〜無能者〜
「無能か………殺せ」
どうしてこうなったんだ……
〜死刑宣告1時間前〜
ガタン
痛った!?
「あれ?ここは何処だ?」
俺はよく分からない魔法陣で何処かに飛ばされたらしい。
周りを見渡すと……明らかに牢獄だった…
廃れて傷だらけの鉄格子に、小さな小窓用の鉄格子、出入口と思われる鉄格子…
「牢獄への転移か?これ」
俺は先程から鉄格子越しこちらを見ている派手な格好をしたおじさんに声をかけた。
「НЙЩЁДМП」
何言ってんだこの人。
相当ヤバいやつってのは理解出来たけど話が通じなきゃ意味が無い…
「これで聞こえるかね」
うわっ!?日本語で話して来た!どういうことだ?
「あ…あぁ」
とりあえず話せることはわかったから相槌をうつことにした。
「いきなり呼び出してすまない…君には世界を救って欲しい」
世界を…救う?
やっぱ俺、異世界転移したらしいな。
「ここは魔法と武器の世界、クライシス」
クライシス……
「ここは君たちが住んでた【地球】ではないことをまず理解して欲しい」
「あぁ…やっぱりそうなのか」
「この世界は今、我々人間族、エルフ族、霊身族、獣人族そして悪魔族で構成されている。それぞれの種族が争いをしていて、その中で、我々人間族は周りに比べて戦闘力において大きく劣っていた」
「ただ、人間族にも対抗する術があった。それが君のような転移者だ。転移者は普通の人間に比べて高い身体能力、魔法を扱うための魔力適正、そして特別な【スキル】があった」
「……だいたい内容は理解出来た。ただ、だとしたらなんで人間族の希望と言っても過言ではない俺が牢獄のような場所に入れられている?」
「力が強大すぎるあまり、やろうと思えば1人で国1つを破壊できてしまう可能性があるからだ。ここは王都から約80km離れている丘の地下の召喚場だ」
「なるほど。で俺はこれからどうしたらいい?」
俺にそんな力があるとは思えないし、あったとしても国の言いなりにはなりたくない。今まで平凡な生活をしてたから異世界に行くのが夢だったんだ。折角転生できたなら第2の人生として楽しみたい。
「……やることは細かく言えば色々あるが、大体は悪魔族を滅ぼして欲しい」
「仮に断るとしたら?」
「強大な力を野放しには出来ないので、奴隷になるか死か選んでもらうことになる。」
転生した直後に死ぬのは嫌だな……適当に了承して好きなことするか。
「わかった。協力させて貰おう」
「そう言っていただけて嬉しい限りだ……スキルを確認したいから〘能力公開〙と言ってステータスを見させて貰っていいかな?」
「能力公開」
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桜木葵 レベル1 スキル【ゼロ】
職業:無職
攻撃力 209×0
防御力 150×0
魔力 253×0
素早さ 304×0
称号
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……は?
「ステータスが0だと?この転移者は我々人間以下ということか?」
「スキル【ゼロ】ってなんだ?」
「無能か…奴は雑魚だ警戒する必要がない。さっさと殺せ」
と、今に至る……せっかくの転移で早速死にそう……
おっさんの背後にある影から人が2人でてきた。
「スキル無しだ、殺して素材にするぞ」
「はい。今すぐ。」
あ〜俺死ぬのかな。てかこんなことになるならもう少し平凡な毎日を彩るべきだったんだろうな…
スパッ
それはあまりにも呆気なく、痛みもない。
殺されたかすら感じ取れない。とても静かな死だった。
『スキル【ゼロ】発動』
「……え?」
辺りを見渡すとそこにはよく見てきたビル…そしてスマホの時計には4:32と書いてあった。
サブタイトル「むのうもの」と読みます。分かりずらくてすいません。
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