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バルガク。  作者: ホワイト大河
第一章 踏み出したから、始まった
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ネガティブ・ラヴァーズ(6)

 10月 5日(金) 8:36


さて、何事も無く次の日がやってきました。

話が一段落ついたと思いきや私のターンはまだ続くようです。

ご迷惑をおかけしますが皆さんもう少しお付き合いくださいませ。


「お前相変わらず良い身体してんなーおいー」


モブキャラの声が耳に入った所で、私の目線もそちらへ移りました。

ホームルームが終わり、これから体育。

着替え時間で、肌色が少し増える時間ではありますけれども……。


そこには「脇坂」という男が居ました。

その身体はコンガリと日焼けしていて、引き締まった筋肉を持ち合わせ、

それでいて無愛想な表情をした、外れの無いイケメン。

もしバルガクに女子が多ければ、彼女をとっかえひっかえ出来ていたはずの男。


「そうか。鍛えてるからな。」

「お前ホント彼女いねえの?絶対隠してんだろ!」

「いや。別にいないけど。水泳で忙しいし。」


表情の変化に乏しいこの男、水泳部でバリバリ活躍していて、

次期エースの呼び声高い方で、優れた人間の多いこの五組の人気者です。

影の濃い皆さんの圧迫感に怯えてる私とは対照的ですよね。はい。


突然何故この男をピックアップしなければならなかったかって?

その理由はすぐに分かるでしょう。


180㎝を超える脇坂君から、よく声を掛ける人物が同じクラスに居ます。

その方は脇坂君とは対照的に身長が低く、ひょろっとした体形です。

今も脇坂君は、のんびりと着替えを済ませた彼の所に近づいていきました。

その彼と言うのが、月山君です。……ご存知「テル君」です。


「テル、今朝達也から、」

「そうだったね~、忘れてたよ~。これでしょ~?」

「悪いな。」

「別に大丈夫だよ~。」


テル君は脇坂君から体育館シューズを受け取りました。

どうやら達也がそれを借り、テル君を通じて返したようです。

……そうですね、もうお気づきかもしれませんが、

彼のフルネームは「脇坂 良助(ワキサカリョウスケ)」。

達也さんの話の中にも登場率の高い「リョウスケ」君です。

達也さん、テル君、ヨウジ君、そして脇坂君。

この四人が幼なじみで大の仲良しなわけです。わけです。


その脇坂君が問題なのです。

彼が一般人だったら何でもないんですが、色々完璧超人なリア充です。

ただ勉強だけは得意ではないそうです。

でもその点、勉強嫌いの達也さんとは合ってますよね。

別に脇坂君と達也がそういう関係にあると思っているわけではありませんが、

現実を見ると私と達也が付き合うのは不可能じゃないですか?知ってます。

だから、せめて達也さんの友人の一人になれたらと思うのですが、

そこに立ちはだかる大きな壁というやつです。

身長も高いし威圧感ハンパないです。どうあがいてもこの人には勝てません。


今まで詳しくは語られてきませんでしたが、実は、毎日恒例の昼の食事中、

結構よく脇坂君が登場し、達也とちょっとした会話を繰り広げてくれました。

なるべく意識しないようにしている私ですが、

どうも毎回その度に脇坂君に睨まれている気がするのです。

……もともと脇坂君が吊り目で目つきが悪いというのはあるのですが、

それだけではない気がするのです。


という感じでですね、脇坂君はあまり私の事を快く思っていないのです。

こうして考え事をしている間に、バスケットボールが私の顔に飛んできました。

すごく痛かったです。その暴投の主は脇坂君でした。


「悪い。」


その一言で脇坂君はどこかへ消えました。

絶対わざとです。いっそ殺してください。




「考えすぎじゃね?」


あっという間にお昼タイムが来てしまいました。

今は剛司と二人きりで、弁当を前に座っています。

達也さんが便所に行ったのでそれを待っているわけです。


「リョースケ君そんな悪い奴じゃないと思うけどね。」

「僕だってそう思いたいですよ。」

「それだけで恒太を嫌ってるって、ちょー被害妄想じゃん。」


一応弁当に手を付けずに待ってる私達ですが、

腹の鳴る爆音がどうも聞こえてきます。剛司くん自重しなさい。


「他にもあったんですよ。かくかくしかじかですよ。」

「へー、かくかくしかじかもぐもぐだったんだ。」

「あれ、食事始めてますよね?」


我慢できなくなったらしい剛司が、効果音に紛れて食べ始めました。

というか話は聞いてくれているのだろうか。

剛司さんと話してるとたまに不安になる事があります。


「リョースケ君何とも思ってないんじゃね?やっぱ被害妄想じゃん。」

「さっきと全然結論変わってないですね。……そうだといいんですけど。」


あまり納得がいかないまま、達也さんが帰ってきたので話は中断。

すでに食べ始めてる剛司はさておき、一応食べるのを待っていた私を見て、

達也さんはちょっと嬉しそうに笑いました。


「待っててくれたのか、ありがとな。」

「……いえ、別に……」


何でしょう今の表情。すごくかっこ良かったです。

脳内で「●REC」しておきました。これは絶対におかず行きです。

今日も平穏な食事タイムが始まりますね……。



「達也。シューズ受け取ったから。」


廊下に面する窓から、ぬっと巨体が中を覗き込みました。わーい脇坂君だー。


「……ん?良助か、了解。すまんな。」

「ああ。いつでも言えよ。てか明日か明後日遊ぼうぜ。」

「明日の土曜だけなら別に良いけど。」

「マジか。一時に行くわ。」

「おう。」


一瞬で脇坂君は姿を消しました。

話が流れるのが早すぎて付いていくのがやっとでしたが、

どうも明日遊ぶ約束を取り付けたようです。


「あいつ、部活が休みになるとすぐ誘ってきやがるからな……」


と言った達也さんの顔はどことなく嬉しげです。

やはり第一の親友同士、一緒に時間を過ごすのは楽しいのでしょう。

だんだん憂鬱になってきました。富士の樹海に行ってみたいです。


「日曜って達也んちに集まるんだっけ?俺分かんねーじゃん。」


話を少し切り替えたのは剛司でした。そういえばそんな約束もあった。

脇坂君事件がいろいろ地獄過ぎて、すっかり天国を忘れていました。


「そうだな……寮までの道覚えたし、迎えに行くよ。一時で良いか?」

「うぃーす。」

「りょ、了解しました……」

「そういや今日の英語結構理解度上がったぜ。恒太のおかげだな。」

「やるじゃん恒太。」

「……あ、はい、ありがとうございます……」


脇坂君のインパクトがでかすぎて素直に喜べません。

今週末は色々波乱万丈になりそうです……。

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