじゃ女の子を好きになったことは?」

「小学校の頃とか好きになった女の子居たんですけど、友達に言いふらされて笑いものになって、その女の子からも蔑まれた過去があります。ついでにその頃僕のあだ名は汗臭かったんで「下水道」でした。笑ってください。」

「私は「おっぱい星人」だったわ。さすがに揉みすぎた。」

「それは完全にあなたのせいでは?」


綿華さんっていろんな事が規格外ですよね。

下水道ギャグは自然に流されました。ちなみにギャグじゃないです。

もっと言うと僕は昔授業中に吐きまくってました。

そりゃ私でも下水道というあだ名を付けます。


「話が飛んだけど、それじゃたっちゃんを好きになった理由は?」

「……あの、まだ達也さんとは一言も」

「でもそうなんでしょ?」

「仰るとおりでございます。」


何なのこの人。上川とかいう奴よりよっぽど神だわ。

あ、そういえば最近神様体操を踊るのが楽しくなってきました。


「で、理由は?」

「……えっと……入学説明会の時に、ちょうど隣に座って、説明の資料を家から忘れたんですけど、達也さんが見せてくれたんですよ。それで寮入って剛司さんと知り合って、その剛司さんから達也さんを紹介されまして……」

「何か運命的ね。たっちゃん覚えてたの?」

「いえ全く。フラグクラッシャーのさすがの貫禄でした。でも僕はずっと何となく気になってて、僕みたいな生物が人から優しくされるの初めてで……」


はい、全然大した事情じゃないですわかってます。

綿華さんはびっくりした顔をして僕を見てます。


「案外あっさりね。元々女子が好きだったのにたっちゃんだけを好きになっちゃうくらいだからよっぽどの事情があるのかと思ったけど……」

「でも普通そういうよっぽどの事情って起こらなくないですか?漫画や小説の世界じゃないですし。」

「うん……まあそうよね。」

「幼なじみ達が急に付き合ってる事が分かって衝撃を受けるとか、元カノにフラれた腹いせに男同士セフレになるとか、そんな事件身近にないですし。」

「……えっと、よく分かんないけど何か悪意を感じるわ。」


皆さんこのあと僕の出番が急激に減ったらお察し下さい。


「まあでも先ほど言ったとおり、男全部が恋愛対象なわけではないんです。あくまでも……その、……達也さんだけなんですよ。」

「うん、そういう恋愛もあるわよね。わかるわよ。」

「でも世間的にはやっぱりその……ゲイというジャンルに分類されてしまうじゃないですか?」

「まあそうよね。」

「そういう苦しみとかってやっぱり綿華さんにも……」


綿華さんは考え込んでる様子です。

何か私のような生物と本気で相手してくれるなんて恐縮です。

でも、この人なら分かってくれるかも……。


「結局は周りが何言おうと関係ないじゃない?だからあんまり苦しんだ事は無いかも。ただ、叶わない恋が多いのはちょっと、ね。」

「そうですよね……。あの……これからも相談に乗ってくれませんか?綿華さんなら分かってくれそうだし、剛司も俺から身を引きたそうだし……」


綿華さんはびっくりした目で僕を見ています。

そんなに見られると緊張するからやめてほしいです。


「いや、僕もなるべくゲイの要素を出さないようにはしてるんですけど……」

「さすがに考えすぎよ!うのぽんは、あなたを理解しようと常に考えてくれてるんじゃないの?考えてくれるからこそ私に頼んできたんでしょ?」


そう言われるとそうかもしれませんけど、確証なんてありません。

いつ人は裏切るかなんて分からないんです。辛い世の中です。


「とにかくオチくん、あなたは周りとの壁を作りすぎよ。ゲイって事で自分から壁を作ってるでしょ?その敬語だっておかしくない?」

「あ、これは普通に癖なので気にしないでください、はい。」

「でも、オチくんが普通に話してくれたらもっと距離が縮まると思うなあ。」

「……なるべく頑張ります。」


結構敬語崩してますけどね。剛司さんが破天荒な行動をなさるので★


「だから色んな人に色んな事を相談していいのよ。恋愛ごとについては、私はもちろん良いし、うのぽんや神様でもいいと思うわ。」

「あれ、普通に神様入ってるの怖いんですけど。」

「あは、神様面白いでしょ?」

「ずっと演説をなさってますよ。神様体操も教わりました。」

「あれは第三体操まで行くと本当にエクササイズになるから。」


熟練者でした。というか綿華さんは上川君の自然に信者なんですね。

ところであの人自分が喋ってばかりで、他人の話は聞かなさそうです。


「でも話は聞いてくれなさそうというか……」

「いや、今は仲良くなってすぐだから語るモードに入ってるだけよ。」

「……でも、ゲイの話を突然しても……」

「ああ、それは大丈夫。神様もゲイだから。」

「え。」

「男の肉体が好きで好きで仕方がないの。ガチのゲイだから。」


はあ……さ、さすがバルガクですね。

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