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あなたのバーチャル嫁が現実に出てこないと思った?

「私、バーチャル配信者やり始めたんだよね」

「――お、おお、すごいじゃん。今週から始めたの?」

「いや、ごめん。正確に言うと、バーチャル配信者なんだよね」

「ん? 違いがわからないけど、凄いことじゃん?」


 真理恵は卓上の課題を片付けながら話を進めた。


「康大くんも知ってる配信者だよ」

「え?」

「あ、でも、最近だと、色んな配信者の動画を見たりしてるんだっけ? 恵美理ちゃんに教えてもらって」

「どういうこと? てかなんだか棘ありません?」


 道具をしまい終わった真理恵は立ち上がり、パソコンの方へ向かい始めた。

 そして何の躊躇いもなく椅子に座り、パソコンを起動し始めた。


「あれ、パスワード掛けてないんだ。ま、それもそっか」

「まあ、一人だしな。じゃなくて、何を始める気だよ」

「いいやあ、浮気現場をってね」


 良く分からない理由で起動し終えたパソコンを操作し始めた真理恵。

 ついこの間パソコンを購入したと言っていたのは嘘と思える具合の手つき。

 迷いなくブラウザを起動、そしてそのままブラインドタッチで検索開始。


「へぇ~――ほぉ~……なるほど」

「俺のアカウント使って何してるんだよ」


 俺は腰を上げ、真理恵の隣に立ち、企みを確認することにした。


「いや……なんかさ、ごめんね」

「いや、何がよ」


 真理恵は両手を太腿の上に乗せ、頭を下げ始めた。

 俺はその行動の意味を知るために画面に目線を向けた。


「ん? これがどうしたの? ブラウザ閲覧履歴が何か?」

「うん、実は私ね、いや……私が()()()()なんだよね」

「はい?」


 俺は俄に信じがたい言葉に耳を疑った。

 思いもよらない衝撃的な出来事に時が止まったように思えた。今この時、時間が緩やかに流れているのでは無いのかと錯覚するくらいに。


「エイラムって、俺の知ってる? え、でも、彼女って真理恵がお薦めしてくれて……ど、どういう……こと?」

「まあ、混乱するよね。じゃあ、これ見て」

「――――まじかよ」


 真理恵から渡されたスマホにはエイラムのチャンネルページが表示されていた。

 しかも、所有者しか開けない管理者ページという、揺るぎない証拠だった。


「信じてもらえた?」

「これを見せられたら、信じるしかないけど……」

「じゃあ、最後に名前の由来についても聞いたら確信に変わると思うよ」

「……」

「英語で私の名前を表記すると、MARIE。それを逆にすると?」

「EIRAM、エイラム……エイラム!」

「そう、自分でも中々安直だったとは思ってる」

「まじ……かよ……」


 予想だにしない情報が次々に入り込んできて、完全に思考能力が低下している。

 そんなキョトンとした顔の俺に、真理恵は立ち上がり質問を投げかけてきた。


「じゃあ、改めて聞くけど、あなたの嫁は誰?」

「……エイラム……ちゃん」

「わかっているならよろしい。じゃあ私が言いたいことはわかる?」

「いや、ちょっと……」

「あなたには私と言う嫁が居るんだから、他の子との仲良くするのは程々にっ!」


 最後に決め台詞を決めるように、両手を腰に当て、俺に言葉を投げた。


「あなたのバーチャル嫁が現実に出てこないと思った?」



 怒涛の流れに俺は二つ返事で、ただ「はい」、としか口に出せなかった。

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