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とあるくもりの日、或いは晴れの日

作者: けゆの民


 雨がぽつぽつと降る憂鬱な……それでいて、ちょっとだけ楽しくなるある日。

 私はスイカを持っていた。

何の変哲もない、至って普通のスイカだ。

 だからこうして今も私の手のひらの上で開閉しているわけだし、そのサイズも手のひらサイズに収まっているわけだ。


 私はその開閉しているスイカの中に指を入れていつも通り遊んでいる。

スイカの赤い果汁が指を冷やす。

つめたいなぁ……

強く噛みすぎたのか、中身が潰れてぐしゃぐしゃになっていく……そこまでして食べたいのかな?

やっぱりかわいいね。


ああ、かわいそうに。

かわいいスイカは緑色の皮を残して液体になってしまった。


私は地面に垂れ落ちた赤い血液を拭き取りながら、次のスイカを探す。



「あ、ねこだ!ぬこぬこ!」


 今日も今日とて左手にスイカを乗せて辺りを散策。

 今日もあいにくの雨で……絶好の散歩日和。

 長靴を履いているので水溜まりも怖くない。

 ぴょん、と浅い水溜まりを飛び越えた先にねこはいた。

しろくて、浮いているぬこだ。

もちろん、地面から浮遊している、なんて意味じゃない。

そんなねこ、いるわけないじゃん?

 単純に輪郭がくっきりしているだけ。

なんて言うんだろう……?

存在感がある、みたいな?


 私はぬこをじっと見ている……すると!そのぬこがちいさな椅子になったではありませんか!


「うわあ!」


 そんな突拍子のない変形に驚き……そして、私は右手にそのぬこ椅子を乗せる。 


 今日の収穫はこんなものでいいかな?


ほら、スイカも普段よりも大きく開いてるし……うん、満足!



朝起きたら、嵐だった。

風がびゅうびゅうと吹き荒れ、窓の外を見るとたくさんの何かが飛んでいる。


「うわぁ……強いね」


枕元にあったスイカは今日も元気に開いたり閉じたりと自己主張が激しい。


そんな散策に向いた日だけど……私はなんとなく、家に籠ることにした。

あたらしいなかま……ぬこぬこが私には付いてるからね!


なぜか難しそうな本に返信しているぬこを右手に、いつも通り開閉しているスイカを左手に、私はドアを開けて外に出る。


外に出ると、そこには一面の大海原が広がっている。

なんてことはない日常風景だけど……今日は穏やかだなぁ。

いつもなら、こう……波がぐわんぐわん、となっているんだけど……


「知ってる?」


ねことスイカからは当然答えが返ってくるはずなく、私の声は雨の音に掻き消される。





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