魔界村
「よぉ~、カズ畑仕事はもう終わりか?」
カズと呼ばれた俺は返事をする。
「もう少しマナを撒こうかと思っています」
「しっかし、お前ってすごいよな、普通の魔族は畑1つにマナを撒くのに
30日はかかるっていうのにお前どんなマナ保有量してるんだよ。」
この人は私と同じ魔界の村に住んでいる近所のおじさん
名前は村人Aとでもしておこう。
「カズのおかげでうちの村は年貢を払っても余裕で
生活できるんだよ。感謝しているよ。」
「いえいえ、大したことありませんよ。MPは多くても
知能が低いですから、戦闘の役には立たないですし、
出世も望めないでしょう。」
「一度、大きな町に行って、マナ保有量はかってもらったらいいかもな。」
魔界だから魔王に従順で手下というわけではない。
人間の国の領主と同じで搾取し、下級魔族のことなど
ゴミと同等に扱っている。
人間は殺すだけだが、魔族は同族を食べる。
正確にはマナを食べるのだ。
殺して食べていると家畜である下級魔族の数が減少し先細りだ。
だから、畑の野菜にマナを注がせ、それを食べることで補っている。
「ただいま、母さん。」
「あらあら、おかえりカズ。あなたのおかげで毎日マナを撒けるから
この村の野菜は魔王様の食卓にも上がるらしいわよ。
名誉なことね。」
そう母は嬉しそうに笑った。
俺は母がティアマト・ウシュムガル族、魔竜であり強力な身体能力を持つ、
父は魔族の主流であるサタン・バフォメット族。
サタン・バフォメット族は数が多いだけで
大した力はない。魔王家もサタン・バフォメット族だ。
だが俺はMPが多いだけでほかの能力は並みなので畑仕事以外には役に立たない。
ある日畑仕事をしていると、黒い雲が光ったと思うと意識がとんだ。
意識がなくなった後、私は私の体を薄れゆく意識の中見ていた。
『落雷』だ。ゼウスに恨まれてでもいるのだろうか。
私は意識が戻ると椅子の上に座っていた。
「わが名はウリエル 神の代行者である宝瓶宮の4大熾天使が一柱。」
流れるような黒髪と褐色の艶やかな肌をもち背中には純白の羽を3対つけた
美しい女性だった。実年齢は知らないが見た目は16歳くらいだろう。
「なぜ、魔族が神や天使の前にいるのでしょうか。」
「本来であれば、天使は悪魔を滅するものであり慈悲などかけるべきでは
ありません。しかし、近年、悪魔は力を増し、人間が滅ぼされそうになっています。
1対1で天使ですら撃退する者がいるほどです。なぜだか分りますか。」
「わかりません。」
「はぁ~~~。」
天使ウリエルは深いため息を吐くといきなりブチ切れた。
「お前が原因だ、馬鹿が!お前が強力な魔力を持つ野菜を
大量生産するせいで、力を持つ悪魔が増えた。
世界のバランスが崩れたんじゃ。」
悪魔のような表情をしているが、醜悪なものではなく非常に美しい。
「わ、わたしは畑で野菜を作っていただけです。」
「そうね、私としたことが我を忘れてしまったわ。あなたは魔族ではあっても
悪魔ではないわ。本来、魔族とは堕天使を祖とするもの、
善悪は両方必要だから存在する。」
「あなたは、殺すことも盗むことも1度もしていない。
ただ毎日畑仕事をしていただけ、だけど、このまま放置するのは危険すぎた。」
何となく話が見えてきた。
「だから、神が私を殺したと。」
「そうよ。でも私も哀れだとは思うし、心が痛むわ。
あなたは魔族とはいえ、天使や聖人並みに心がきれいだから。」
「次のあなたの人生は選ばせてあげる。ただし、人間限定だけどね」
「あなたは本当に稀有なの。天使も魔族もマナで存在を維持している。
マナがなくなれば消滅するしかないわ。
あなたのマナ保有量を見させてもらったけど
『無限』としか思えないわ。神すら凌いでいるということよ。
まあ、ほかの能力は並みの魔族ね。」
「わかりました。人間として転生します。」
熾天使ウリエルは手をかざすと人間界への扉を開き、魔法陣が現れた。
次に意識が戻った時、丘の上の草原に立っていた。
投稿用に真面目に書いた初めての作品です。
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