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おっさんのごった煮短編集

緊急ボタンを押しただけ

下ネタです。

お食事前や直後の服用は避けてください。

新年一発目の投稿がこれって、どうなんだろ。


特に落ちがある訳でも無いんですが、何と無く思い付いて書きました。



 両親も早くに亡くして、独身の42歳。

 これといった金のかかる趣味もなく、しいて言えば食べる事が好きなおっさん、それが俺、間藤久志だ。


 食べる事が趣味といって、別に美食家な訳じゃない、中年にしてはスマートで、小食家と勘違いされるが、良く食うのだ、俺は。

 流石にそれを売りにしている大食いタレントのような化け物じみた食欲は無いが、一般人からしたら十分大食いで、まして体型と年齢から対して食わないと思われている分、初めて一緒に食事をした相手には大抵ドン引かれる。


 といって、お高いディナーを堪能しても、近所の安い定食屋と満足度がたいして変わらないバカ舌なので、この歳で未だに質より量な男子学生みたいなノリなのだ。

 コスパがいいと前向きに捉える事にしてるが、単に貧乏性なだけだよなーと悲しくもなる。


 そんな訳で金だけはある俺は元旦の昼間、ちょっと贅沢をしようと繰り出していた。

 そうして向かった先がチェーンのファミレスな辺りが俺である。


 家で炬燵で食べるのもいいと思ったんだが、片付ける手間を考えて、いっそ外食するかとやって来た。大晦日に年末年始のための買い出しで買っておいた蟹を、年末特番をみながらモサモサ食ったあと、酔っ払ったまま炬燵で寝てしまい、朝から片付けて、もう自炊すんの面倒ってなったのもある。


 元旦から営業しているのは、大抵はこうしたチェーン店だ。通りかかった回転すしはとんでもなく混雑していて、チラッと見えた店内に待ち客がごった返していたが、ファミレスの中には空き席ある。


 元旦から働いているスタッフに感謝しながら、俺は入店、お好きな席へと促されて、奥側の二人席へと座る。


 とにかく、年末年始くらいは贅沢してやると蟹を買い、あとは適当に休みの間、日持ちしそうなものを買いだめたんだが、せっかく元旦から外食するんだしと、俺は普段は流石にしない注文をした。

 大食いタレントのような爆食では無いが、食べようと思えば結構食えるので、この手のファミレスのメニューのボリュームは物足りないのが常々、結局、メインメニューの他にフルサイズのピザ、セットのご飯やパンも追加することが多い。

 実のところはそれでもまだ、もう少し食えるかなーなんて思ってたりしたのだ。なので、今日はもう食えないと思うまで食べてみることにした。


 目についたメニューの中から、特に気になったものをピックアップしていく、どうせファミレスだ、ドリンクバーをつけてしまえば、あとはいくらフードメニューを頼もうが一人で一万を超えやしないさと手当たり次第頼んでいく。


 海鮮丼を勿論大盛で頼んで、リブロースステーキをパンとコーンスープのセットで頼む、フルサイズのピザを二つ頼むと、あとは食後のデザートにパフェとパンケーキも頼んだ。

 ドリンクバーもセットでつけて、タブレット画面の精算額はこれでも1万いって無い。


 「やっす」


 思わずと呟いてしまったが、まぁ、食べてみて、まだいけそうなら追加しよう。安上がりに贅沢気分に浸れていいじゃないかと、決定をタップした。



 注文を受けて、先ずは店員がやって来た。


 「お……お客様、お一人ですよね」


 やや焦りながらも、確認してくる。


 「はい、一人です」


 「ええと、デザートは食後とのことですが、他のメニューはどの順番でお出ししますか」


 あー、二人ようのこの小さなテーブルでは乗り切らないのだ。言われて気付くあたり、どうしようもないが、せめて食べ進めながら追加注文をすべきだった。

 というか、いつもはそうしているのに、変なテンションで盛り上がり過ぎた。申し訳ない気持ちになりながら、取り敢えずピザは最初の海鮮丼とリブロースステーキのセットを食べてからでとお願いする。



 海鮮丼は想像していたよりも刺身の盛りが良く、大盛というにはご飯は少なかったが、十分に満足出来る内容で、リブロースステーキもジュージューと鉄板の上で旨そうに焼けていて、コーンスープはたっぷりなコーンとクルトンが濃厚クリーミーなスープに浮かんでいて、バケットもいい感じにカットされ、トーストされている。


 食べあわせとかいっさい考えずに食べたいものを頼んだが、そこはバカ舌、全く気にならずに食べ進める。海鮮丼を食べ終えるあたりで店員を呼んでピザの提供を頼む。

 一枚目のピザが来る頃にはリブロースステーキのセットも片付いていた。

 ピザは定番のマルゲリータと、ベーコンとハムをこれでもかと乗せたハーフと、シーフードをこれでもかと乗せたハーフのハーフ&ハーフ。

 マルゲリータはド定番といった感じだが、バジルの青さにモッツァレラの白、トマトソースの赤は食欲を回復させてくれるには持ってこいで、ハーフ&ハーフはもう溢れんばかりにぎっちりと厚切りベーコンとハムが折り重なるように乗った半分と、反対には各種魚介が満員電車もかくやと押し合いへし合いしていて、これまた食欲を回復させてくれる。


 ドリンクバーから、このチェーンでは一番うまいと思っているキャロットジュースをついでくる。もう4杯目だ。


 ピザをあらかた食べ終わりそうになって、俺は山盛りポテトを追加注文した、店内は元旦だというのに混みあって来ていて、帰省中の息子、娘夫婦を連れた3世代家族なんかがわらわらと入って来ている。

 そのせいか、さっきから提供用のロボットがフル稼働で、一人様の俺への提供は店員が運んで来ている。


 大盛ポテトを持ってきてくれた若い女性店員のまだ食うのって隠しきれない表情に少し心をやられたが、まぁ、気にせず食べ進める。


 デザートが来るからと、俺はアイスカプチーノを淹れた、カップに氷を山程入れて、注ぐ前にガムシロップを2つ入れる、甘党な俺はこれが大好きだ。別にブラックコーヒーも飲むんだが、エスプレッソやカプチーノは激甘がいいと信じている。


 そして、パフェは新年らしく、あんみつふうに白玉やすあまがソフトアイスのまわりに乗せられて、アイスの下には米のトッカン菓子がコーンスターチ替わりにつめられている。上からはアンコと黒蜜がかけられて、シロップ漬けのミカンも添えられている。

 パンケーキは抹茶ソースをかけた上でアンコとホイップがこれでもかと盛られている。因みにホイップは量を選べたので、一番多い「鬼盛り」を選んでみた。もう、厚手にふっくらと焼かれたパンケーキの倍くらいになってる。映える見た目だが、あいにくとSNSなどとは無縁なので無言で食べ進める。



 すべて食べ終えて、まだ少し足りないなーと、唐揚げやサラダなんかを追加して、ジュースを飲みながら今度こそ満腹と食事を終えたのは入店して一時間が過ぎた頃、いつもなら外食店なんて、30分もいれば長いほうなので、流石にあの量を食べるとなると時間がかかる。大食いタレントなら、もっと食える上に速いんだろうなーと、やっぱり中途半端だなーなんて思いながら会計に行ったが、会計してくれた女性店員さんの顔が引きつってたのは見なかったことにした。


 さて、家へと向かう車中、俺は突然の腹痛に襲われる。いつもなら腹八分目でやめるところを、動けないと思うほど食ったのだ、そりゃ腹だって下すだろう。

 それでも最初は焦りも無かった、元旦で道もすいているし、家まで帰るくらいは持つだろうさとたかを括ったが、それがいけなかった。

 途中で事故渋滞に巻き込まれたのだ。

 

 もう、ヤバいなんてもんじゃない、前方が突然渋滞してるなーなんて思っていたら、そこからは一寸ずり、遥か先にパトランプや破損した車がチラッと見えて事故渋滞だとわかった途端、脂汗が噴き出した。

 不味いことに迂回路も無ければ、沿道にこれといった店もない長い直線道で巻き込まれた。

 この道を10分も走って、そこから町中へ降りれば家は直ぐそこなんだが、多重事故のようで、道が復旧される様子はない、完全に車が止まる前に適当にUターンしてしまえば良かったが、気付いた時には前後に長い列、横に入れるスペースもなく、警察の誘導で一台づつ、慎重に抜けていく車列を待つ他ない。


 事故現場の手前には公衆トイレがあるのが、唯一の希望だが、なんとか無理やりUターンすべきか迷う。といってUターンしてもトイレのあるコンビニなどの施設は周辺にはない。

 

 「待った方が得策か」


 後ろの車が妙に詰めてくるので、車間距離的にも切り返すのは難しい、事故車は三台は見えているが、奥にはまだいるのかもしれない。

 公衆トイレの駐車場出口から左右に安全地帯が歩道と車道の間にあり、そこを使って警察の誘導で交互に車列を徐々に流している。


 「この様子なら10分も待てばいけるか」


 切り返す事が難しいとは言え、前後の車の顰蹙を買う覚悟で無理やりいけなくも無いんじゃないかと俺の中で葛藤が渦巻くが。


 「まだまだ余裕っす」


 括約筋は信頼のまだイケる宣言をしている気がする。ここは俺の括約筋の封印を信じて待つべきだと、見ず知らずの他人の顰蹙を買うことすら嫌な小市民な俺は流れを見つめて待ち続けた。



 だいぶ前が進んできた。腹痛の波も収まり、これは大丈夫そうだと、聖域到達までのカウントダウンを始める余裕を見せ始めた辺りで、急に警察が車列の誘導を止めた。なんだなんだと思っていると、サイドミラーごしに反対車線の遥か後方からバックで警察官に誘導されながら大型のレッカー車が来るのが見える。


 正面からでは切り返せないために渋滞の手前からバック進行で侵入してきたのだろうレッカー車は俺を嘲笑うかの如く慎重にゆっくりと牛歩か亀かといった感じで進んでいる。


 「もうムリっす」


 急にぶり返した腹痛とともに、括約筋がいきなり限界を訴えてくる。

 腹から人体からなってはいけない地響き音が車内に木霊する。


 「いや、ムリって言われても」


 またしも噴き出した脂汗で髪が額に貼り付き、インナーがぐちゃぐちゃになっていく、素直に気持ち悪い。今にも地獄の門を解放しようとしている友に、どうにか待てと念じ続ける。

 友よ、トイレでしたら些細な量もパンツの中では大事件だ。ましてや、俺が限界挑戦した後の腹痛、もはやビッグバンもかくやな状態になるのは目に見えている。


 必死に無になるしか無いと極力下半身のことは考えずに意味のないことを思い浮かべることに集中する。


 やっと俺の車を通り越したレッカー車はじりじりと現場へと迫りつつある。


 「相棒、大丈夫だ。あのレッカー車が障害物を取り除いてくれれば、すぐさま楽園へgoだ」


 その瞬間、腹痛の波は嘘のように引いていく。これで大丈夫とレッカー車の様子をうかがっていたが、ここで思いもよらぬ事態になる。事故車が想像以上に動かないのだ。

 どうも、衝突箇所が悪いのか、衝突の勢いのせいか、タイヤ周辺が潰れており、ろくに回らないどころか、ウインチで引っ張られる車から金属やプラスチックパーツがこすられる不快な爆音が鳴り響いてくる。


 それがまた腹にも響く。


 ギーギーガーガーギャーギャーと盛大に鳴り響いく爆音に括約筋の蝶番ががたついていく。今にも門扉ごと大決壊しそうな状態に、ついに過呼吸状態で体が冷えていく錯覚に陥る。

 もう、エアコン全開で設定温度も上げまくるが、とても耐えられない。

 そんな時に限って悪魔は囁くもんだ。


 「大丈夫、ちょっとガスを抜いてやれば、まだまだ余裕さ」


 これが破滅への序章なのはわかっている。括約筋の封印を段階的に解いて、物を残して空気だけ抜いて行けば、確かに少しは耐えられる時間は延びるが、それがいつ、ふいに誤って物ごと垂れ流すことになるか解らぬ諸刃の剣なのも知っている。


 だが、そんなことを言ってる場合でもない。

 マジde(人間)失格5秒前、そんな状態なのだ。


 慎重にゆっくりとケツから空気を抜いていく、スースーというスカシに混じり、時折、予兆なくポンっと破裂音が炸裂する。

 ケツが数ミリ浮く。体感ではソフトボール分くらいは浮いている。濃縮されたガス爆弾がケツ下で俺を押し上げるたび、門に押し寄せる核兵器の恐怖に震える。


 最悪なことに圧縮された濃厚ガスの臭気が密閉され、エアコンをガンガンと焚いている車内に充満する。不味い、あまりの気持ち悪さと吐き気で死にそうになる。

 40代男性、事故渋滞中の車内で吐瀉物を詰まらせ窒息死、元旦から上から下から大決壊。

 そんなゴシップ記事が目に浮かぶ。

 すぐに窓を全開にして空気を入れ替える。新鮮な空気を目一杯吸ってリフレッシュするが、次の瞬間、急激に冷やされた腹が魔神の雄叫びもかくやな呪音を発する。切り裂かれる車内の空気に震える指で今度は窓をオールクローズ、閉めるんだ、俺、閉めようとするも、もう何か意識が遠のいていく。


 そんな時だった。レッカー作業が終わり、四台の事故車を載せた大型レッカー車が警察官の誘導で見事な切り返しで公衆トイレの駐車場へと入っていくではないか。あー、結局4台も事故ってたのかという感想と、何か気が抜けて、不思議と波がおさまった俺は頭を下げて復旧したことを告げているのだろう警察官と、先頭から少しづつ走り始めた両車線の車列に、神や仏に感謝した。


 無事に公衆トイレの駐車場へと入り、いざ天国へと内股走りでgoするも、まぁ、同じ人はいますよね、って話。男子トイレの個室は埋まっていて、その瞬間、括約筋が闇落ちしそうな程に絶望を伝えてくるが。


 「友よ、大丈夫だ、まだ(人間失格回避の)希望ある」


 と一縷の希望へと夢を繋ぐ。

 自分の肛門に話しかけてる時点ですでに人間失格な気もするが気にしない。

 我らの救世主(メシア)、多目的トイレは、嬉しいことに空いていたのだ。


 即刻で駆け込み、地獄の門を開け放つ。

 解放感と爽快感にやっぱりここがパラダイス、色々、元旦からあったが、今年も一年いい年になりそうだなんて考えていた。


 しばし放心状態だったが、良かった良かったとケツを拭き、立ち上がろうとした時だった。


 非常事態で疲弊しきった状態から、何とか事態回避に成功したばかりの俺の体は弛緩しきっていた。

 立ち上がろうしてよろけ、トイレ横の壁に手をついてしまった。

 それがただの壁なら問題無かった。そこに緊急ボタンなんてもんが無ければ。


 火災報知器を鳴らした時のようなベルが何処にしかけてあるんだというスピーカーからグワングワンと鳴る。

 まだ半ケツのまま事態を飲み込めず固まった俺に、今度は半端ない勢いのノック音が襲ってくる。


 「大丈夫ですかーっ、動けますかーっ、何がありました、返事はできますかーっ 」


 係員だろうか、それともたまたま利用していた親切な人、まだ事故処理をしていた警察官だろうか。

 何にせよ、黙っているのは不味い。


 「すいません、間違って緊急ボタン押しただけなんです」


 そこからは大変だった。


 復旧したとはいえ、まだ渋滞が解消しきれてないところに救急車がやって来て、目の前の道路は大混乱となった、警察官からは元旦から何やってんのと散々に叱られ、救急隊員からも叱られ、ついでにトイレにやってくる渋滞被害者たちからも冷ややかな視線を向けられた。


 いや、あんな壁に剥き出して、すぐ横にあるなんて思ってなくて、という言い訳は飲み込むしか無かった。


 

 

今年も皆様、宜しくお願い申し上げます。


ヒューマンドラマで投稿しようと思いましたが、いや、流石にちがうとコメディに投稿しました。


感想お待ちしてますщ(´Д`щ)カモ-ン


流石に実体験ではありませんが、ただ食事量については私を参考にしてます。

昔から良く食うのでミニブラックホールと友人知人に言われますが、大食いタレントほどは食えないので中途半端だなーと。

それでも2キロカレーくらいなら完食できます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 食事量については私を参考にしていますコメントに( ゜д゜)、となりました。凄い。 オチもよかったですし、ハラハラドキドキ展開も面白かったです。
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