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バルガク。  作者: ホワイト大河
第一章 踏み出したから、始まった
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ネガティブ・ラヴァーズ(7)

 10月 6日(土)19:36


土曜日です。

朝練には行ったものの、帰って来てからやっぱりだらだらしちゃいますよね。

ただ、明日が勉強会なので、それに備えて多少勉強しました。

第一回・第二回のテストの時より、勉強がはかどっているので、

もしかすると順位を上げられるかもしれません。


と、勉強に関してはかなりプラス思考で考えられるのですが、

今は結構憂鬱な気持ちです。

まあ憂鬱じゃない日なんて僕にはないですけどね。



「ハロハロー。」


夕暮れ時、今日は寮の夕食は豚カツです。

私も豚として生まれたかった。すぐに豚カツになってみんなを喜ばせ……


「無視か?今日も相変わらず元気ないじゃん。」

「あなたが羨ましいですよ。どこからそんな元気が……」

「別に元気ってわけじゃ無いけどね。」


剛司は表情筋をほとんど動かさずに箸を口へと動かす。

まあ剛司さんはあまり笑わないけど、何故か元気そうに見えるんですよね。

底無しの元気がうらやましい……と、そう言えば。


「新人戦選抜……どうでした?」

「やっぱ駄目なんじゃね?ベンチには入れたけど。」

「……十分凄いじゃないですか。」

「お前も新人戦あるんじゃねーの?」

「ああ、私は当然ベンチにも選ばれませんでしたけどね。」


ふう。当然ですよね。私に期待しないでください。


「何でそんな機嫌悪くしてんの?」

「別に機嫌が悪いわけじゃないですけど……」


正直に言ってしまうのは憚られる。

これはただの私のエゴでしか、心の狭い私の憂鬱でしかないわけですから。



「良助君と遊んでる達也が気になる、とか?」


はい、その通りです★

さすがですね剛司様、全て見抜いてらっしゃる。


「別に達也は良助君大好きってわけじゃないんじゃね?」

「いや、それは分かってますけど……」

「じゃあ良いじゃん。ただ友達同士が会って遊んでるだけじゃん。」

「いえ……はい。」


脇坂君と仲が良いのは分かっていたので、特にそこには問題は無いのです。

「どの友達とも遊ぶな!」とは言いませんよ、そんな病気じみてないです。

例え相手が、第一の親友同士だったとしても。


「まあ、迷惑なんじゃないかなと……思ってただけで……」

「迷惑?何が?」

「いや、脇坂君が週末に遊ぼうって誘ってたじゃないですか、だから……何か私の勉強会が無かったら、日曜日も遊べるんじゃないかって。」

「果てしなくネガティブ。」

「無理して言わせた感じもしますしね……達也さん的には僕よりも、脇坂君と本心は遊びたいんじゃないかな……」

「そんな事ないっしょ。達也は確かに良助君大切にしてるかもだけど、恒太の事だって大切に思ってんじゃね?ってかあんま友人の序列とか気にすんな。恒太は序列とか考えだしたら真っ先に恒太自身を最下位に置くんじゃね?」

「いや、まあ……そうかもなんですけど、達也さんが自ら「第一の親友」って言ってる所を何度も聞いてるわけで……」

「それは言葉のアヤだって。とにかくもう気にしない方がいーんじゃね?」


そんなにプラスには考えられないんですがー。

剛司のその能天気さはどこから来るんでしょうかー。




風呂も済ませて剛司と別れ、自室に戻りました。

部屋の中には難しげな本を読んでいる菊池先輩が。

物音ひとつ立てないように忍び足で自分のベッドへと潜り込みます。


「……落合。発言許可を与える。」

「はい、何でしょうか。」


菊池先輩から今のような言葉が出た時、一時的に発言禁止令が解除されます。

ちなみにこう言われる時は必ず何か質問をなさる時です。

菊池先輩はベッドから身体を起こしました。

如何せん身長が183㎝あらせられるのでその胴体だけでも随分大きいです。

脇坂君も相当な威圧感ですがこっちはガチです。


「俺のミニタオルを知らないか?一つ無くなっているようなんだが。」

「……存じ上げません。」


真っ赤な嘘です。犯人を知ってます。剛司君です。

何なら一狩り行ってきます。


「紛れ込んでいないかと思ってな。……見つけたら言ってくれ。」

「了解いたしました。」

「以上。」


この合図で通常運転、私語厳禁の室内に戻りました。

私の心臓は高鳴りしすぎてポップダンスを踊り始めました。

本当に、剛司君を殺さねばなりません。ええ。本当に。

しかし今外に出て取って帰ってくるのは危険すぎます。私が。

剛司をシメてタオルを回収して後でひっそり返しておこう、うん。

次の風呂前には確実に。


時計が十一時を指すと、菊池先輩の時計がピピッと鳴ります。

音を聴いた瞬間に私は急いで(音は立てない様に)消灯しなければなりません。

そして菊池先輩はあっさりと眠られてしまいます。じいさんかよ。

ちょっとした物音で菊池先輩は起きるので、私は寝返りを打つ事も出来ません。

当然まだ眠い時間ではないのですが、暗くなっては何も出来ないので寝ます。

牢獄?ここ牢獄なの?




朝が来ました。目覚ましをかけると殺されるので自然に起きました。

そして自然にトイレに向かいます。そして自然に一吐き。

今日も胃の調子は悪くないようで、一吐きで済みました。


今は九時。我ながら少し遅起きです。

とりあえず朝食を食べ、勉強道具を持って自習室に向かいます。

今日の為の準備はしておかねば。ある程度英・国は出来るようにならねば。

動機は不純まるだしですが許して下さい。


と、その前に、一緒に行く予定になっている剛司が気になったので、

剛司の部屋をのぞいてみると、いびきの爆音が響いてきました。

これはきっと剛司の爆音です。同室の先輩が優しい先輩だったのを良い事に、

剛司は毎日やりたい放題です。一回死ねばいいのに。

私の部屋なんか、一いびき一いじめ、ですよ?


同室の先輩を思いやりながら、諦めて自習室へ向かう事にしました。



時刻は正午になりました。何度も勉強中にうとうとしてしまいましたが、

時間が時間なので食堂へと戻ります。

そこで昼食を食べながら、何となく剛司さんを探したのですが、

居ません。……恐らくこれは良くない事態です。


僕は身支度を済ませました。年頃の男子は髪のセットが大変そうですが、

坊主なので僕には全く関係がありません★

だから身支度に時間など掛かりません。問題は剛司一人です。


剛司の部屋の前に立ってみました。相変わらず爆音が聞こえます。

まあ前日の新人戦選抜の疲れがたまっているとはいえ、寝すぎです。

この時間だと、もう同室の先輩が目を覚ましている頃なのですが、

某先輩のせいで先輩恐怖症の私は、この部屋をノックして先輩と会話し、

「剛司君を起こしてもらえませんか」と言う事は出来ません。

仕方ないので色々諦めて、時計を見ると、一時でした。

慌てて寮の玄関に立つと、意外と明るい私服の達也さんが立っていて、

「よう」と声をかけてきました。

これではマンツーマンじゃないか……。



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