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俺の彼女はセイジョウです  作者: アカアオ
プロローグ

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1/8

死が二人を分つまで

 公園の砂利と真っ黒なヘドロが体中にまとわりついて気持ちが悪い。




 生暖かい温度でぬめっとした感触のそのヘドロの発生源になっているのは、私の視線の先にある公園のベンチに仲良く座っている一組のバカップルだった。




 あのカップルは狂っている。




 今私の手元にあの二人を殺せるバズーカがあれば、あいつらが体を寄せ合って座っている公園のベンチ事消し飛ばしてしまいたい衝動に駆られることだろう。




 なにも、人目もはばからずイチャイチャしているのが気に食わないとかそう言った話じゃない。


 むしろそんな可愛い理由であってほしかったよ。


 


 女の方は最初からだいぶ頭が飛んでる存在だった。


 勝手に世界に絶望して故郷を逃げ去り、自分が理想としている存在を手に入れるためだけに掟も倫理観も自分の体の一部でさえも、使えるものは全部糧にして、邪魔になるものは全部壊して自分だけの幸福を粛々と味わっていた。




 男の方は未熟な心を持ちながらもひたむきな心を持った人間だった。


 自身のコンプレックスと不満を感じる現状を変えるために、必死に動いてなんでも受け入れた。


 自分の体がどんどん人間から離れていこうとも、神を敵に回したとしても、愛する彼女を手放すことはしなかった。




 互いが互いの足りないところを補い、無意識の内に依存しながらお互いを思い合っていた。


 あいつらが起こした被害の大きさを考えたらこんな言葉を使うのは呑気極まりないけど、きっとあの二人にとって今日に至るまでの日常は『青春キラキラ映画』みたいに写ってたんだろうね。




 ほら、今だって女が作ったお弁当のおかずを男が食べている。


 これみよがしにあーんをして食べている。


 体の中に入れたら何が起こるかわからない真っ黒なヘドロがついた弁当のおかずを食べている。




 「鬱陶しいぐらいにお熱いね〜、お二人さん」


 「私達の時間に割って入ってこないで、あなたはさっきみたいに地面に這いつくばている方がお似合いよ」




 服に着いた砂利とヘドロ払い落とし、立ち上がった私が放った嫌味に対して弁当を持つバカップルの女の方、ファナエル・ユピテルは余裕そうな表情で言い返してくる。




 自慢だったその髪も、神秘的だったその瞳の色も、人間の形をしていたその図体も、全部全部全部全部、ぐちゃぐちゃにして、めちゃくちゃにして、汚してやったのに余裕そうな鼻につく笑顔を浮かべて愛する男をギュッと抱きしめている。




 「ここで『はいそうですか』って言いながら帰るなんて面白くない事、私がするはずないじゃん?」




 私のその声に呼応するかのように、ドク、ドク、ドク、ドクと音を立てながら、ほんのり生暖かい紫色の液体が私の両手に絡みつく。




 「私は気ままに過ごしてるけどやると決めたことは何が何でも完遂する」




 ぐるぐると手を這っていた液体がバッ、バッ、と音を打ち鳴らしながら形を変えてゆく。


 右手に絡みついていた液体は槍に、左手に絡みついていた液体は鉄槌に。


 グンッ!!と使わった重力の感触を味わいながら私は構える。




 「君たち二人を殺す」


 「そうはさせない‥‥‥ファナエルと俺の幸せな未来は誰にも傷つけさせない」




 彼女をかばうように私の前に立ったのはバカップルの男の方、牛草秋良うしくさ あきらだった。




 「どーしてそこまでその女にこだわるんだか。君が私についてくれるなら見逃してあげてもいいのに」


 「断る。俺が生涯を捧げる女はファナエルだけだ」


 


 もう人のものでは無くなっているその右肩で愛する女をかばっている。


 腐ったドラゴンのように変貌してしまったその肩でファナエルを守っている。




 その肩が腐敗臭の漂うゴツゴツとしたゴミのような見た目になったのは、君が人間という生物のカテゴリーから離れてしまったのは、他でもないファナエルのせいだというのにその彼女を必死に守ろうとしている。




 「ああそう。それなら私がプレゼントしたその醜い体で必死に二人で慰めあって生きてきなよ!!」


 


 私の叫び声に合わせて秋良は大きく肥大したかき爪を振るう構えをとり、ファナエルは秋良に力を分け与えている。




 「ああ、俺たちはどんなに姿形が変わろうともー」


 「どんな輩が私たちの中を引き裂きに来てもー」




 「「永遠に一緒にいて愛し合って生きる」」


 「結婚式でもしてるつもりかよ!!」




 ザッっと音を立てて擦れる地面を蹴り上げ、私は叫びながら左手の鉄槌を振りおろす。


 腐敗したドラゴンの爪と銀色の鉄槌が衝突しする。


 私の髪を衝撃波が煽る中、私は一つのことを考えていた。




 秋良があの女……ファナエルを好きにさえなっていなければ、この物語はもっと普通の恋愛物だったはずなのにと。

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