最初って肝心
妖怪、それは人間を怖がらせるモノ。雪女とか、首無とか、あとは小学生の時よくやった地縛霊の猫とか。
そしてそんな妖怪たちは本当にこの世界にいる。男はそう言った。
「妖怪のそのほとんどが人を襲って妖力を得ることで存在してる。それを倒すのが僕の仕事ってわけだね」
───コイツは何を言ってるのだろう。
疑いの視線を向ける祐馬に構わず、男は更に話を続けた。
妖怪たちに襲われる人間の中にも、妖怪を倒すことのできる者がいた。俗に陰陽師と呼ばれる彼らは、しかしその数はあまりにも少なかった。
そこである陰陽師が考えたのは人を襲わない妖怪である、龍の力を借りることだった。
龍脈から妖力を得る彼らに、人間の妖力を分ける。その代わりに力を借りようと。
人を襲わない龍も妖力は必要だった為、協力関係はすぐに結ばれた。
龍と適合し、憑依させることのできる人間。
その数は今や陰陽師よりも多いのだと、男は言った
そして龍たちにも火龍、水龍など種類があり、その中には黒龍というとても貴重な龍もいる。
「で、今キミの中にいるのがその黒龍っていうレアな龍だね」
祐馬は話された内容を噛み砕き、理解し……
噛み砕いても訳がわからなくなった祐馬は
あたまが、いたく、なった
男は祐馬を宥めるように肩に触れて座らせ、そして更に話を続けた
その黒龍には適合者が見つからず、暴れたがりの龍は封印を振り切って逃亡したのだそうだ。
そして逃げた先にいたのが、登校していた祐馬だった。
「で、キミとその龍はちゃんとした契約もしてないし、暴走されちゃまずいってわけで、ここに連れてきた、以上!」
あーー………
とりあえずこういう時、頭をかかえたくなるものなんだなと思った。
だってわかんないこと多すぎるし…
「えっと…じゃあお返しするので、これでサヨナラってことに…」
「あ、それは無理だね」
頭をかかえて出した解決策は、即却下された。
「キミに黒龍はもう憑依しちゃってるから、こうなると一蓮托生なんだよね、だから無理に引っ剥がすとどっちも死んじゃう」
さて、と前置きし、男は言った
「キミには二つ選択肢がある」
「一つは僕と同じ狩り人となって妖怪退治する」
「もう一つは死ぬことだね」