妄想か?
「そこのキミ、珍しいものを連れているね」
肩に乗っているムスメスライムのスラリンのことだろう。
「何か用ですか?急いでいるんですが?」突然話しかけられて
動揺するおれはそう答えていた。
「キミはテイマーかな?」
「はい、そうですが」
「つれないね~、綺麗なお姉さんに声を掛けられてそれはないでしょう?
キミ何歳?」
「今年で11歳になります」
「まあ、色づく前だから仕方ないか、よければ食事などどうだい?
当然私がおごるよ」
俺と露原は怪しげな人物を見て2人そろって訝しんでいた。
「なあ、露原、話くらい聞こうぜ」
だがこんな、初心者且つ子供のパーティーに何の用かは知らないが
話くらいは聞いてもよさそうだ。
もしかしたらこのまま露原とお別れになるかもしれない、そんな雰囲気が
漂っていた中、降ってわいたイベントだ。逃すことは愚かだ。
「なあ、ただ飯が食えるんだ。いいじゃないか、後、俺一人じゃあ不安だから
露原も付いて来てくれよ」
露原は大きくため息をつくと、仕方ないなと自分に言い聞かせるように
「ただ飯が食えるならたとえ火の中水の中だ。喜んでついて行こう」
連れていかれたのは、この街で最も安い酒場だった。
「おいし~、久しぶりの肉だ」そう言うと露原は肉にかぶりついていた。
「いただきます。」
そう言うと普段あまり食べていないので、肉に全力で攻撃を仕掛けた。
俺と露原は未成年なのでお酒は飲めない。エールではなく水割りオレンジ
を注文した。
飲むと毒耐性が付いて、さらに最大HPが上がるらしいのだが、
俺たちは飲めない。どうやら薬草をちびちび食べながら飲むのがよいらしい。
俺たちが空腹を満たし、1服すると食事をおごっているホストが
おもむろに尋ねてきた。
「君たち年齢はいくつなの?」
「俺が11歳で、こいつは10歳です」
「ふ~ん。」
「あ、私は、英島 豊 ゆたか、じゃなく、とよ、だよ。女性だからね」
「君はテイマー?モンスターを仲間にできるの?」
顔はフードに隠れていて見えないし、かなり低い声だが、話の通り女性だろう。
俺は自分の所有しているペットが戦力と言えるかはわからなかったが、
「はい、まぁ」と一応同意しておいた。そのほうが話がスムーズに進みそうだ。
「へぇ、どんなモンスターをテイムしたの?」
「おれの従えてるモンスターを知りたいんですか?がっかりすると思いますよ。」
「ここで出してくれないかな?」
「わかりました。ほんとはこんなところでペットを出すべきではないですが、
小さくて、かわいい系ばかりなので大丈夫でしょう」
「まず、うちのエース、初級回復魔法と初級状態異常回復魔法を
使用できるムスメスライムのスラリンです」
俺ははずかしがるスラリンを紹介した。
スラリンを見て英島さんは興味深そうだった。
ぶつぶつと(抱いて寝ると気持ちよさそう)などと独り言を言ってから口を開けた。
「回復魔法持ち?それはレアだ。本当にレアだ」
「私も長くここにいるけど回復魔法を持ったペットなど見たことがない、
マーケットで売り飛ばせば、大金になるぞ」
スラリンは俺の嫁なので丁重にお断りした。
「残りはレベル5のスライムが5匹です。特に特徴のない普通のスライムです」
「う~ん、レベルも低いし、経験もなさそう、かなり不安だね」
「私もあんたたちみたいなのは雇うの嫌だけど、調教師って稀少だからね」
「稀少なんですか?」
稀少と言われ俺は問い返していた。
「うん、この世界に基本職の転職システムはないし、たいていは
火力が出せて、ソロでも戦える戦士系や魔術師系がほとんど、
パーティーってモンスターの敵意を引き受けて盾になって見方を守る『タンク』、
モンスターにダメージを与えて倒す『アタッカー』
敵にデバフ、味方にバフをかけて補助する『バッファー』
傷ついた味方を癒す『ヒーラー』
で構成されているけど、
『テイマー』ってどれにも当てはまらない。だから役立たず」
役に立たないといわれてしょんぼりする俺に英島は言った。
「まあ、生産職の鍛冶屋や縫製屋とおなじでペット屋だと思えばいいでしょ。
調教師ってコストパフォーマンスがいいだけで、お金にならないからね。」
挨拶が済んだからか英島さんは本題を持ってきた。
「あなたたち、ウルティメットドラゴンって聞いたことある?」
「いえ、ないです」2人同時に即座に首を振った。
名前的にウルティメット(究極)な、ドラゴン(龍)だ。
見た瞬間逃げるだろう。
投稿用に真面目に書いた初めての作品です。
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