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RPG 009  作者: 初書ミタ
HP30で HP100万を倒せ
2/34

最低限の生活

「ふぁぁ~、よく寝た。」



 俺はいつものように宿に併設された馬小屋で目を覚ました。


 露原が俺を差別して雑に扱っているわけではなく、


単に耐久度が低くなっている麻の服を着ているためか、


宿屋のお姉さんが、宿の部屋に泊まることを断るように


宿屋の主から命令されているだけだろう。




 馬の糞尿のにおいが付いているといけないので


馬小屋の裏手にある井戸の水で麻の服と体を丁寧に洗った。



 春先を過ぎたとはいえ、まだ夏には遠い、朝に水を浴びるのは


正直、寒い。体を拭うものがないので、そのまま麻の服を着ると


水が気化するせいで、氷を浴びているようだ。



 日も上がってきているので、宿屋の一階のドアをノックすると


宿屋のお姉さんが出てきた。



「入っていいですか?」俺は明らかに迷惑そうな表情をする


受付嬢に露原を呼んできてもらえるように頼み、


 ドアの外でブルブルと震えながら、足踏みをしていた。


 一時間ほど待っていると、二階の部屋から宿屋の一階にある食堂に


露原が降りてきた。


「おはよう、そろそろ食事ができると思うよ」


露原はそうそっけなく言うと、隅にあるテーブルに座った。



「今日の朝食は何ですか?」俺がそう尋ねると、



 露原は、ベーコンとオムレツ、トマトスープと白パン、エールを注文した。


食事の内容は俺も同じだ。ただ、露原はテーブルで食事をするが、


俺は地面に木の皿を置いて食事をする。



「あのう、この服を何とかしてくれませんか?」



俺は心底、困ったように懇願した、実際心底困っている。



「鎧なんかは割と低レベル向けの物がマーケットに出てるけど、


木綿や麻の服を出品しているプレイヤーはいないようだからね。


それで我慢するしかないよ」



「そうですよね」同意しつつも俺は泣きそうになりながら、


馬小屋生活から開放されることを切望していた。



 俺と露原はここ、ビギニングヴィレッジの丸太を組み合わせてできた


粗末な北の門を出ると、薬草採集に向かった。



向かったといっても、門が見えるような範囲での薬草採集だ。


 危険はそんなにない。しかし、スライム程度とはいえすべてアクティブなので


麻の布だけの装備では戦闘になると死んでしまう。




 ダメージを負うと、回復に薬草が必要になるため、薬草採集に来ているのに


無駄な時間が増えることとなる。そのため俺に戦闘経験はない。


 スライムが近寄ってくれば、露原が処理してくれる。




 毎日、薬草を集めている俺たちだが、現実は残酷だ。


 貨幣価値がどんどん下がっていく、つまり、宿代、飲食費


生活費などの物価が上がっていく。そのうち生活できなくなるだろう。




スライム一匹の落とすのは銅貨一枚だ。144匹倒してようやく、


金貨1枚だ。1人が宿屋に1泊するのにスライムなら1440匹倒す


必要がある。薬草採集なら1回で1金貨相当だ。





 現在、俺たちは様々な薬草を採集してマーケットで売っている。


薬草自体は固定値の回復なのでレベルの高いプレイヤーには、


役に立たないのだが、高レベルのクラフターは錬金術でポーションが作れるらしい。


薬草から作られるポーションはパーセンテージ回復なので、


上級プレイヤーが頻繁に購入する。




 たいていの奴はレベルが上がると薬草採集などせず、戦闘で稼ぐ。


中級者になるかならないかまではマーケットのおかげで、


薬草採集のほうが効率よくお金を稼げるのだが、


 全く戦闘レベルが上がらないため、まず誰もしない。




 俺が生きていられるのは露原のおかげだ。スライムに襲われて


死にかけるという体験はもうしなくなった。俺一人ならとっくに野垂れ死にだ。


 いつものように薬草採集をしていると、何かが動いた気がした。


 薬草を入れている袋に、俺が露原に発見されてからずっと持っていた卵がある。




何の反応もなく、模様が気持ち悪いので捨てようとしたのだが、


 取引も捨てることもできない特殊アイテムだった。


 ぴくぴくと動く卵をじっと見ていると、ピンク色のスライムが生まれてきた。




「ぴっぐー」と謎の音声を発するそれは非常にかわいかった。


 俺がしゃがみこんでじっとしているのを訝しんで、露原がのぞき込んできた。



「ぉおー、小さい、かわいいよー」



 露原は目をまん丸くして、ピンク色のスライムをしばらく凝視していた。


 片手に乗るサイズなので子猫のようだ。




投稿用に真面目に書いた初めての作品です。


面白いと感じてもらえたり


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