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第二話 この世界を調べる

 後書きの一部を修正しました。(2022/4/11)





 最初の投稿になりますので、三話分を今日中に出します。(3/3)









 魔法の存在するファンタジーな異世界に転生し、コリンとして新たな人生を歩んでいくことになった。



 こちらの世界に来て早半年が経った。

 森での猪事故が起きてから、僕はずっと何かと理由をつけて家を出ないようにしていた。

 前世で長らく引きこもっていたので、外に出るのが怖いのだ。


 両親は僕が森に対して恐怖心を(いだ)いてしまったのではないかと心配していた。

 怪我自体は父の魔法で当日中に治っているので、そう考えるのも当然だろう。

 実際、外が怖いという意味では間違っていない。


 そんな風に一日中家にいるわけだが、何もしていないわけではない。

 その時間を使ってこの世界のことを調べていた。

 どうもこの体になって以来、好奇心というか、いろいろなことに対して興味が湧くようになったことも理由の一つだ。


 まず、調べようとして、この家をコリンの記憶も駆使しながら(あさ)って行った。

 しかし、家の中の物置部屋のようになっている部屋に本が二冊あるだけで、他には参考になりそうな物は見つけられなかった。


 まあ、文明が発達するまで本はとても貴重な物だったらしいし、二冊も家にあっただけでも幸運と思うことにしよう。

 この二冊の本は勇者物語と魔法書だった。


 一冊目の勇者物語は勇者と魔王の戦いを描いている。

 魔王が肥沃な土地を持っている人間の国に対して魔王軍を差し向け、それによって人間の国はどんどん追い詰められていき、あわや滅びるというところで、人間の国によって勇者が召喚され、異なる世界を渡った際に得られた力で魔王軍に立ち向かい、最終的には魔王を倒し、人間の国が救われるという内容であった。

 

 要約すれば、人類の危機に現れる勇者と呼ばれる存在が悪しき魔王を打ち倒すという、前世の世界でもお馴染みのお話だ。

 ただ、昔話のような感じでどこまでが本当のことを言っているのかわからない代物の感じを受けた。


 最初、この物語を読み始めた時ほとんど内容が理解できなかった。

 というのも、まだ十分に文字を勉強していなかったからだ。

 当たり前なのかもしれないが、この世界の言語は僕の前世で親しんだ日本語とは全く違うものだった。


 この年齢になるまでの間の生活である程度会話は自然にできるようになっていたので最初は違和感に気付かなかった。

 しかし、こうして物語を本で読もうとすると、両親に少しずつ教えてもらっていた語彙力ではわからない点が多すぎて、まともに読むことが出来なかった。


 困った僕は本を持って母の元へ行き、読み聞かせてもらうところから始め、数回読み聞かせてもらっては、自分の部屋に戻って口に出して読み直して、少しずつ意味を読み取っていくという作業を繰り返した。

 まだ子どもだったおかげなのか、前世で英語や中国語などの外国語を勉強した経験が生きたのかはわからないが、半年の間にかなり言語自体は理解できるようになった。


 ただ、その血の滲むような勉強の甲斐あってようやく完全に読めるようになった勇者物語の中で、この世界に言語が一つではないという残酷な事実を突きつけられた……。

 この世界には人間と獣人、悪しき魔族以外に、他にもドワーフやエルフと言った種族が存在していて、彼らは別の言語を使っているというのだ。

 そんな事実に軽く眩暈(めまい)を覚えながら、恐る恐る母に尋ねると、たしかに他の種族が存在し、エルフ語やドワーフ語などの複数の言語が存在することが確定した。


 まだ、救いだったのは、敵対している人間と魔族、そして獣人は使用している言語が同じだったということと、ドワーフ語や古エルフ語といった言語は現在ではほとんど使われていないということだった。

 まあ、今後も引きこもっていく予定なので、気が向いたらゆっくり他の言語もやってみようと思う。


 さて、二冊ある本のうちのもう一冊の方、魔法書は、魔法を勉強し始めた人のための入門書のような本だった。

 正直、この世界の魔法について、猪事故で耳にした回復魔法と日常生活で少し使う魔法しか目にしていない僕にとっては、詳しい説明まで書かれていてとてもありがたい本だった。


 本によると、この世界の魔法体系は光・火・水・土・風・闇の六属性とそれらに分けられない生活魔法によって構成されているということが分かった。

 ただし、光属性は教会の神官や聖騎士の一部、物語に出てくる勇者の血筋しか使えず、逆に闇属性は魔族や魔物しか使えないらしい。


 火・水・土・風の魔法は主に攻撃魔法として存在していて、光属性と闇属性は攻撃と回復を行う二つのタイプが存在するらしい。

 正直怪我を治すというのは、聖職者のイメージが強いので、闇属性にも回復が行えるというのは驚いた。

 もし闇属性に回復の力がなければ、魔族は怪我をしても治せなくて困ってしまうので、そういう意味では当然なのかもしれない。


 というように、この魔法書では魔族しか使えない闇属性を除く五属性の魔法について、いくつかの初級魔法から上級魔法まで含めて解説しているのだが、正直、引きこもっている間は必要にならないように感じた。

 先に学んでいた言語などはこの世界のことを調べたり、読書したりするのに役立つと思うが、攻撃魔法はこの世界で暮らしていくのに必要なのかわからない。


 家の中で一匹見つけたら百匹いると思えという例の黒いあいつを消滅させる以外には必要にならないと思う。


 本当は万が一の怪我に備えて回復魔法も学んでおきたいが、僕は聖職者になるつもりはないので諦めることにする。

 引きこもりの聖職者とか、ちょっと信用できないからね。


 それよりも生活魔法の方に興味が湧いた。

 生活する上では、洗濯とか、掃除とか、お風呂とかが死活問題になってくる。


 本によると、生活魔法には服などを綺麗にしてくれるものがあるし、お風呂に入らなくても体を綺麗にできるものもあるらしい。

 さらに、回復魔法では治せない病気や若干の体調不良まで治すことができるものまであるようだ。


 お風呂に関しては温かいお湯にゆっくりと浸かるのが好きという人もいると思うけど、引きこもっている人にとっては大変に面倒くさくて、でも入らないわけにもいかないというジレンマに悩んでいる人も多いことと思う。


 そんな悩みを生活魔法は解消してくれるようだ。

 本来は旅などの長距離移動の際に、どうしてもお風呂には入れないが身を清めたい人が使うものらしいが、結果が同じであれば問題ない。

 生活魔法は攻撃魔法ほど強力ではないし派手さもないが、日常を格段に快適にしてくれるもののようだ。


 ということで、僕は生活魔法を学ぶことに決めた。

 しかし、いきなり問題が立ちはだかった。

 この魔法書、花形の五属性魔法については魔法名まで入れて詳しく解説してくれているのに、生活魔法については、その存在や役割にしか触れておらず、具体的に学ぶことができない。


 どうやらこの魔法書の作者は攻撃魔法を主に扱っている人で、影の薄い生活魔法についてはあまり興味がなかったようだ。

 ここで生活魔法の習得を諦めてしまうのは悲しすぎる。これだけ便利になる可能性を見せつけられてできないのでは、あまりにもひどい。


 攻撃魔法の一部を改変して生活魔法に転用してしまおうか。

 火魔法と水魔法を組み合わせて温水を作って、体を濡らした後、タオルで拭きとって、火魔法と風魔法を組み合わせてドライヤーみたいにして乾かせばいけるかもしれない。


 ただ、これだと、五属性魔法を勉強しなければいけないし、それらの適性がなかった時には実現できなくなってしまう。

 それに調節をしそこなえば、熱湯や熱風の犠牲者が出てしまうかもしれない。

 魔力で生み出されたものの振る舞いがどのようなものなのかはわからないが、火炎放射器のようになってしまったら目も当てられない。


 何か他に方法はないものか……。

 などと考えていると開けっ放しだった部屋の入口から声をかけられた。


「コリン、そろそろお昼ご飯にするわよ」


 その瞬間に閃いた。

 生活魔法を使える先生が身近にいるではないか。


「母さん、僕に生活魔法を教えてくれませんか?」

「え? 魔法を勉強したいの?」

「うん、生活魔法を使えるようになりたいんです!」


 そう言うと、母はとても喜んでくれて、教えてくれることになった。

 どうやら僕が家から出なくなってとても心配させてしまっていたらしい。

 その日から生活魔法の勉強が始まった。









 攻撃魔法はどのファンタジー小説でも出てきて、とてもかっこいいですが、生活魔法もいざ生活する上ではとても便利ですよね。

 掃除、洗濯、食器洗い、お風呂など一つ一つはそれほど大変ではないんですが、毎日全部やっているとものすごく疲れます……。





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