クリスマスの衝撃(4)
12月21日(金) 9:23
「相変わらずつまんない終業式だったじゃん。」
朝、終業式が終わって、俺たちは廊下をのんびり歩く。
今日は昼までで学校が終わりだから、幾分か気が楽だぜ。
「それで、テル君たちなんだって?」
「……え?ああ、クリスマスパーティーの事か?」
「それ以外ないじゃん。」
「考えとくってさ。ヨウジは乗り気だったけどな。」
「ふーん。じゃあコウタにもテル君を誘っといてもらって正解だったかもね。」
……なるほど、もうその事態も見越していたということか。
俺よりもコウタの方が、誘うのにはかえって良いかもな。
俺なんてテルとは慣れてるもんだしよ。
「ところで、今日は部活出んの?」
「……ん?ああ、冬前の最後くらいはな……真面目どもがうるさくてよ、まったく。」
「へえ。じゃあ昼食べてくよね?」
「……そうだな。」
教室についたが、先生が来る気配がまだないので、
ツヨシはまだ俺の席のそばに立ってる。
すると何を悟ったのか、ツヨシが急に俺の顔を見て言った。
「最近どしたの?なんか様子変じゃね?」
「……え?いや、そんなことはないが。」
まあおかしくて当然だ。自分でも挙動不審だとは思う。
コウタの件が俺の平穏を乱したのは間違いないんだからな。
ただ、それをツヨシに特に言うつもりはない。今のところ、だが。
いぶかしむツヨシに対して何か言おうかと思ったが、
そのタイミングで先生が来たためツヨシは飛んで席に戻った。
「というわけでテル君誘っておきました……OKが出たので良かったです。」
「さすがコウタじゃん。どっかの誰かとは大違いじゃね?」
「うるせえな。ヨウジはちゃんと誘えただろ、俺は。」
昼下がり。今日で二学期は終わりな上、三学期は新年一月からだから、
こうして机を並べて食べるのも今年はこれで最後か。
……これといって何の感想もないが。
「そういえば試験の成績表配られましたよね?どうでした……?」
「声死にそうじゃね?」
「いや……私はタツヤさんと勉強会したのにも関わらず、順位が少し落ちてしまったので……」
「……俺はちゃんと上がったけどな。」
目は弁当箱からそらさないまま、俺はそう答える。
微妙な推移ではあったが上がったのは事実だ。
「前回と違って五教科九科目だしね。理科が多いから、文系志望にはキツいんじゃね?」
「……はは……そういう事にしておきましょうか。」
コウタの暗い笑顔を見た。こいつの態度は何も変わってないな。
ただ、気のせいかあまりこちらを見てこない気はする。
目線はツヨシに向いてる方が多い。
……でもそれは、俺のことが好きからなのか?
変な部分にまで俺は考えを張り巡らせてしまう。
「よっ!少年たちよ!元気でやっとるかね!」
ジジイ口調で小窓から顔をのぞかせたのは、綿華だ。
となりには上川も居るが、いつもと違って覇気がない。
普段なら綿華のコメントと共に、何らかの発言があるはずだが。
そう思ったのは俺だけじゃないらしく、ツヨシが突っ込んだ。
「あれ、神様元気ないじゃん。」
「ああ、気にしないで。テストの順位下がったみたいで、勝村君に負けたから落ち込んでるだけよ。」
どうせ十位以上の話だろうけどな。ケッ!
○ ○ ○ ○ ○ ○
人の子は、神を望まぬのか……。
空は燃え、大地は枯れ、月は嗤う……。
ぐおおおおおおおおお!なぜだ!なぜ異教の神などに!
神は絶対。その掟を破りしものは、削除せねばならん!
ともに手を取ろう!復讐だ!聖戦だ!
「やめなさいって。ってかそんな事を話しに来たんじゃないのよ。」
綿華君に頭を叩かれた
この神の頭を軽々しく叩くんじゃない、と何度言えば分かるのか。
「パーティーの準備は順調なの?たっちゃんの家でやるらしいけど。」
「ああ。その代わり早く来て準備は手伝ってくれよ。」
「全然大丈夫、神様行かせるから。」
「ハッ!神をパシリに使うとは何事だ!」
「俺やコウタも早く行って手伝うから大丈夫じゃね?」
「あ、はい……もちろん手伝います……」
全知全能の神は、当然今何が起きているかは分かっている。
全てを知っているとなかなか分かりやすいものだ。
長瀬君はあからさまに落合君を見ないようにしている。
落合君も何となく避けられてるのには勘付いて、
苦笑いがいつも以上に加速しているぞ。
「あ、そういえば翔ちゃんとヒデも誘っといた。良いわよね?」
「花園翔希と英希?よくオッケーしたね。あんま接点ないじゃん。」
半ば強引に綿華君が二人を誘っていたのも神は知っている。
「でも、翔ちゃんとは今も執行部で一緒だし、ヒデは選挙の時お世話になったじゃない?その恩返しのつもりでね!」
「……結構メンバーが増えてきましたね……僕なんか要らないんじゃないでしょうか……」
「何言ってんのオチくん?来なかったら許さないから。」
「……はい……」
綿華君、ちょっと押しが強すぎるぞ。
しばらく傍観していた長瀬君が、ふと思い出して口を開く。
「そういや良助も誘ったぞ。よかったよな?」
ムキムキキタコレー!!
プレゼントと勘違いしてあの筋肉に飛びつきたい!かぶりつきたい!
……はっ!神としたことが。
だが結構思い切った決断だな。誰にも相談せずに決めたのだろうが、
一部脇坂君の事を苦手とする人間も居るのだぞ。
宇野君も綿華君もその空気を察したらしく、落合君に目を向ける。
「え……あ、はい、大丈夫です。」
明らかに震えている。
これは、一嵐来そうなクリスマスパーティーになりそうだ。
○ ○ ○ ○ ○ ○




