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RPG 009  作者: 初書ミタ
HP30で HP100万を倒せ
19/34

神の消滅

俺たちは冒険者ギルドに寄ると、「魔法が封印されたため生活ができません。」


を受けることにした。すべての魔法を封印する術式は、自らを封印してしまうため


効果が全くない。この件はもっと別なところにありそうだ。


幸い、剣士として自信がついてきたし、露原もいる、大丈夫だろう。


 霊体のリエルがどう反応するかも見たい。



 その村は ビギニングブルグから馬車で6日ほど行ったところだ。


村に入ると村長らしき人物が出てきた。


「遠くからお越しいただき、ありがとうございます。」


 話を聞くと塩や砂糖を作る生産魔法、


黒や白などの戦闘魔法も使えないようだ。


話をしているとリエルが言った。


「マナの気配がない。」



「マナはあるだろ、英島?」



「カズさんのマナは感じ取れるけどここいら一体マナがゼロだ。」


 リエルにはマナの流れが見えるらしくカズのマナは


村の中央の井戸に吸い込まれるように流れ込んでいた。


「村長、村の井戸に何か異常はありませんでしたか?」


俺は朴訥な村長に質問した。


「そういえば、このあたり一帯の水が汚染されて、地下水脈を探して


井戸を掘っていたのですが、それ以来、植物は枯れ作物は収穫できず、


野生の生物やモンスターも姿を消しました。」



「井戸の中に魔法陣がありますね。『なぜ吸い込める』のかは謎ですが。」


リエルは大体予測できるらしく言った。



「おそらく魔界につながっている。吸い込んでいるのではなく


向こうが陰圧だから。自然に流れていく。」



リエルは魔界も必死なのだなと思った。マナを陰圧にするなど不可能だ。


そもそもメリットがなさすぎる。単に魔界が異常なほどのマナ不足なのだろう。


ここにいるカズが魔界の野菜の8割以上を生産していたことは


天界の秘密だ。



「この魔法陣を消してしまえばいいですね。」




「大量に魔法陣を作り出しているのか、粗雑なのが俺のような


魔法素人にもわかる。」


「ここだけ解除しても他がそのままではあまり意味がないと思う、


ここから魔界に潜入してみてはどうだろうか?」


リエルの言葉に全員が同意した





「らっしゃい、らっしゃい!」


 街へ入ると景気のいい掛け声が聞こえてくる。


「ここは鉄鋼の街ハンフルク、近郊でとれる石炭と鉄鉱石で


魔王軍と戦うための武器防具を生産する一大拠点だ。」


リエルはカズに自慢げにそう語る。



「ここではな最近になって石墨を輸入して、鉄の強化版ともいえる


鋼鉄も生産しているんだ。」



「4大天使の中で我、ウリエルは炎をつかさどる。こいつらは我の敬虔な


信徒というわけだ。」


「すごいな。俺の住んでいた魔界の村は木製の鍬しかなくて


お金持ちの魔族は鍬の先に鉄の刃を付けて耕していたが


それが、うらやましくて仕方なかったです。」



カズは目をまん丸くして鍛冶屋の様子を穴があくほど凝視していた。



「ふむ、だが大量の鋼や鉄を作るには設備が足りていないな。」



「魔王軍が迫っているのに、何を呑気にしているのだ。」



リエルはよほど魔王軍のことが気になるらしく、


不安を抱えているようだ。


「魔王様はそんなに悪い人ではないですよ。もともとは吟遊詩人で


歌と踊りでMPを回復させる組織を作ったのが、魔王軍の


始まりですから。MPは魔族にとっての食糧ですし。」



「いや、この世界は2000年以上、天界が新興の宗教の反乱で


破綻し、戦国時代になることが幾度となく起こっている。


見過ごすわけにはいかないのだ。」



「それに魔族を殺したコアは人間に移植すれば魔法を使えるようになるのだ。」



カズは悲しそうに言った。



「魔族が死んでしまうよな。」



「それがどうした。悪魔だぞ。コア、人間でいうところの心臓は


魔力を操作するために重要、殺してでも大量に入手しなければ


天界も人間も困る。」



「フム、領主の館に行かねばならぬな。ここの領主は下級天使でな、


私が行けば、指示どおり行動するだろう。」



カズとリエルは小高い丘の上にある領主の屋敷にやってきた。



「カマエルよ。我である。門を開けよ。」



「そこの兵士、人間か。」



リエルは虫でも見るような眼で兵士を睥睨すると


領主を呼びつけるように言った。



「なんだ、貴様は。ブランデンブール公を呼びつけるなど


命だけで済むと思うなよ。」



兵士は職務に忠実らしくリエルの前に立ちはだかる。


リエルは兵士の頭をつかむと、魔力を凝縮させ、太陽のような


灼熱の炎を生み出した。


兵士の頭は燃えることもなく一瞬で気化して消滅した。



「我、ウリエルに逆らった罪、地獄で贖うと良い。」



「ううゎぁぁぁ、」



もう一人の門番が必死の形相で領主のもとへ走って行った。


領主に殺されるよりも、リエルのほうが怖かったようだ。


なぜか領主の寝室に通された私たちは大天使カマエルこと


ブランデンブール侯爵と話していた。



「カマエルよ。鍛冶屋で石炭を燃やして鋼を作るのは良い。


だが貴様は効率というものを知らんのか。」




叱責するリエルに対し、ブランデンブール侯はただ頭を下げ


真摯に聞いていた。



「いかようにもお命じください。」



「ウム、巨大な溶鉱炉を作りありったけの石炭をくべろ」



鋼鉄の剣と鋼鉄の鎧を作り、重装歩兵を作りだすのだ。」



「かしこまりました。」



そういうと、ブランデンブール侯は人間を集め巨大な


溶鉱炉をいくつも作りだした。


それから2カ月ほどたったころ、



「魔王軍が毒を撒いている。」



「魔王軍が川に毒を入れた。」



という風説が流れていた。



街の周辺は濃い霧がかかり、白い洗濯物が乾くころには


真黒になるレベルだ。


呼吸困難で死ぬものが大量に出ており、


日に日に魔王軍への怒りと憎しみは募っていった。


川の魚は腹を見せて浮かんでおり、それを食べた者は


ひどい苦痛のもと死んでいった。



「どうだ、カズ。この状況を見てまだ魔王軍は悪くないとでも


言うつもりか。」



得意げにセラフであるウリエルは俺が間違っていることを突き付けてきた。


「申し訳ない。魔王軍が戦闘員でない一般の民衆を苦しめていることは


知りませんでした。同じ魔族として慙愧に堪えません。」


「フム、この近くに魔王軍の幹部、魔将軍ディアボロスの城塞があったな。


私が自ら赴いて消滅させてもよいのだが、単独では無理だろう。」



「ウリエル様、私に策がございます。」



 ブランデンブール侯、天使カマエルが自信ありげに笑っていた。


「ホウ、人間をけしかけるか。」


「いえ、大地の下には井戸水のもととなる地下水脈がございます。


今人間は、魔王軍が川に毒を流したため、飲み水がなく


地下水を大量に汲み上げています。」



「魔将軍ディアボロスの城塞は強固、しかし相当な重量でございます。


このまま地下の水脈がなくなれば、大地が沈没し


城塞は崩れ去るでしょう。」



「また、あれだけの鉄の塊に押しつぶされれば、魔族とて


まず即死でしょう。」



 リエルはカマエルを讃えるかのように、大きくうなずいた。



「そのために、魔王軍に鉄材を横流ししていたのですから。


もちろん、鋼 は渡しておりません。」



「大量の魔族の心臓が手に入るな。これは僥倖だ。」




 そう言うとリエルとカマエルはにこやかに握手を交わしていた。


 カズもこの状況を見れば理解た。



「はい、魔王軍は悪です。野菜を食べているだけかと思っていましたが、


こんなことをするなんて、幻滅しました。」



「魔王は、歌と踊りでMPを回復させる仙人などではない、


悪魔の王なのだよ。」


私とリエル、ブランデンブール公の重装歩兵、重装騎兵は


魔王軍の城塞を検分するためにそこへ向かった。


だがそこにあったのは死屍累々たる残骸だった。


人間の兵士は嬉々として魔族の心臓、魔力のコアを取り出し


回収していった。


私はまだ生きている魔族の悲鳴と撒き散らかされる青い血を見て


吐きそうだった。


また、多くの魔導師が生み出されるだろう。


そして勇者も。



「大漁、大漁だー!」


 その日、ブランデルブール侯の屋敷に多くの人が押し寄せた。


魔族の心臓を移植すると死んだ魔族の魔力が宿り魔法やスキルを


使えるようになるのだ。当然病も治る。



「なぁ、カズ。勇者はどうやって生まれるか知っているか。」



面白半分であろうがリエルが聞いてきた。



「強力な魔族の血と心臓を人間の女の、子宮に入れるんだ。」



「つまり勇者とは半端な魔族ということだ。もちろん


赤ん坊の素養も関係あるがな。適合しなければ死ぬだけだ。」


 魔族の肝臓をむさぼり食う、リエルとブランデンブール侯を見て


ああ、魔族も人間も彼らにとっては家畜なのだと


実感させられてしまった。


 魔族とは堕天した神のしもべ、言いかえれば同族なのだ。


人間は知恵の実たる林檎を食べ、楽園を追い出された。


 では魔族はどうやって発生したか。



 神の名を奪おうとした。反乱を起こしたのである。


 人間の王や皇帝がやっていることは、神もまた楽園でやっていることなのだ。


 魔界村の村人であり、野菜を作る日々であったが幸せだった。


 家族がいて、隣人がいて、歌と踊りのある魔王城。


 争いなどなかった。





 その日生まれた魔導師は2000人余り、それだけでも近隣諸国にとっては


究極的な脅威だ。そして、魔将軍ディアボロスの血と心臓は、一人の処女の子宮へと


入れられた。記憶は引き継がないが、魂、存在は魔将軍そのものだ。





「なぁ、リエル。お前の話を聞く限り。俺はこの世界出身なのか?」


俺は過去の記憶がほとんどないため、何か知ってるらしきリエルに聞いてみた。


「お前は魔族として生まれ、神の御力により人間界に移動させた。そのとき


記憶の大半は消してしまったようだ」


「お前が消えると同時に、神も消滅したのだ。それ以上はわからない」




投稿用に真面目に書いた初めての作品です。




面白いと感じてもらえたり




続きが読みたいと感じられた方がいらっしゃったら




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