オサラギ 仲間になる。
エイジマがふと気が付いたのだが、俺とツユハラは薬草採集だけをしていたので
冒険者として登録していないんじゃあないかと言い出した。
「えっ、冒険者ギルドに登録はしたよ」
「いや、あんたたちの身分証明書見たけど生産者として登録してあるだけで
冒険者として登録はしてないよ」
「たしかに、俺は戦闘しても無駄だと思ってたから登録してないと思う」
「それなら朝食食べ終わったら、冒険者ギルドに行こう、登録しないままだと
モンスター倒しても、報酬がもらえないし、社会的な名声も得られないよ」
「確かにそれは困るな」
「当冒険者ギルドでは新規での登録は行っておりません。新規登録される方は、
ビギニングビレッジでのみ受け付けております」
少し小馬鹿にしたような口調でラグスブルグ冒険者ギルドの受付に
冷たく言い放たれた。
まぁ、毎日ひたすら薬草採集をしているところに突然、エイジマがもうけ話を
持ってきたのだから当然だろう。
ドラキチに乗ってビギニングヴィレッジまで戻ることにした。
「本当に私も同行してもよろしいでしょうか?」
亡国の姫エステルは戸惑いながら俺に質問してきた。
「あんたが生きてる限り、ジェノーヴァ帝国本土から援軍が送られてくる。
ピレス将軍が王女を連行中にモンスターに襲撃され群れの餌食になったと
偽装しているんだ。あんたが居たらまずいだろう」
「俺はともかく、露原はあんたを置き去りにできるタイプじゃあないからな」
ドラキチにリュックのような、かごを装備して空路を安全に移動できるようにした。
もともとこの街の近くまではドラキチに乗ってきたのだが、超人3人と
かよわい「お姫様」を同じ扱いはできない。
「まるでランドセルを背負う小学生だな」
準備が整ったので出発すると間もなく、上空から何かが舞い降りてきた。
「!!!!!」お姫様が叫んだ。
「我が名はバフォメット、至高にして最強の竜王」
自称ではなく本物の竜王は俺に呼びかけた。
「拙者はドラキチ、エンシェント種のウルティメットドラゴンでござる。
なにか用件でござるか?」
「このあたりで竜騎士がジェノーヴァ軍を救ったと聞いているが貴公か?」
俺はドラキチに言っていると思っていたのか無視していた。
「そこの雑魚の竜族に聞いているのではない。貴様だ。御者。」
俺でも聞いたことがあるくらい有名な竜バフォメットだが、
正直、年老いた弱い竜にしか見えない。
「ああ、結果的には助けたけど。」
「事情を聴きたいのだが同行してくれまいか?」
「無理、用事があるから。また今度だな。」
「小僧、舐めているのか。」
竜王は怒りをあらわにした。
「じゃあ、リュック背負った状態のドラキチを叩き落したら
同行してやろう。」
竜王バフォメットは種族的には確かに強い。ドラキチは極竜種。
極竜種は確かに強いが雑魚で最強の竜族だ。まともに戦って勝てないはずだ。
だが竜王は見落としていた。ここにいるドラキチは数十万の同胞を
喰らってきた化け物じみた経験をした個体であることを。
気が付いた時には竜王バフォメットは海に滑落していた。
ドラキチはすでに水平線の彼方だ。
「化け物か!」バフォメットの意識は途絶えた。
ラクスブルグからビギニングビレッジは惑星の正反対の位置にある。
竜王というちょっとした邪魔は入ったが、13時間ほどで到着した。
「さて、冒険者ギルドに登録に行くか。」
お姫様は疲れ切っているようで、それを察した、英島が「とりあえず休憩」
と宿屋に向かうことにした。
「俺はテイマー、お姫様はどうする?無職?」
「そんなわけないだろ。」と英島が真剣に言う。
「お姫様、得意な技とか魔法あるの?」
「回復魔法ならある程度はできます。」
「このパーティー、ヒーラーいなかったしちょうどいいや。入る?」
スラリンの存在は伏せて置いた。
「私たちに付いてきたらすぐに熟練になるよ。」
英島がやさしく言った。
当然、ウルティメットドラゴンを狩り殺す作業だ。
翌日、朝飯をみんなで食っていると、英島が背乗りのごとく
お姫様の身分証明書を持ってきた。今日からお姫様は
おフランスな感じで、『オサラギ ミノリ』だ。
「よろしく、おさらぎさん。」
投稿用に真面目に書いた初めての作品です。
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