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バルガク。  作者: ホワイト大河
第二章 気づいてしまえば、戻れない
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クリスマスの衝撃(6)

  ○   ○   ○   ○   ○   ○


 12月22日(土) 12:08


部活の練習に出るために、昼食を早めに食べ終わり、

支度をして部屋を出ると、偶然神様と鉢合わせた。


「ハッ!宇野君、これから部活かね?折角だから一緒に行こうぞ!」

「神様も部活なの?ってか昨日落ち込んでたのにもう元気じゃん。」

「落ち込んでなどいない!」


恒太は、俺とは逆に朝練で、おそらくすれ違いになるので、

あいつを待つことなく、俺は神様と外へ出た。

すると、門のそばに綿華さんが立っている。

ちゃんと制服を着ているので、彼女もまた部活なのだろう。


「綿華さんも部活?」

「そうなのよ。今日くらい出ようと思ってさ。」

「ハッ!健全な高校一年生はもっと部活熱心になるものだぞ。」


その言葉は達也にも聞かせてやりたい。

……達也と恒太の間に起きている問題をふと思い出した。

綿華さんと神様はともに恒太の恋愛を知っているから、

今後余計なことをさせないためにも、達也が知ったことは伝えるべきだろう。


「そういや達也、恒太が達也のこと好きだって気づいたらしいよ。」

「えっウソ!」

「ハッ!興味深い。誰がユダだ!」


ユダって……誰かがチークしたの前提かよ、まあそれしか無いだろうけど。



「そうね……鈍感野郎のたっちゃんが、自分でその恋模様に気づけるわけないから、誰かが言ったんでしょうね。」

「達也の評価散々じゃね?」

「ハッ!落合の恋愛を知っていて落合の事を憎んでるといえば、神には一人しか思い当たらんがな。」

「……ワッキーよねえ……」


ワッキー。脇坂の事だろう。いつの間にそんなあだ名を。

だが、恐らく裏で糸を引いているのは脇坂、その点には同意できる。

恒太と変な約束を交わしてこちらに来させないようにしていたのは、

まだ記憶に新しい話である。


「はあ、ワッキーって結構いいやつだと思ったんだけどなあ。」

「実際脇坂かどうか分かんないし、いいやつかどうかも分かんないじゃん。」

「ハッ、実際神もいい人間だと認識しているぞ。」

「アンタは筋肉フェチなだけでしょ!」

「そう。筋肉がすべて。筋肉サイコー!」


恒太がこちらに来れなかった一時期、

恒太に代わって何度か昼を一緒に食べたくらいの仲の脇坂とは、

それほど接点もないし、聞き出すことも難しそうだ。

それは特に綿華&神様にもわかっているだろう。

最近は、体育で神様が脇坂とペアになる事が多いらしいとはいえ。


そこで綿華さんは妙案を思いついたらしく、良い笑顔で言った。


「よし、とっ捕まえよう!」

「!!??」

「拉致★監禁!」

「ハッ!まずいぞ!綿華君を止めねば!」


するとなんの偶然かちょうど目の前、学校へ向かう道すがらに、

前を脇坂が一人で歩いていた。

綿華は目を輝かせて脇坂に飛びつき、ものすごい速度で両腕をつかんだ。

……こっちには神がついてるだけある。


  ○   ○   ○   ○   ○   ○



さて、どうやら水泳部の部室に忘れ物を取りに来たらしいワッキーを、

捕まえて椅子に縛り付けることに成功したあたしたちは、

彼の前に三人で立った。もちろん中心はあたし。


「……さあ、ワッキー吐くのよ!」

「一体これは何だ。」

「ハッ!正直に言うがよい!」

「??」


あたしと神様がノリノリで尋問スタイルを取ってるものの、

横のうのぽんは申し訳なさそうな顔をしている。


「……ごめん脇坂、これ怒ってもいいところじゃね?」

「それで、要件は何だ。」

「ワッキー、ちょっとお尋ねしたいんだけど……」

「ちょっとお尋ねする、って聞き方じゃなくね?」


「たっちゃんに、オチ君の事、もしかして教えた?」


目が点になっているワッキーを見て、

うのぽんがニックネームの解釈を伝えてくれた。出来る子ね。


「ああ、その話か。確かに落合に好きな奴がいると言ったのは俺だ。」

「ハッ!正体を現したなムキムキマンめ!その服ひん剥いてくれるわ!」

「だが、実際それが達也自身だと間接的に伝えたのは、俺じゃなくてテルだ。」


……!

まさか、テル君だったなんて……

純真ないい子だって勝手に思ってたのに、あたし!


「テルって言っても分からないか。五組の月山って奴で」

「ああ知ってるわ。なるほど、主犯はテル君だったのね……」


せっかくちょっとずつ前進してたオチ君の恋愛大作戦を、

こんな形でメチャクチャにするなんて……。

あのテル君、何の恨みがあるのかしら!

あたしたちとは接点ゼロのはずなのに!悔しい!


「おのれテル君……一度会ってかわいがってやりたいわ!」

「綿華さん、テル君は話にしか聞いたことなくね?ぶっちゃけ俺もそうだし、初対面の人間を……」

「関係ないわ!あたしたちの邪魔をする者には、差別なく死を!」

「やめてあげて!テル君いい子だから!」


やたらテル君の肩を持つのね、うのぽん。

もしかしてちょっと気があるんじゃないの?全く男って生き物は。

その時黙っていたワッキーが、うつむきがちに言った。


「テルの何を知ってるんだ。」


ワッキーの態度が変わった。

……知らない人間に幼馴染を悪く言われるのは、いい気しないわよね。

あたしが何か言おうとした時に、うのぽんが一歩前に出る。


「……正直あんま知らないけど、達也と恒太の話に出てくるテル君はすごい良いやつだよ。だからそう言っただけでさ。」

「表面的な部分しか知らないだけだな。」


「そーかもね。全部を知るなんて難しいじゃん。実際喋ってもさ、何考えてるか分かんないところ誰でもあると思うしね。……もちろん脇坂も。」


その言葉を聞いて、ワッキーは確かにニヤリと笑った。

そして、「食えない野郎だ」とつぶやいた瞬間に、グッと腕に力をこめ、

なんと力づくでバリッと縄を破った。

そのまま部屋を出て、何事も無かったかのように本来の用事に戻っていった。

ポカーンとしている宇野君と対照的に、一人盛り上がる神様。


「なんという筋肉!はすはすはすhshshshshs」

「うるさい!」


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