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バルガク。  作者: ホワイト大河
第一章 踏み出したから、始まった
16/181

ネガティブ・ラヴァーズ(5)

10月 4日(木)18:12


「あの、寮の入口までで良いですか?そもそも寮は立ち入り禁止なので、私は達也さんを隠す自信が無いですし、あと部屋には鬼が居るので絶対入れないと思います。そんな事になったら私の骨は海の見える墓地に……」

「深刻だな……乙、まあ入り口だけ見てこうか。」


靴箱で靴を履きかえ、二人で並んで校門に向かって歩いてます。

あれ、何これ?こんなに幸せになって良いんでしょうか?

そもそも並んで二人だけで歩くのが初めてのような気がしますし、

それから日が沈みかける中二人で歩くのは夢でしたし、

しかもこれ想像をたくましくすれば送ってもらってる感じですか?

達也さん人が悪すぎです。フラグクラッシャーのクセしてフラグ立てすぎ。


「お前英語結構出来るよな。テストで点が取れないのは何でだよ?」

「私の場合短期記憶型なんだと思います……」

「そうか。……まあ俺としては助かったけどな。ありがとよ。」


真っ直ぐこちらを見ながらそんなセリフ言われて、

私が直視できるとでもお思いですか?

歯に衣着せぬ物言い、いつでも素直に自分の感情を表す、

そんな達也さんに……僕は恋をしているんです。


「代わりと言っちゃなんだが数学は協力するぜ?」

「いや……そんな申し訳ないです。」

「そこはお世辞でもうんって言っとけよ。英語また教えてくれ。」

「……剛司から聞いた方が確実だと思います。」

「へっ、恒太はもう二度と教えてくれないってわけか。」

「いえ、そういう意味じゃ無くてですね、剛司さんの方が成績が良いわけですし、そっちの方が色々確実かと……」


達也さんとは対照的に、僕は素直になれないですね……。

素直と言うか自分に自信が無いだけですよね、私の場合。

でも自信なんて永遠に持てませんからね?逆ギレしちゃいますよ。



「次はいつ勉強会するよ?」


人気のない道で、肩を並べて歩いていたからかもしれませんけど、

その達也さんの言葉はジーンと俺の心に響いた。

……それでも達也さんは、「次」を作ってくれるんですね。

しかし部活のスケジュール的にどうなんでしょうかね。


「僕は明日部活で、剛司は確か土曜が新人戦選抜だったと思います。テストは再来週の金曜からでしたよね?来週は部活停止前だから目いっぱい部活入ってるし、残るのは難しいかと……」

「なら日曜だな。日曜なら剛司も空いてるだろ。」

「……日曜?」

「俺の家に来いよ。剛司連れて来い。」


くぁwせdrftgyふじこlp;@


「……ん?何固まってんだよ。俺の家そんなに汚くねえから。」

「いや……はい、あ、大丈夫です。うん。」

「そうか。」


そこで何のツッコミも無いのが素晴らしい所だと思います。

はい、私、一気に達也さんの家に行ける人間になっていいんですか?

なんか急展開過ぎませんか?事実は小説より奇なり!


とかなんとか考えている間に、いつの間にか寮の門の前まで付いてました。

「BL学園 薔薇寮」と堂々と書いてあります。当然男子寮です。


「……五階建てか?結構高いんだな。」

「部屋も意外と綺麗ですよ。ただ私物であふれかえって汚くなってますけど。」

「へぇ、今度何とかして中に入れてくれよ。」

「無理だと思いまーす。」

「そうか、それじゃ俺はこれで。」

「……はい、じゃあ剛司に伝えておきます。」

「おう。また明日な。」


夕暮れの中で、片手をあげた達也さんが格好良かったこと、僕は忘れないでふ。



「恒太ハロハロー。ってうわお!」


一年の風呂タイムに、浴場の剛司大明神のロッカーの前で、

恐らく部活の練習が長引いて疲れ切っているあろう剛司大明神を、

私は土下座で迎えさせていただきました。


「今日は誠にありがとうございました。剛司様のおかげです。」

「俺なんもしてないじゃん。」

「……いや、ラブラブなんちゃらは大成功だったと思います。」

「へー、良かったじゃん。」


話を聞く気があるのか分からない剛司さんでしたが、服を脱いで浴場に向かう間、事の顛末を一から十まで話しておきました。


「……日曜ねー、俺はいーけど、それこそ俺は断って恒太一人で」

「それだけは!さすがに一人では行けませぬ!!」

「恒太何か必死じゃね?」

「達也さんからのお誘いでもあるわけですし、ちゃんと伝えろって言われた、私の責任でもありますし、一緒に行ってくれませんか?」

「まー分かったよ。」


もう今日は本当に剛司様に尽くすつもりでありまして、

背中を流させて頂いております。

私はもちろん前掛けを掛けておりますが剛司様はオープン。イケメン台無し。

あ、うっかりイケメンと言ってしまいましたが、

平均と比べてイケメンという程度です。

私ですか?何と比べなくてもブサイクです。


「そういや恒太ってさー、こういう大浴場とかで興奮すんの?」

「あなたなんてことを。もう少し声を小さくして下さい。」

「だから男の裸見て立つの?」

「あのちょっと?近くに人居るんですけど。」


ものすごーく反応に困るので、

頼むからそのオープンな精神は海外でお願いしますー。


「いや、別にゲイってわけじゃないし……あくまで達也さんオンリーなので、他の人に、その、欲情とかそういうのは……」

「浴場で欲情とかつまんねーギャグじゃん。」

「話聞いてました?耳の穴もう一個くらい顔に開けてあげましょうか?」


シャンプーの泡に包まれた頭をこちらに向けてくる剛司さん。

何というかすごくアホづら。この人が勉強できるなんて思ってませんでした。

本当に残念なイケメンです。



色々落ち着いて、僕と剛司さんは広い浴槽に浸かりました。

真ん中には勝田・志田・秋山のサッカー部三人衆が陣取っているので、

そこへ突き進んでいこうとする剛司を止めて隅っこで。


「ふー疲れたー。」

「……剛司、新人戦選抜は上手くいきそう?」

「いや、やっぱ二年生には勝てないじゃん。一年生からは梓宮だけ選抜なんじゃね?いちおー練習はちゃんとやってっけどね。」

「まあ僕の分まで頑張って来て下さい……」

「お前も選抜頑張れよ。」


と話を続けていると、ふと剛司の頭の上に乗ってるタオルに目が行きました。

青いタオル。はて、剛司はこんな色のタオルを持ってたかな?


「そのタオル、どうしたんですか?」

「ああ、今日洗濯するの忘れててさー、タオル無かったから借りたんだよね。」

「へー、誰から?」

「菊池先輩。」

「ぬわあああああ」

「ま、借りたってか勝手に持ってきたんだけど。」

「ぬわあああああ」

「ちょーど菊池先輩風呂行ってた時にこっそりね。」

「ぬわあああああ何てことを!!早く洗濯して返しておいて下さいよ!」

「多分大丈夫じゃん。」


うん、これは間違いなくフラグが立ってきましたね★




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