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バルガク。  作者: ホワイト大河
第一章 踏み出したから、始まった
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ネガティブ・ラヴァーズ(9)

 10月 7日(日)13:48


平穏を乱したのは毎度おなじみ脇坂君でした。ホント何なんでしょう?

電話から聞こえてくる脇坂君の声がいやに大きくて、

少し離れて座っている僕にまで聞こえてきます。


「どうしたんだよ良助?」

『うん。今日遊びに行くわ。』


はいオワター。全部終わりました。さて、帰る準備しよーっと。

まあこんな上手く行くわけ無いよねー。分かってましたよ。


「お前、今日は無理だって言ったじゃまいか。」

『そうだっけ。何か用でもあるの。』

「他の友達と勉強してるし、さすがにテストだからな。もう不真面目な俺は卒業したんだ。はっはっは。」


達也は笑いながらこっちを見てOKサインを出します。

……え、あれ?脇坂君ですよ?断って良いんですか?


「というわけで今日は無理だ。また明日学校でな。」

『ふーん。またな。落合によろしく。』

「あ?おう。」


電話は切れました。達也はやれやれと腰を下ろします。

そんな達也さんに僕は疑問だらけです。


「何で断ったんですか?別に呼んでも良かったんですよ?」

「いやー、さすがに昨日も遊んだしな。今日は勉強するぜ。」

「……脇坂君交えてでも良かったんですよ。」


なんて心にもない事を言っちゃうのが私の悪い所ですよね。

達也はきょとんとした顔で答えてくれました。


「いや、今日はお前らとの約束だったろ?俺は勉強はこのメンバーでやりたいんだよ。というか良助は絶対勉強しないしな。」

「……あ、はい……」

「あいつとは一切勉強の話しないし。前から一緒に勉強してる恒太と、頭の良い剛司。それと俺。この三人で良くないか?」

「……え、あ、そうですね……」


まさかの発言でした。最近ずっと下らない事で悩んでたような気がします。

達也の口から達也の思いがきけて、良かったです。

これだけでも、今日は収穫がかなりありましたね。


ただ、達也は首をかしげています。


「お前、今日俺と勉強するって、良助に言ってた?」

「脇坂君とは二、三度しか話したこと無いですはい。何せ対人恐怖症なので。」

「……あいつ何で今日俺と恒太が勉強するって知ってたんだろうな。」


あれ、達也さんが先に言ってたんじゃないんですか?

……うん、えっと、はい。いやいやいや、考え過ぎですよね。

何か違う問題が発生し始めている気がしたのは気のせいですよね。

脇坂君問題は全部解決したんですよね。疑惑はネガティブのせいですよね。


「まあいいか、勉強始めようぜ。」

「あ、はい……」


剛司がもうすぐ着くという連絡を入れてきた事を伝えて、古典を開きました。

結局達也さんは助動詞の暗記が出来ていなかったようなので、

私が手伝う必要もないと思うのですが、一応暗記を手伝いました。

まあ一緒に覚える感じで、はい。


十分くらい経った時、剛司さんから連絡が入りました。

「達也の家ついたよ。」というメールでした。土地勘すごすぎです。



「ハロハロー。もう結構勉強始まっちゃってる感じ?悪いね。」

「……お前はよくここまでたどり着いたな。」

「何となくで何とかなったんじゃね?」


剛司さんはバッチリオシャレ決め込んでます。

今日は黒いネクタイに黒いジャケット、縞柄のシャツに細身のパンツ。

茶色がかった長めの髪はヘアバンドで後ろにまとめられています。

何でこんなオシャレしてくるの?そんな時間あったら早く来て。


「で、何の教科やってんの?」

「先ほど古典を開いたばかりです……」

「試験範囲の漢文の和訳をやってくれ、剛司!」

「いーよ。「矛盾」だっけ?楚人に盾と矛とを鬻ぐ者有り、的な……」


剛司は教科書も何も見ずに、原文をつらつらと読み上げ始めました。

それとセットで訳もペラペラ言い始めたので、

私と達也は急いでノートに取ります。


「あー、「之」って文字を使う時は上に返る事が多いじゃん。だから、白文で出された時も返り点打てるよーにな。」


剛司は出そうなポイントもささっと解説してくれました。

あれ、そんな能力高いんだったら早く教えて?

貴方の友達の落合恒太君は、成績不順でいつも苦しんでたんですけど。


「なあ剛司、俺はそれよりどっちかというと現代文の方がまずいんだが。」

「あれはフィーリングだから仕方ないじゃん。暗記教科まず何とかしよーよ。それに俺としても国語より英・数の方が出来るしね。」

「……あの、私は数学がアレなので見てもらってもいいですか……」

「数学は達也の方が出来んじゃね?数Ⅰと数A合わせて前回何点?」

「130点くらいで60位だったかな……?」

「あ、そーなの。小テストでは達也出来てんのにね。」

「いや、俺としては十分良い方なんだが……」

「俺は160で25位だった。ま、でも二人は英語の方が出来ないんじゃね?」

「う……そうかもしれませんね、ははは……」


乾いた笑いを挟んで私一人落ち着きました。

一方で達也さんはこの前出来なかった文法の発展問題を開いたようです。


「これって何でここに「it」が入ってんだよ?分詞が先頭なんだろ?」

「あー、これは主文と主語が違ってっからじゃね?ほら、元の文だとIt is だったろ?だからitが語頭に来るんじゃん。」

「成程。じゃあこれは?」

「んー、これは受動態だから……」


あれ、すごく高度な会話。

なんか達也さんが英語苦手とか言っておきながら、

普通に発展・応用問題に着手している事に愕然とします。

苦手なのは事実で、達也さんのテストの中では一番点が悪いようです。

あ、それでも私の英語より高いです★

あの、ところで御二方、ついていけなくなった私の存在もお忘れなく。


達也さんがふんふんと頷きながらどんどん問題を解いていくので、

怖くなった私は数学を開いて解き始めました。

あ、ちなみにこの前教えてもらった問題未だに分かりません★


「ん、恒太何してんの?直線引かないと駄目なんじゃね?」

「お前まだそれやってたのかよ。交点の座標出したか?」

「……え、いや、その出し方が……」

「連立でも何でもいいじゃん。そっから三角形で面積の公式じゃね?」

「分かるか?切片からの長さを底辺に置いて、両端までの距離が高さにすれば求まるだろ?」

「恒太計算間違ってんじゃん。ってか傾きが変化の割合じゃん?」


あ、苦行だわ。すごい苦行だわ。今気づいた。

御二方ごめんなさい、英語の勉強しててもらって構わないです。

二人がかりで目の前から全ての指示を出され始めました。

精神的ないじめの現場です。つらたん。


そこから日が暮れるまでの間、達也と剛司は英語や国語を解き進めつつ、

私はひたすら数学の演習をさせられ直され叱られまくりました。

うん、もう二人の前で数学はしません。すごい納得しました……。


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