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【完結】俺の彼女はセイジョウです  作者: アカアオ
2章 ファナエル=???編

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恋心×髪の毛=暴走

『ハネナシ、ミツケタ。ハネナシ、ミツケタ!!』


 ズルリ、ヌルリ、ジワリ、ジワリ。

 鳥頭の怪異は店の窓をゆっくりとすり抜けながら近づいて来る。


 店内にいた他の客にもその光景は目に入ったようで、穏やかだった店内は一瞬にしてパニック状態に包まれる事となった。


 「‥‥‥超能力者って訳じゃなさそうなのですね」

 「多分、琴音(ことね)が好きな悪魔とか幽霊とかのタイプだな。狙いはこいつか」


 雄二(ゆうじ)は俺を見ながらそう言うと、今度は視線を怯えている店員に移す。

 

 「おい、そこで料理運んでるアンタ」

 「え、えっと、私ですか」

 「この机に代金置いておくぜ。釣りはいらんと店長に伝えといてくれ」


 雄二(ゆうじ)はバン!!と机に一万円札を置く。

 俺の10倍の力はありそうなその手で俺と氷雨の腕を掴み、その体制のまま器用に放った回し蹴りを鳥頭の化け物に食らわせる。


 『ハネナシ、フアンテイ??リユウ、フメイ』

 「悪いが一緒に来てもらうぜ?」


 雄二(ゆうじ)がそう言うと、また辺りにテクノチックな音が響き渡る。

 次の瞬間には、俺達はだだっ広くて人気(ひとけ)の無い空き地に瞬間移動していた。


 俺と氷雨の身体は地面にバタッと放り投げられる。

 回し蹴りを直に喰らった鳥頭の化け物は地面と垂直に立ったままスライドするように後方へ吹っ飛んだ。


 「い、痛ってぇ」

 「雄二(ゆうじ)、もうちょっと優しく着地出来なかったのですか!?」

 「無茶言うな、これが精一杯だ‥‥‥にしても、あの鳥頭只者じゃないな」


 お前らは下がってろ、と言いながら雄二(ゆうじ)は鳥頭の怪異と対峙する。

 まるで獲物を仕留めるハンターのように殺気を身を包む彼に対し、鳥頭の怪異は不気味極まりない無機質なその目で俺のことを‥‥‥いや、俺の腕から生えた銀色の髪の毛をずっと見つめていた。


 『ここなら一般人への被害は無いだろう‥‥‥さっき秋良の腕を触ったとき妙な感触があった。体の変化が始まってるな、早いところ氷雨に伝えないと』


 ツン、と頭に痛みが突き刺さる。

 また皆の心の声が頭に直接響いてきた。。

 

 『この鳥頭がを秋良を狙う理由はおそらく、あいつの体に起こってる変化と関係のある事だ。今回はとんでもない厄ネタだな‥‥‥急いでやつを俺たちの拠点に連れて帰らねぇと』

 『お兄さんの悲鳴がどんどん苦しそうなものに‥‥‥‥いざとなったら琴音(ことね)ちゃんから借りた悪魔文字を使ってでもお兄さんを連れて帰るのです』

 『ハネナシ、ツカマエル。ソシテ、アルゴス二、ツタエル』


 この場に居る全員が俺をどこかへ連れ去ろうとしている。

 氷雨達『シンガン』はきっと今すぐにでも俺の腕に生えたこの髪の毛を排除するつもりなんだろう。


 「ッッ、うわあぁぁぁ!!!」


 銀色の髪が右腕から伸びるたびに痛みが増していく。

 まるで病院で打つ注射を何本も何本も腕に刺されてるような感覚だ。


 「もう分かったでしょ、今すぐその状態を直さないとお兄さんの体が持たないのです!!ファナエルさんに食べさせられた何かをお兄さんの体から取り出すのですよ!!」


 そう言った氷雨は修道服のポケットから一枚の禍々しい紙を取り出した。 

 その紙には蠢く文字が記されている。


 その文字はあの不気味な霊府琴音(れいふことね)って先生が紹介していた悪魔文字そのものだった。


 「雄二(ゆうじ)はできるだけその怪異を抑えてほしいのです。私が強制的にお兄さんを眠らせてこの場で治療するのです」

 「おう、無茶はするなよ!!」


 彼はそんな返事をした後、鳥頭の周りを次々と瞬間移動しながらヒットアンドアウェイの戦法で怪異の動きを抑える。


 すぐに楽になるのですよ、と言いながら氷雨は俺に一歩、二歩、三歩と近づいてくる。

 それに比例するかのように、右腕に生える銀色の髪の毛は増殖するスピードを上げてゆく。


 それに伴って右腕に走る激痛。

 意識が飛んでしまえば楽なのにと思ってしまうほどの痛みにもがき苦しみながら俺は考える。


 このままじゃ、本当に死んでしまうんじゃないのかと。

 冷静に考えれば氷雨達は悪い人間ってわけじゃない。

 今の俺みたいに肉体の急激な変化で苦しむ人達を助けているだけだ。


 俺は‥‥‥なんで頑なに彼女達を否定していたんだっけ?

 こんなに痛くて苦しい思いをするなら、ちゃんと彼女の治療を受けたほうが良いに決まってるじゃないか。


 「大丈夫なのですよ、この一件の後にファナエルさんがお兄さんに詰め寄って来ても、私達がちゃんと彼女を説得するのです」

 「‥‥‥‥ファナ、エル」



 『アキラ‥‥‥私の事、見捨てないでね』




 不安そうな顔で、目に大粒の涙を浮かべて、必死に訴えかける彼女の顔が脳裏に浮かぶ。

 そんな顔をしたファナエルなんて見たこともないのに、何故か鮮明にその情景が思い浮かんでくる。


 ‥‥‥‥仮に今がどんな緊急事態だったとしたとしても、だ。

 

 ファナエルになんの相談もせずに氷雨の治療を受けたとして、彼女が愛の誓いとして俺に食わせた髪の毛を彼女の全く知らないところで全部体から抜き取ってしまったとして‥‥‥‥後でそれを聞かされたファナエルはどう思う?


 きっと‥‥‥‥いや、絶対に彼女は深く絶望しながら悲しむだろう。

 もしかしたら俺に拒絶された‥‥‥‥いや、捨てられたって思うかもしれない。

 そうなれば俺と彼女の関係は必然的にこじれる事になる。


 心臓をバクバク鳴らしながら告白して、彼女と一緒に過ごして手に入れた今の関係が全部無くなってしまう。

 俺にだけ作ってくれる彼女の美味しい料理も、俺にだけ見せてくれる彼女の笑顔も、一生見られなくなる。


 そんなのって‥‥‥‥

 そんなのは‥‥‥‥


 「そんな結末だけは絶対にゴメンだ!!」


 初めて抱いた恋心がで暴れ回る。

 半ば暴走しているその感情を叫び声に乗せたその瞬間、俺の右腕からブワッと銀色の毛が大量に生える。


 それはさっきのとは比べ物にならない程に本数を加速度的に増やし、最終的には俺の右腕にぐるりと巻き付いた。


 「ッッ!!ものすごく強大な力なのです!!」

 「オイオイオイ、こりゃ本格的にやべーぞ!」

 『コノチカラ、ハネナシ!!』


 俺の姿を見たこの場の全員が血相を変えて距離を詰めてくる。


 氷雨は右手に禍々しい一枚の紙を持って、雄二(ゆうじ)は瞬間移動で俺の真横に現れながら回し蹴りの体制に入って、鳥頭の怪異に至っては目玉模様が載っている緑色の扇子を前に構えながらロケットのような動きで迫ってくる。


 まさに絶体絶命。

 けれど‥‥‥なんとなくだけど、今から何をすれば良いのかが右腕から伝わってくる。

 ギュルギュルと音を立てながら銀色の髪に締め上げられている右腕を俺は高く振り上げた。


 「今はこんな所で‥‥‥」



 『この鳥頭がを秋良を狙う理由はおそらく、あいつの体に起こってる変化と関係のある事だ。今回はとんでもない厄ネタだな‥‥‥急いでやつを俺たちの拠点に########』

 『いざとなったら琴音(ことね)ちゃんから借りた悪魔文字を使ってでもお兄さんを########』

 『ハネナシ、#####。ソシテ、アルゴス二、ツタエル』



 「捕まるわけにはいかないんだ!!」


 俺は半ば無意識に、銀色の毛が巻き付いている右腕を地面に振り落とした。

 瞬間、地面に真っ白な光がほとばしる。


 その光はなにかのバグでもあるかのように、黒い影が混ざって不安定にカクつきながら揺らいでいる。

 光が襲いかかってくる三人を飲み込んだその瞬間‥‥‥バリン!!!と甲高い音を鳴らしながらそれは爆発した。

 爆風は俺を捕まえようとする3人を抑え、それとは反対に俺の体を空の彼方へと吹き飛ばした。


 「よし、この吹き飛んだ勢いのまま逃げ延びれば!!」

 『ハネナシ、ニガサナイ』

 

 不気味な雄叫びを上げながら鳥頭の化け物はこちらに向かって飛翔してくる。

 あの爆風に逆らって飛んできたのか?!

 しつこい奴だ、なんとか対処したいけど空中に居るせいで上手く身動きが取れない!!

 

 「クソッどうすれば!!」

 『アキラ、タベテ』

 「へ?」


 右腕に巻き付いている毛から声が聞こえる。

 ちらっと振り向くと、一つの束になった髪の毛が俺のポケットから何かを取り出している。

 それは、もしもの時にとファナエルが渡してくれた予備の黒いガムだった。


 『アイツガ、オイツク、マエ二』

 「分かった!」


 髪の毛の束が差し出したそのガムを俺は急いで口の中に放り込む。

 ガシ、ガシ、ガシ、とガムを噛んだ後、口の中に独特の味が広がったその時には‥‥‥‥


 『ハネナシ、ドコイッタ??』


 鳥頭の怪異は俺の姿を見失ったのか、明後日の方向へ飛来していった。


 それを見て一安心したからなのだろう。

 体の力がふっと抜けてしまう。


 気がつけば頭に響く頭痛も、右腕から生えている銀色の髪の毛も、最初から何もなかったかのようにひっそりと鳴りを潜め‥‥‥‥俺はどこかの地面に墜落した。


 「え、ええぇぇぇぇ!!!ちょっと秋にぃ今どっから飛んできたの?!」

 「割り切り姫、奴はお前の兄者か?」

 「そうそう、って結構な怪我してるし。秋にぃ大丈夫なの??」

 「怪我が酷いようなら力を貸そう。友人を見捨てたら私の魔眼が泣いてしまうからな」

 「ハイハイ、手伝うなら変な事言ってないでそっちの肩持ってくれる?」


 そこで俺が見たのは下校中だった斬琉(きる)と彼女の友人であろう中二病間マシマシの女子高生だった。

 すこし意識が朦朧とする中、俺は二人の肩を借りながら家へと帰ることになるのだった。

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