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バルガク。  作者: ホワイト大河
第二章 気づいてしまえば、戻れない
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クリスマスの衝撃(2)

 12月20日(木)  8:19



「ハロハロー。なんかさっきから机に寝そべったり起き上がったりあらぶってんじゃん。」


物思いに耽っていた俺に声を掛けたのは、ツヨシだった。

心強いと言うべきか心細いと言うべきか。

一人にしてほしいと言うべきか協力してほしいと言うべきか。


ツヨシという立場が一番微妙だ。

コウタとも俺とも、きっと同じくらい仲が良い。自惚れかもしれないが。

……さてはて、どうしたものか。



「綿華さんと神様にもクリスマスパーティーの声掛けといた。」


飄々としてるツヨシの話題は一瞬で変わる。

表情を変えずに手ぐしで髪をとかすツヨシを見て俺は笑った。


「……まぁそうだな。盛り上げ役になってもらおうぜ。」

「タツヤめんどくさがりすぎじゃね?」

「ところで場所はどうするつもりだ?」

「オレとコウタと綿華さんと神様は寮だから無理っしょ。」

「……それはつまり、選択肢は一つに絞られたというわけか。」

「タツヤんちで良いじゃん。」

「勝手だな。まあ仕方ないか、消去法だしな、まったく。」

「お、リアルに大丈夫なの?」

「ああ、両親は毎度のごとく家に居ないと思うぞ。」


俺的には自分の家での開催は楽だ。

移動をしなくていいというのは、文化系の俺にはとてもいい条件であり、

なんだかんだ準備とかは面倒だが、

ツヨシたちに手伝ってもらえばなんとかなるだろ。


「それで、テル君たちはどうだって?」

「どうだって、何がだよ。」

「いや、パーティーに誘っておいてって言ったじゃん。」

「ああ……すっかり失念してたぜ、ちゃんと明日の朝誘っとくわ。」


テルやヨウジも参加するとなると、結構な大人数だな……。

あらかじめ親にリビングの使用許可を取っておけば問題ないか。

これほどまでに大勢が俺の家に集まるのは小学校以来、

いや、もしかしたら初めてのことかもしれない。


「それじゃ昼にコウタが来たら、実際どんなパーティーにするか話せばいい感じじゃね?」

「……そうだな。もう始礼も鳴るだろうからな。」


ツヨシはあっけなく振り返って、自分の席へ戻っていく。

……コウタか。また懸念事項を思い出してしまった。


この問題がとても俺の手だけには収まりきらない事は分かり切ってる。

何が何でも協力者が必要だ。普通に考えてそうだよな?

こんな友情と微妙な恋愛との狭間に漂っているだけじゃ、

何も答えは出ないことは自明のことだ。


ならば、誰を協力者にするか。

恐らく事情を一番のみ込みやすいのはツヨシだろう。

しかし、いきなりツヨシにこれを相談するのは何やらはばかられる。

というのも、ツヨシは頻繁にコウタと単独で顔を合わせるため、

ツヨシの事を信頼してはいるが、コウタに伝わってしまう可能性が……

そうだな、すまん心の友ツヨシよ、お前だとコウタに近すぎる。


おのずと選択肢は絞られた。

コウタから遠く、俺から近い人間――。うってつけの人物がいた。

コウタの事をある程度知ってる上に、俺の方が親しい奴。

そして……もしかするとこの問題の火付け役かも知れない幼馴染、

――リョウスケだ。



部活が再開された今、リョウスケと帰りに会える可能性は極めて低いので、

今晩にも電話しようと思う。

大げさだと思うかもしれないが、それだけ重要な問題なのだ。


その案件についてもやもやとしていただけで、

冗長なテスト返しが半分ほど終わり、昼休憩がやってきた。

やけに胸が高鳴る。コウタがここへ来る、その事実だけで。



「……あ……どうも……」


いつも通り、安定のネガティブコウタが廊下窓のそばに立っていた。

俺はなるべくいつものように「よう」と声を掛ける。

いつもの事なので、特に許可を取ることもなくコウタは室内に入り、

いつものポジションに腰を下ろした。

俺から見て左斜め前。いつも通り申し訳なさそうに頭を下げている。


「て、テスト何か返ってきただろ?」


いつも通りじゃないのは俺だけだ。俺は強引に話題を持ち出した。

というかツヨシはやく来てくれ。俺は非常に困ってる。


「……あ……あまり触れないでいただきたく思います……」

「……数学はどうだったよ?俺が教えたとこは出たか?」

「あ、はい結構出ました……数Ⅰも数Aも60点くらいで結構満足してます。間違いなくタツヤさんのおかげですね、ありがとうございました……」

「ああ、……まあそのくらい構わないが……」


ぎこちないか?ぎこちなくないか?ぎこちないよな?

急に他人行儀になってしまう上、まともに顔が見れない。

別にそれは照れから来るものだったり、

俺も恋愛感情を持っていて恥ずかしいとかではなく、

単純に怖い。どういう顔をして俺を見ているのか、を知ることが。

こいつは、落合恒太として、思いを寄せる奴に、どんな目を向けているのか。



「ハロハロー。そういやタツヤ、数A81点だったじゃん?」


強引にツヨシが入ってきたが、この時ほど嬉しい介入は無かった。

だがなんで俺の点を知ってるんだ。


「たまたま返すとき見えちゃってさ。ってか俺も81点なわけで。」

「……偶然の一致、か。」

「えーっと、僕には高次元過ぎてついていけませんね、はい……」


うつむいたコウタの表情をさりげなくチェックした。

いつもと変わらない。そうだ、コウタから見れば何も変わらない日常。

急におかしな態度をとってるのは、むしろ俺の方なのだから。

ツヨシが来たタイミングで、自動的に弁当箱を開け始めた俺たちは、

先ほどのクリスマスパーティーの話を持ち出す。


「場所はタツヤんちって事で。神様たちは当日学校とかから案内してあげれば大丈夫じゃね?」

「……確かに寮では難しいから……でも、良いんですかタツヤさん?」

「え?ああ、大丈夫だ。」

「……タツヤさん?む、無理しなくても……」

「いや、別に俺は」

「それで、実際クリスマスパーティーは何すんの?」


ツヨシが話を遮ってくれたのは不幸中の幸いというやつだな。

俺はまっすぐ俺に向けられたコウタの眼差しに耐えられなかった。


「プレゼント交換とか、か?」

「……まあ良いんじゃね?値段の制限とかあらかじめ決めとけば、それなりに平等な交換会になるじゃん。」


食べ続けながら話すツヨシ。相変わらず食い方汚いぞ。

それで話はひと段落つき、あとは内容の無い会話が続いたのであるが、

それから少しずつコウタの様子を確認してはみたものの、

やはりいつもと変わらない様子であり、

つまりは俺の事が好きだという暗号は何も伝わってこなかった。


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