第六話 魔法を学ぶ1
前回のあらすじ:
森の狼さんに会いに行くために、魔法を勉強することに決めました。
魔法を勉強することに決めた僕は早速前に見つけた魔法書をもう一度読み直した。
前に読んだ時には引きこもっている間に攻撃魔法を使う機会はないだろうと思って、生活魔法について書かれているところを中心に読んでしまったので、今回は五属性魔法について書かれているところを読む。
前に軽く目を通したときに学んだが、この世界には光・火・水・土・風・闇の六属性の魔法が存在する。
この本ではその六属性のうち光・火・水・土・風の五属性の魔法について詳しく載っている。
残る闇属性については魔族が使用する魔法なので、人間の国の魔法書にはあまり詳しいことは書かれないものらしい。
ただ、よくあるファンタジー世界らしく、闇属性は光属性と対をなしていて、お互いの性質同士は打ち消し合うが、その特徴自体は似ているようだ。
つまり、光属性に回復魔法があるように闇属性にも回復魔法が存在し、闇属性に大規模破壊魔法があるように光属性にも大規模破壊魔法があるらしい。
まあ、光属性は勇者の血筋か聖職者しか使うことができず、闇属性は魔族や魔物しか使えないそうなので、どちらも僕には縁のない魔法のようだ。
そんなことよりも残る四属性魔法の方が重要だ。
火・水・土・風については、それぞれ属性の名前になっている通り、炎や水、氷、砂・土、風などを生み出して攻撃を行うための魔法で、人によって適性があるらしい。
自分にどの属性の適性があるのかさっぱりわからないので、とりあえず片っ端から試してみることにした。
早速魔法書に載っている一つ目の初級魔法を放つ。
「『火球』」
生活魔法の練習で慣れ親しんだ魔力が抜ける感覚とともに、手のひらの先にこぶしサイズの火の玉が現れて飛んでいき、床に落ちて弾け床ごと燃え始めた。
どうやら火属性の適性はあるらしい。
「コリン? 何か大きな音がしたけど大丈夫?」
今は母の質問に返事をしている場合じゃない。
他の属性の適性も調べないと。
「『水球』」
魔法が発動して、手のひらの先に同じくこぶし大の水の玉が現れて飛んでいき、燃えている床に落ちて弾け火を消した。
おお、水属性の適性もあるらしい。
これは幸運だ。
続けて土属性の魔法を使おうとして、手のひらを突き出したところで、部屋の扉を開けて母が入って来た。
「やっぱり大きな音がしたけど、一体何をして――」
母はそこまで言って部屋の床を見て固まった。
その姿を見て僕もようやく気が付いた。
部屋の床は焦げた跡と水でそれはすごいことになっていた。
まだ、少し煙が上がっている。
この体になって以来、かなり好奇心が強くなってしまったようで、魔法など興味を感じることをしていると周りが見えなくなって暴走してしまうことがある。
今回もやらかしてしまったようだ。
「母さん、ごめんなさい。すぐに片付けます」
そう言って、未だ燻っている床に向けてもう一度威力を落として『水球』の魔法を発動させて、完全に火を消し止めた。
それから『洗浄』の魔法を使って、広がってしまった灰や水を消していく。
少し床が削れてしまったが、一応元に近い状態に修復された。
母は証拠隠滅の一部始終を唖然として見ていたが、僕の片づけが終わるとハッとしたように話し出した。
「コリン、家の中で攻撃魔法を使わないでね……?」
「はい、ごめんなさい」
言う通りだった。
家の中で攻撃魔法を使うなんてとんでもない暴挙だ。
しかし、引きこもっている状態でどうやって魔法の練習をしていこう……。
「そう言えば、いつから生活魔法以外の魔法を使えるようになったの? ずっと家の中にいたと思っていたけど」
「ちょっと訳があって練習していたんです」
さすがに森にいる狼に会いに行くためとは言えない。
そんなこと言ったら心配されるのが目に見えている。
すでにいろいろやらかした関係でだいぶ心配をかけてしまっているので、今更な気もするが、これ以上心労をかけるようなことはしたくない。
「そう、きっと大切な理由があるのね。もしきちんと学びたいならネリクに教えてもらうのがいいと思うわ」
「父さんに? 父さんは魔法が使えるのですか?」
「ええ、あなたの怪我も治してくれたじゃない」
そう言えばそうだった。
灯台下暗しとはよく言ったものだ。
今回も身近なところに先生がいたようだ。
攻撃魔法は父に教えてもらうことにしよう。
少し短いですが、区切りがいいのでここで切ります。