あさ おきるとね
学校は、嫌いじゃないよ。休み時間も給食も体育も図工も大好き。でもさ、どうしても朝起きれない。
仕事は、嫌いじゃない。ランチも帰りの居酒屋も大好き。仕事にやりがいだって、、、ね。でも、朝ってつらい。
朝、起きるのってどうしてこんな大変なのかな〜。
絵本のページをめくるようにお楽しみください。
帰りのチャイムがなって
先生が
「気をつけて帰るんだぞー」
って、大きな声で叫ぶまで
みんなで校庭を走りまわるんだ
髪の毛は 汗で束になるし
頭から ゆげも出るし
運動靴は 土まみれ
きっと足の指の間には
いっぱい 土が はりついているよ
ナオくんも 頭からゆげを出してる
笑うとまあるい顔になるナオくん
ゆげが出てるナオくんって
なんだか とっても 美味しそう
走りすぎて お腹が空いたのかな
夜になるとね お風呂に入って
おかあさんに
「早く寝なさいよ」
って言われながら
あったかいミルクをのんで
おやすみなさいを言って
だれもいない
おかあさんの声も
遠くにしか聞こえない
ボクだけがもぐりこめる
ひみつきち
ベッドにもぐりこむんだ
暗いところは あんまり好きじゃないけど
かけぶとんのバリアに守られてるから
一人で寝るのも へっちゃらなのさ
ひみつきちの中は
はじめは ヒンヤリ
だんだん ホカホカ
そのうち
ムシムシ ベトベト
ボクはいつのまにかバリアをはいじゃう
おかあさんには やだ って言ってるのに
いつも いつも
いつも いつも
ボクに はらまきを させるんだ
かけぶとんにも やめて って言ってるのに
いつも いつも
いつも いつも
にげて行っちゃう
ボクは かけぶとんバリアを追いかけて
ベッドの中をグルグルしながら
いつのまにか寝ちゃうんだ
夜
ジャングルの中に いたんだ
朝 起きると
ボクは ゾウに なっていた
ゾウのからだは めちゃめちゃおもい
ベッドもへこんで ゆかに つきそう
おもいからだで
上をむいて寝ていたせいだ
せなかがベッドにはりついて
うごけない
「早く 起きなさ〜い」
おかあさんの ボクをよぶ声が聞こえたけど
ゾウのボクには なにを言ってるのか
まったく わからない
まだ ゾウのからだに なれては いないけど
手と足を
ブン っとふって
ベッドから ころがり起きた
ゾウの鼻の使いかたは
もっと もっと むずかしい
だから 顔もうまく洗えない
じゃぐちは ツルツル すべって つかめない
水も テキテキってぐらいしか出てこない
しかたないから テキテキを
顔にぬってみた
重くて太い足は 階段をおりるのも
ひとあし ひとあし
ゆっくり ゆっくり
階段って いちだん いちだん
とっても せまい
せまくて 高い
やっとこ さっとこ おりきって
朝ごはんを食べようとしても
鼻がうまく使えない
大好きなミルクも 早くは飲めない
だからさ
ナスの入った おみそ汁も
ピーマンの のってるピザパンも
まったく 食べられないのさ
ボクがゾウになった朝は
ゾウ使いのお母さんが
朝ごはんを
口まで運んでくれたらいいのにな
できれば
バナナとか イチゴとか
できれば
ビスケットとか チョコレートとか
ね!
えんぴつ けずるの忘れてた
ちゃんとおもいだせたよ
「朝 みんなの ふでばこをしらべるぞ」
先生の顔がうかんできた
えんぴつけずるの楽しくなった
赤えんぴつもわすれなかったよ
ゾウのことばが話せないおかあさんが
「学校のしたくはね
寝る前にしなさいって言ったでしょ!」
給食着にアイロンかけながら
大きな声で さけんでた
「おかあさんもさあ
きのうのうちにさ
アイロンかけておいたらよかったのにね。」
ゾウのことばで 言ったんだけど
ちゃんと伝わったらしく
おかあさんたら
ものすごく おこった
「シンちゃん おはよ」
げんかんでナオくんの声がした
走って げんかんに行って かがみを見た
きのうの夜 ジャングルは
あらし だったんだ
かみのけは うずをまいている
おかあさんが アイロンのきりふきで
かみのけに シュッシュと きりをふきかけて
手で パパッと うずまきをもとにもどして
黄色いぼうしを ポンと かぶせてくれた
「いってらしゃい きょうも まにあった」
ホッとした 一番いい顔をして
ボクを見てた
大好きなナオくんは
たぶん まほうつかい なんだ
学校につくまで ボクをゲラゲラ笑わせて
ゾウのボクを にんげんのボクに してくれる
ぼうしから 少しはみ出していた 前がみは
ずーっと うずまきのまんま だったけどね
また 夜がきて
お風呂にはいって
うずまきの前がみが もとにもどって
おかあさんに はらまきを むりやりつけられて
早くねなさいよ って言われながら
あったかいミルクを飲んで
おやすみなさいを 言って
寝るんだ
きょうも
ひみつきちは ヒンヤリではじまる
夜は ジャングルの中さ
つぎの日の朝
ボクは オランウータンに なっていた
一日楽しく過ごせる人でも朝って眠い。
朝起きてゾウになっていたら困るけど…大手を振って休めるかも知れません。
みなさんも「子供の頃、お母さんの叫ぶ声が聞こえてたな〜。」
そんな懐かしい思い出はありませんか。
読んでくださりありがとうございました。
彩 夏香