クリスマスの衝撃(3)
12月20日(木) 19:41
俺は家のベッドに腰掛けて、携帯の画面を見つめる。
リョウスケは、コウタに好きな人がいることを知っていた。
それが俺だということを知ってて、この話を俺に教えたのだろうか。
だとしたらその意図は……?
まだ自分の頭の整理がつかないままだったが、
何はともあれ、とりあえず話すしかないと決断した俺は、
リョウスケの番号を確認して携帯を耳に当てる。
『どうした。』
「……よ、よう。えーっと……もう夕飯食べたか?」
『まだだけど。』
良助の家の夕飯が遅いことくらい知ってるはずだ。
俺氏、そうとうテンパってる様子。
多分この時間、水泳の練習が終わってすぐくらいだろう。
焦りすぎか?とは思いながらも、本題に入ることにした。
「この前の話だが……お、覚えてるか?」
『どの話だ。』
「ああ、その……ほら、コウタに好きな奴がって……」
『そんな話もあったな。』
「それで……」
口がうまく動かない。
この場合、どう言ったらふさわしいのかを必死で考える。
良助はこういう電話の時、先々話を進めようとするため、
あまり沈黙は作らないものの、
俺がその先を言い出せずにいることに不審を抱き、
何も言わないでいるようだ。
「……どうもその好きな奴、俺らしいんだ。」
なんか途端に恥ずかしくなってきたぞ。
良助からの反応が無かった。電話の向こうで驚いてるのか?
俺は聞きたかった一言をそこで言った。
「リョウスケ、お前それを知ってたか?」
『いや。その情報確かなのか。』
「恐らく、な。」
俺はなぜその事を知るに至ったかを、リョウスケに丁寧に説明した。
主にそれはテルの口から知らされたのであり、
最近よくコウタと話すテルがこの事を知ってても不思議はない点や、
テルに話して俺に話さないことにつじつまが合う点など、
なるべく思ってるとおり考察通りに説明した。
ひととおり話した後に、リョウスケはこう答えた。
『知らなかった。』
「……だ、だよなだよな。」
その言葉は俺を安心させる。
リョウスケは、知ってて俺を混乱に陥れようとするような男じゃない。
何となく話題として手に入れた情報が、
偶然に俺に深くかかわるものだったというだけの事か。
『なるほどな、テルか。』
「……そうだ。」
『俺が教えた嘘の見破り方が、こんな形で役に立つとは思わなかった。』
「……役に立ったっていうのかよ、この場合。」
『それで、お前はどうするんだ。』
少しリョウスケの語調が変わった気がした。
……それで俺はどうするんだと?
そんなの決まってる。
「コウタには悪いが、俺はゲイじゃない。だからコウタの気持ちにちゃんと応えてはやれないな。」
リョウスケは沈黙する。
俺は言葉を選びながら、続けた。
「知ってしまった以上、コウタの事を変に意識するようになってよ。今までと同じような友達付き合いが、出来ないかもしれないんだ。」
『そうだな。とりあえず放置でいいんじゃないか。』
「……え?」
『無反応で。変に言ったりするとこじれるし。』
「……そうだな、そうだよな。俺がいつも通りの態度がとれるかは心配だが……」
『何か変化があったらまた教えてくれ。』
リョウスケは頼りになるやつだ。
その時、ちょうどクリスマスパーティーの事を思い出した。
……コウタがいる状況で、いざという時の相談者が誰もいないのは怖い。
とっさに声をかけてみることにした。
「今度、その……コウタたちとクリスマスパーティーを、うちでやることになっててよ……」
『なるほどね。』
「よかったらリョウスケも来ないか?俺の家だし、勝手はわかるだろ?」
『そうか。行くよ。』
「ありがとう!本当ありがとう!もうお前本当心の友だよ……」
『大げさだな。』
「……要件はそれだけだ。また連絡するわ。」
『おう。またな。』
電話はわりとあっさり切れた。いつも通りの電話だ。
放置、そして無反応か。俺は考える。
それが理想かもしれない。コウタがどういう行動を取るか分からんが、
俺は何かをしようとする必要はないのだろう。
……身の危険を感じたならば、逃げればいいか。
ちょっと苦笑いしながら、ベッドに沈む。
○ ○ ○ ○ ○ ○
まさか、こんなに早く達也が知ることになるとはな。
俺の考えていたストーリーとは少しずれた方向に展開していて驚いた。
「落合は達也に隠れて恋愛している」という事が重要で、
それを達也が知れば、アイツ俺に隠し事するのか、と混乱する。
そうすれば落合と達也の間に自然と距離が出来る。そういう計画だった。
だがその混乱が、達也を動かし、
そしてテルが余計なことをしたせいで、達也は全てを知った。
そうなってからのプランはまだあまり考えてなかった。
とりあえず良いか……落合とは自然に距離を置いていくことだろう。
もう邪魔をしないという落合との約束を、結果として破った気もするが、
……この場合、仕方ないよな。
そもそも前の落合との駆け引きは、俺が譲歩したようなものだ。
これはほとんど達也の行動力が引き起こした問題であり、
しかも実際に伝えたのは俺ではなくテルである。
……仕方ないよな……。
○ ○ ○ ○ ○ ○
「面白そうだな!宇野たちも来るんか。」
翌朝、ヨウジ&テルにクリスマスパーティーの事を俺は伝えていた。
ツヨシにも念を押されていたのだからさすがに今日は忘れないぜ。
「どうせ俺たちはイブ一緒に過ごすから、次の日は空いてるしな!」
テルが少しばかり顔を赤らめる。
……実に聞きたくなかった情報だ。
テルが少し考えたいそうで、答えは保留になったが、
とりあえず俺の役目は果たしたぞ。まったく。




