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ボランティアの亜種みたいなもん

「とりあえず、できるとこから書き直すしかないか」


 あの日、放課後に勧誘を受け始めてから一週間。根負けしたとはいえ、首を縦に振ったことを早速後悔していた。

 こいつほんとどういう思考回路してんの?


「でも、書き直すところある?」


「むしろ書き直さなくていいところの方が少ないだろこれ」


 まず、部活名。

 素直なのは美徳といえどこれは酷い。


「これさ、『ボランティア部』とかじゃダメなの? やること的にはそれでも間違ってなさそうだけど」


 超能力云々なんて基本的には信じてもらえないし、信じてもらう必要もない。そもそも大々的にそれを知らしめて良いことなんて一つもない。

 活動内容から察するに、椎名のやりたいことは人助け。世界を救うヒーローにはなれないとなったら次は超能力で人助けとはかなりのグレードダウンな気がしないでもないけれど、本人が納得しているならそれに越したことはない。

 そして、やりたいことが人助けなら、わざわざ超能力なんて単語を書く意味はどこにもない。


「ダメだよ!」


 なんかダメらしい。


「だって! 超能力って入ってる方が格好いいじゃん!」


 ダメなのはこいつの頭だった。


「そ、それに、部員は超能力者じゃないとダメだから『ボランティア部』だとそうじゃない人も入ってきちゃうかも!」


 さすがに弱いと思ったのか椎名は思い付きでそう続ける。

 けど、まぁたしかにそれはそうかもしれない。俺だったらボランティアとか奉仕活動なんて強制でもない限り絶対やりたくないけど、世の中にはそういうのを率先してやろうとする凄い人もいるわけだし。そういう人たちに来られてしまうのは椎名の思う部活動とは少し逸れてしまうわけだ。


「んー、じゃあ、そうだな……。……せめて、超能力って単語だけでも何とかしたいな……」


 諸悪の根元はたぶんこの単語。

 せめてこれを他の言い回しに変えて、あとはなんかそれっぽいこと書いとけばまだまともな感じに見えるはず。

 携帯で類語を探すと思ったよりも色々でてきた。


「オカルト……異能力……神通力……」


「……あ、これとかいいんじゃない?」


 候補を読み上げていると、机から乗り出すようにして椎名が候補の中から一つを指さした。


「……超常現象」


 ……まぁ、他のに比べたらまだましな感じはしないでもない。

 なんか理科とかそっち系の雰囲気もあるし。ならいっそもうちょっとそっちに寄せる感じで


「『超常現象研究部』とか」


「なんか格好いい!」


 部長の賛同は頂けたらしい。

 じゃあ、部活名はこれで決まりっと。


「んじゃ、活動内容はあれな。様々な超常の現象に対して検証、考察を行い、そこから得た知見を元に超常現象に関する相談の解決に努める、みたいな」


「おー! なんかそれっぽい!」


 さっきから適当なこと言ってるだけなのに大絶賛でちょっと怖くなってきた。ほんとに大丈夫なんだろうかこれ。


「まぁいいや。次は活動場所……これって許可とか貰ってるの?」


「空き教室だから大丈夫なんだって」


「そ、じゃあ大丈夫か」


「あ、ところでさ、今日進級テスト返ってきたよね」


 次の欄へとペンを走らせると不意にそんな話題を投げ掛けられた。

 そういや、椎名は勉強できるのだろうか。気になって顔を上げるとにまにまと笑みを浮かべる椎名。なに、点数マウントでもとられるの?


「どうだった?」


「……一応、全教科八十は越えた」


「おー、凄いね!」


「まぁ、それなりに勉強はできる方だから。椎名は?」


 聞くとわざとらしく胸を張りピースサインを向けて満面の笑みで答える。


「今回、なんと全て平均点の半分以上でした! 赤点回避です!」


「普段の椎名を知らないからあれだけど、それ世間一般的にはふんぞり返って言うことじゃないからな。つーか、超能力使え。そしたら、カンニングし放題なんだから」


「超能力は悪用したらダメだよ。もしかしてカンニングしてるの?」


「えぇ……めちゃくちゃまともなこと言われた……。いや、してないけどね」


 そもそもカンニングするより自力で勉強して点数とった方が確実で安心できる。

 というか、急にまともなこと言うのやめて欲しい。なんか俺がおかしいみたいになるじゃん。


「あー、えっと……部長と副部長の欄は問題ないから、あとは部員数か」


 話を切り替えようと再度申請書に向き直ると椎名の意識もそちらに向いたのか、チクチクと刺さる視線を感じなくなった。


「あれ? なぁ、これ部の条件は部員が三人以上からって書いてあるんだけど」


「あー、それなら大丈夫だよ。生徒会長が名前だけ貸してくれるから」


「生徒会長?」


「うん。こういう申請書って生徒会に提出するんだけど、その時に貸してもらうことになった。空き教室の話とかも教えてくれたよ」


「……へぇ」


 クラスの人気者はどうやらクラスの外でも顔が広いらしい。


「『超能力?見せてみろ』って言われたから生徒会長が洋モノの○V学校に持ち込んでるって弱みを握ったら凄く饒舌に色々喋ってくれたよ」


「めちゃくちゃ超能力悪用してるじゃねぇか」


「ねぇ、知ってる? 生徒会長に『hey guys!』って叫ぶとビクッとするんだよ」


「汚ねぇ豆柴やめろ」



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