クリスマスの衝撃(5)
12月21日(金) 12:53
第四回試験 成績優秀者
1 花園 優希==1年1組 875
2 城崎 弓===1年4組 845
3 勝村 幸夫==1年1組 841
4 神崎 誠二==1年3組 825
5 勝田 拓哉==1年3組 822
6 上川 大樹==1年4組 821
7 朱雀 優美==1年5組 818
8 早田 椿===1年5組 814
9 明野 駿===1年1組 809
10渡 透====1年5組 808
「……ケッ、異世界のお話だぜまったく。」
昼を食べ終わって、もうすぐ部活が始まるということで、
教室を出た時に、廊下に優秀者が張り出されるのに気づく。
周りに人だかりが例のごとく出来ているのですぐ分かった。
ツヨシはしばらく立ち止まってじっと見ていったようだが。
「神様3位から6位に転落か。そりゃあ落ち込むかもね。」
「……確かにな。代わりに学級委員の真面目君、神崎が復活しやがった。チッ。」
「ってか転校生の明野って頭いーんだね。もうテスト慣れして優秀者入りしてんじゃん。」
「俺は67位から64位にちょっと上がっただけで満足してるよ。」
今日の朝には返却されてるテストの成績表を俺は見る。
コウタと勉強会を始めて以来、成績はちょっとずつながら上がるばかり。
……今後はなるべくツヨシも誘って三人でやったほうがいいか。
「そういや俺初めて20位超えたんだよね。奇跡じゃね?」
「ケッ、優等生しやがって。」
そのうち成績優秀者の中に、ツヨシの名が載る日も近いかもな。
どんどん遠くにいっちまう奴だよ、まったく。
そこからしばらく会話が途切れたが、
階段を降り始めたところで、ツヨシに聞かれた。
「タツヤの様子がおかしいのって、コウタ関係ある?」
まったく。こいつは何でもお見通しだな。エスパーか?
……俺の能力じゃこれ以上隠せそうになかったので、
少しずつ情報を出していくことにする。
「ツヨシよ。コウタの好きな奴って知ってるか?」
沈黙した。その沈黙が何を意味するか、今の俺には分かる。
恐らく……ツヨシは知っているんだろう。
これだけだと話が進まないので、俺から言う事にした。
「色々あって、コウタの好きな奴に気づいてしまったわけよ。……俺だよな。」
「そーだよ。」
わーい、あっさり!
すごいあっさり認めてくれて、俺、気持ちいいよ!
「言えなくてごめんね。でも言えなかったじゃん?」
もっと早く言ってくれていたら、何か変わったかもしれんものの……、
それはそれで別の事件が起きていたのかもしれないな。
ここまで友達にはなれなかったかもしれない。
「ツヨシよ。お前はそれを聞いた時、どう思ったんだ?」
「それは別に誰かの恋愛話を聞くときと変わんなくね?」
あっさりした奴だ。
俺も、頭でそれは理解していても、体が追い付かない。
当事者同士の場合、結構深刻な問題のはずだが。
「まあ俺の幼馴染にゲイカップルがいるから、それほど偏見はないにしても、俺自身が巻き込まれるとなると……」
話が長引いてる。もう下駄箱に到着してしまってるが、
俺たちはなかなか靴を取り出す気になれなかった。
「まあコウタ見てると心配になるじゃん?だから話聞いてそれなりに応援してたってわけ。たぶんタツヤが俺で俺がタツヤでも、タツヤそうしたんじゃね?」
「……そうだな。」
「ってか、俺たちそろそろ遅刻じゃね?」
部活は13時からだ。
今にも時計の長針は、12を越えようとしている。
「じゃあまた、クリスマスに。」
「了解。」
ツヨシは足早に体育館へ向かっていく。
俺は、Uターンしてのんびりと書道教室に向かう。
……結局はツヨシにも言ってしまったが、
あっさり反応してくれたのはやはりありがたかった。
末恐ろしいと思うのは、今までコウタが俺に抱いてる気持ちを奴は知りながら、
まったく何も知らない振りして俺に接していたということだ。
どこまでも飄々としてる奴よ、と俺はニヤリとすると共に、
着いて早々書道部の奴らから蔑むような目を向けられる未来に嫌気が差した。
○ ○ ○ ○ ○ ○
12月21日(金) 18:31
足のストレッチをしながら、下駄箱の所でテルを待つ。あっという間に月日は流れ、俺たちが付き合いだしてから一か月以上経ったか、と感慨深く思うと同時に、すっかり太陽の沈んだ暗がりの空を眺めていた。
「……洋次、お待たせ」
元々構えて帰る約束はしていないから、もし誰かと一緒ならそっと一人で帰ろうと思ったが、テルは一人で出てきた。茶色い髪がくるんとはね、ふんわりとした優しい薫りが、強い冬の風に乗ってここまで届く。
隣に並んで、テルに歩幅を合わせて歩く。たわいもない話をしたが、いつしか話題はクリスマスになった。イヴは二人でのデートが決まっている。これまで色々あったが、恋人同士としてイヴを過ごすのは初めてだ。俺はテルの希望にもちろん全部合わせるつもりでいた。
「そういや、クリスマスパーティーはどうするんだ?」
「……落合にも誘われてね、折角だから行くことにしたよ」
テルは微笑んだ。まあイヴは二人で過ごせると決まったから、クリスマスをみんなで騒ぐのも面白そうだ。少しばかり気になったのは、テルは達也が誘っても特に興味を示さなかった一方で、落合が誘うと快く承諾したことだ。
「落合、と仲がいいのか?」
「席が隣だからね。それだけの付き合いだよ。」
そうは言っても、テルはなかなか自分の領域に他者をいれない人間だ。そのテルが、落合という他者を受け入れていることに俺は驚いた。
落合という人物を、俺は名前でしか知らない。そんな俺の知らない誰かに、テルが微笑みかけているその瞬間をイメージしただけで、心の底から何か黒い炎が湧き上がってくる気がし、俺はそれをごまかす事は出来なかった。恋人を独占したいという気持ちは誰しも持つものだと信じたいものだ――。




