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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

呪いのすすめ

作者: 青木泊
掲載日:2025/11/27

ヒューマンドラマにしたかったけど、多分なってない。

ギャグ、ダーク、タグ付けましたが、タグ詐欺の気配がプンプンします。


 おや、いらっしゃいませ。

 久々のお客様だね。

 え?流行ってないのかって?

 そりゃそうでしょ。

 うちは呪術専門の何でも屋ですよ?

 流行ってたら困るでしょ、世の中的に、色々。

 分かってて来たんじゃ無いの?

 あ、そう?

 ちゃんと分かってるなら良いんだけど。


 で、どんなご用件ですかね?

 はいはい、呪われてると。

 それをどうにかして欲しいんですね。


 じゃあ、まずこちら記入していただきます。

 そうそう、この質問事項に従ってね。

 いつからどんな状態か、呪って来てる相手の心当たりなんかもあればお願いします。

 できるだけ正確にね、確実なことならそう書いて、予想なら予想って書いてね、その辺も大事だから。


 …書けました?

 それじゃ拝見しますね。

 ふんふん…

 なるほど、個人的に呪われてるのはほぼ確実みたいですね。

 それじゃ、これからどうするか…

 まずは呪い鑑定を受けるかどうか、それから結界による症状緩和から反射、あとは完全解呪が主な呪い対策になります。

 おすすめコースは鑑定無しの結界弱目・症状緩和で。

 結界の性能とお値段の一覧はこちら…


 え?ちゃんと説明しろ?

 まぁ、構いませんけど長くなりますよ?


 それじゃあまず呪いの鑑定から。

 さっき呪われてるのはほぼ確実って言ったけど、100%では無いわけですよ。そこで呪い鑑定の簡易版をやると、本当に呪いなのか違うのかが判明します。

 ただ、お値段はそれなりにするので、ほぼ確実ならやらないって場合が多いかな。

 呪いじゃ無い場合は、うちじゃどうしようもないので。呪いの確率が低ければ渋々鑑定する人も居ますけど。

 ちなみに簡易じゃ無い正規版だと、呪いの内容から掛けた相手から解呪方法まで全部丸わかり!その代わりお値段バカ高になっております。


 次に結界だけど、これは呪いという見えない攻撃に対して、結界というこれまた見えない壁で防御しようって寸法です。

 呪いの強さと結界の性能によって結果が変わります。

 両者が拮抗していれば呪いの進行は止まり、呪いが強ければある程度の症状緩和に留まる、そして結界の方がある程度以上強ければ相手に呪いを反射させることができる。

 呪いの強さは鑑定しないと分からないけど、結界は強い程高額です。どの程度の結果を張るかは良く考えましょう。

 あと結界は時間経過で消えちゃうので、反射できなかった場合は定期的に掛け直すことになります。

 掛け直すたびに料金発生するんで。

 懐事情が不安な場合は、鑑定せずに一番安い結界を定期的に掛けるのが多いかな?

 もちろんそれだと反射できないけど、日常生活に支障ない程度に緩和できれば我慢って感じで。

 長い目で見ればそれなりの出費になるけど、どの程度なら反射できるか分からないから、思い切りが付かないって人が多いんでしょうね。


 それから反射の注意点として、どんな結果になるか分からないこと。これ大事。

 え?意味が分からない?

 えーと、反射は相手に自動的に呪いが返るんだけど、結界が強ければ強いほど、その分が元の呪いに上乗せされるんです。

 前にねぇあったんですよ、強目の結界張ったら依頼主の恋人が即死しちゃったことが。

 あとが大変だったらしくて。

 何しろ即死なので、なぜ依頼主を呪ったか本人に聞くこともできないでしょ。

 そもそも呪いを返したせいだって判明するまで結構時間が掛かったみたいだし。

 すぐうちに相談してくれれば、亡くなったタイミングから呪いの反射の可能性をあげたかもしれませんけどねぇ。

 相談が無ければ私は何もできないので。

 ええ、捜査が行き詰まってからうちに相談に来て、そこから調べて判明して。

 動機ですか?

 実はその亡くなった恋人は、過去にこっぴどく捨てた元恋人の親友で、復讐目当てで近づいたってことで落ち着いたとか。

 え、そんなやつの呪いを解いてやることないのにって?

 それはだって、うちも商売ですから。

 お客様の為人なんて、いちいち細かく調べませんよ。

 よっぽど態度が悪ければ、多少吹っ掛けるくらいはしますけど。

 いちいち相手を見て依頼を受けたり断ったりしてたら、こっちが客を選り好みするって悪評立てられちゃうし。


 ともあれ、強目の結界を張って反射するかどうかも、反射した結果も、やってみないと分からない。

 その辺ご了承いただきますよ?


 で、最後に完全解呪。

 文字通り呪いを綺麗さっぱり消すわけなんですが…

1、鑑定正規版で判明した解呪方法を行う

2、呪ってきた相手を説得して解呪してもらう

3、呪いを解析して解呪する

 大体この三つになります。


 でも完全解呪はどれもあんまり現実的じゃないですよ?


 まず1は最初に言ったようにバカ高い。

 でも判明した解呪方法が実現可能なら速やかに解呪できるので、一番スマートな流れになりますね。

 とは言え、このパターンは滅多にない。

 解呪方法が無理難題の場合もあるので。というか、その可能性の方が高いので。


 呪いってのは結局恨みつらみから来る嫌がらせでしょ?

 呪いに設定された解呪方法は大抵、より苦しませるためか、解呪させる気が無いか、若しくはそのくらい頑張って解呪したなら許してやろう、って言う仏心のどれかなんですよ。

 だから結構な無茶振りになって、結果として解呪方法が分かっても解呪出来ない例がとても多い。


 あと、呪われた本人が何かしなきゃいけない場合が多いので、そうなると解呪作業を依頼されても私に出来ることが無いので引き受けられません。


 次の2は一番難しいんじゃないですかね?

 まず呪って来た相手の特定が難しい。

 心当たりが本当に当たってれば良いですけど、突撃して違ったり、はぐらかされたらそこで終わり。

 結局確実にってなると鑑定になっちゃうわけです。


 そんで、説得とか可能なの?ってね。

 呪いは呪っている本人がその気になれば即解呪されますけど。

 そもそも呪うほど恨まれてるんですから、どう説得するのかって話ですよ。

 私に説得依頼されても無理なんでお断りしますよ。

 いや、無責任てそんなこと無いでしょ。

 恨み事の当事者でもないのに、何をどう説得しろと。


 で、最後の3ですけど、これが実は一番高く付きますし時間も掛かる。

 呪いの解析ってものすごく面倒なんですよ。呪いが複雑なら年単位掛かるとかザラ。

 え?解析と鑑定は同じじゃ無いのかって?

 全然違いますよ。


 鑑定は呪いの内容が分かるもの。

 それなりの儀式が必要だけど、それでも短時間で詳細結果が出る。そうして分かった解呪方法を行って解呪します。


 解析は魔力の流れやら何やらから、自力でコツコツ呪いがどんな作りかを調べるもの。

 そうやって調べた結果を元に呪い自体を分解して消してしまう。

 元から設定されていた解呪方法は関係ない。というか、鑑定で分かるような情報は全く分からないママで終わります。


 例えるなら本かな?

 呪いの相手や内容、解呪方法等々が細かく中に書いてあって、鑑定すれば読むことが出来る。

 解析は本を綴じている紐を解いてバラしてしまう。中の文字は読めないママ、本として呪いとしての形を失う。

 呪いの複雑さは綴じ紐の複雑さ。紐を切らずに綺麗に解くのがとても大変で、うっかり紐を切ったり本自体を傷付けると、呪いが拗れて余計悪化する。


 ん?悪化されてたまるかって?

 アハハ、そりゃそうだ。

 さて、長くなりましたがこれで説明は大体終了です。

 で、どうしますか?



◆◇◆◇◆◇


「あら、おかえりなさい貴方」

「ただいま」

 帰宅した俺に妻が柔らかく微笑み掛ける。

 夕食の準備中だったのだろう、食材やら鍋やらが並んでいる。

「お医者様はどうだったの?」

「どうもハッキリしないようでね。おそらく疲れだろうと、滋養に効く薬を出してくれたよ」

「そう…、今日は早く休んでね。美味しい夕飯を作るから、しっかり食べてちょうだい」

「ああ、ありがとう」


 やりとりを終えて台所を出ると、居間のソファに座り込んだ。

 最近妙に身体がだるく、悪夢をよく見ては魘されている。

 妻に医者に行くと伝えたが、実際に行ったのは呪術師の所で、滋養に効く薬は途中で買ったものだった。

「反射か…」

 結界による反射で恋人が即死。

 実は心当たりがある話だった。

 以前職場の同僚が、原因不明の体調不良に悩まされていたのだ。甘いマスクでよくモテ、もう良い年だと言うのに度々恋人が変わる遊び人だった。

 しかし、恋人が変死したとかで殺人の容疑者としてしょっ引かれたのだ。

 恋人の死に同僚はひどく取り乱して嘆いていたが、役人は容赦なく引きずって行った。

 過去に振った女性が自殺しただの、精神的に病んだだの、碌な話を聞かなかったが、あの落胆ぶりは演技に見えなかった。

 結局無罪放免されて体調も回復したらしいが、体裁が悪いためかそのまま仕事を辞め、街にも居られなくなったと聞いた。

 詳細は伏せられていたのだが、それがまさかの呪い。それも復讐目当てとは。

「復讐は達成できたのかねえ…」

 社会的に死んだと言えなくも無いが、今やつがどうなったかも分からなければ、どこまでやるつもりだったのか本人にしか分からない。

「…個人的に呪われてるのは、ほぼ確実か」

 一度だけ、元同僚と亡くなった恋人のデートを見かけたことがあった。

 元同僚はろくでなしだったはずだが、二人はとても仲睦まじく見えた。恋人は本当に幸せそうに、柔らかく蕩けそうに微笑んでいたのだ。

 悪い噂が多い男が、本気の恋で改心したかと思うほどに。

 あの時見た微笑みと、先ほどの妻の姿が脳裏で重なった。

「…真っ当に生きて来たつもりなんだが」

 恨まれる覚えなんてない。

 しかし実際に今『ほぼ確実に』呪われているのだ。

 最初は逆恨みか何かだと決めつけていた、しかし本当にそうだろうか?


 ふーっっ


 深くため息を吐く。

 もはや呪いの詳細を知る勇気も、呪いを反射する度胸も僅かも残っていないのだった。

読んでてイラッと来る店主に仕上がっていたら幸いです。

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