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【完結】俺の彼女はセイジョウです  作者: アカアオ
2章 ファナエル=???編

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絶対絶命

 ここは……どこだ。

 俺は一体何をしていたんだっけ?


 「いや~それにしてもお手柄だねぇ、るる君」

 「この私、ジャッジメントの魔眼の力があれば大したことはない」


 ぼやけた先の視界に映っているのは灰色の壁と四人の人影。

 おかしい、俺はさっきまで自分の家にいたはずなのに。


 「それで、これからどうするんだ氷雨」

 「……お兄さんをこのまま放置すれば間違いなく人間に戻れなくなるのです。そうなる前に、私が夢の中に入って治療をするのです」

 「だよな、俺もそれに賛成だ」


 氷雨……俺の身体を治す?

 そうだ、そうだった。


 今すぐファナエルと話をしないといけないって思った所だった。

 俺の身体に起こってる変化について彼女に聞いて……それを受け入れるよって伝えてあげないといけないんだ。


 「牛草秋良の口内には妙な力を持ったガムが入っているようだねぇ。これ、ほっといても大丈夫なのかい?」

 「それはむしろ取り除く方が厄介だ。俺達は一回それで失敗してるしな」


 きっと目の前で話しているのはシンガンとかいう超能力者集団なんだろうな。

 話の内容からも、ぼんやりと見えるシルエットからもそれは断言出来る。


 「それじゃぁ、私は外に出て見張りでもしてくるよ。私にとっては牛草秋良より、彼をさらいに来るかも知れないファナエル・ユピテルの方が興味深いからねぇ」


 「分かったのです。それじゃぁ私は今からお兄さんを完全に眠らせた後、夢の世界に入って彼の身体を治療するのです。雄二(ゆうじ)はお兄さんの口から吐き出される物の処理をそのビニール袋で、るるちゃんは治療後にお兄さんが感じるであるろう違和感の処理を、いつも通りの手順でお願いするのです」


 「了解したよ、ボス」

 

 「多分あいつの口から出るのはあの髪の毛なんだろうな」


 氷雨達がそれぞれの持ち場に足を運ぶ。

 それと同時にぼやけていた俺の視界が少しずつ、少しずつ開けていく。

 合わせてくぐもっていた意識もだんだんと鮮明になっていった。


 このまま彼女達の計画が進んでしまったら……ファナエルが仕組んだであろう俺の身体に起こっている異変は無くなるのだろう。


 まだ彼女から動機も聞いていないのに。

 ファナエルが望んだことなら何でも受け入れたいっていう俺の思いもまだ伝えられていないのに。


 だから俺は、何もせずここで座ってる訳にはいかないんだ!!

 完全に意識が戻った俺は立ち上がるためにぐっと足に力を入れる。


 しかしどういう訳だろう?

 上手く立ち上がることが出来なかったばかりか手首にガツンと痛みが走る。

 耳の中ではジャラジャラという耳障りな金属音が反響していた。


 「いつの間にこんな拘束を」

 「私の事はどれだけ恨んでも構わないのです」


 眼前には妙なお札を持ってこちらに歩いてきている修道服の少女、氷雨の姿があった。

 そんな彼女の顔は、その小さな子供の見た目にはそぐわないほどの大きな覚悟を背負っていると感じられる静かで儚げな覇気を纏っていた。


 「私の行為があなたの恋心を……今のあなたの幸せな日常を壊してしまうのも承知の上なのです。それでも私は貴方に普通の人間として生きてほしいのです」

 

 「それ、余計なお世話って奴じゃないのか?」


 「そうですね……でも、それでいいのです。恋心の為に体も人生も犠牲にした先輩として私がお兄さんに出来るのはこのぐらいなのですから」


 そう言って彼女は手に持っていた札を俺の視界のど真ん中に置いた。

 札に書かれているのは間違いなくあの悪魔文字……俺が教室で眠らされた時の奴と同じものだった。


 「その手に乗るか!!要は目つぶってその札を見ない様にすればー」

 「治療の邪魔をされない為にも私の魔眼は役に立つ……レイジネス・シン!!」


 後方に立っていた中二病少女、るるの声が響きわたる。

 視界は赤く染まり、まぶたを閉じようとする俺の意欲がそれによって削がれていく。


 「それじゃぁお兄さん、また夢の中で」


 氷雨がそう言うと、彼女の持っている札に描かれている文字が蠢き(うごめき)始める。

 その札に書かれた悪魔文字が『シンガンは君を見つめている』という日本語を完成させてしまったら俺は眠ってしまう。


 あの時みたいに口の中のガムを吐き出して銀色を髪の毛を右手から生やそうにも、具体的なやり方が分からないしガムを吐きだす隙も見つからない。


 何か……何か手は無いのか!!





 「ハァ……普段は傍観者に徹するのが()の主義なんだけどぉ、今回は特別に助けてあげるよ」


 


 その声は突然として辺りに響き渡った。

 いや、響き渡ってはいないのかもしれない。


 そう思ったのは俺の目の前にいる氷雨達がその声に気づいた素振りを全く見せないからだ。

 

 「秋に……じゃなくて、君が捕まっているのは()の注意不足が原因な所あるし」


 どこか聞きおぼえのあるような、全く知らない様な不思議な声。

 

 「それじゃぁ行きますか。クロノスクロック・レプリカ!!」


 グゥゥゥンと耳をえぐるような低音が響く。

 それと同時に氷雨たちはピタッと動きを止めた。


 まるで時間でも止められたみたいに。


 「これ結構お気に入りだったのに使い切っちゃった。まぁいいや、このまま君を放置してたら()の首もしまっちゃうし」


 どこかに憎たらしいような、聞きなれたようなその声を発する何かは指をパチンと鳴らして姿を現した。


 「お前……なんでここに?」


 右手には懐中時計を持っていて、首には緑色の金属で出来た輪が嵌められている。

 何より、その見た目は髪を虹色に変えたー


 「あ~、やっぱりバレちゃうよね。正体ばれはNGだし、悪いけどちょこっとだけ脳いじらせてもらうね」


 俺の#、##(##)の姿そのものだった。

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