秋:実り
夫は柿が嫌いである。
『猿の食べ物』 と言い切る。
なのに、構わず大量の柿を送ってきてくれる…… それが、夫の親。
夫が嫌いなので食べきれない、と訴え 『食べさせてちょうだい!』 と言い放たれた時の衝撃は、今でも覚えている。
新婚当初は、使いきらねばならぬ、と真面目に思い込み、色々な工夫をしてみたものだ。
★柿の白和え ⇒ ✕
果物をオカズに使う時点でアウトらしい。
――― ちなみに同じ理由で、リンゴとホウレン草のサラダも家族皆に超不評だった。
何の先入観もないはずの子供たちもまた、夫と同じく果物をオカズに使うのが許せない人種だったのだ…… 遺伝子の力!
★柿羊羮 ⇒ ✕
柿をミキサーにかけて濾してブランデーと砂糖で味付けし、寒天で固める。柿そのもの、との評価をもらった。おかしい。
柿の甘味を活かしつつ、柿っぽさを抜いたオシャレ和菓子のハズなのに。
★柿のタルト ⇒ ✕
普通に美味しくできた。しかし、やはり夫は嫌がった。どうやって処分したか覚えてないが、 『これならむしろ、手を加えずカットフルーツのままの方が消費しやすい!』 という悟りはしっかりと頭に残った。
結果、翌年から送ってきてもらう柿は大半が放置されることとなった。
もう、廃棄ボランティアも親孝行のうち、と思うしかない件…… と諦めていたら、最近、子供たちが食べたがるようになり、残らなくなった。
固めの柿は普通にカット。
柔らかくなった柿は、半分に切り、ゼリーのようにスプーンですくって食べる。
時々、蟻が入ってる。
昔はいちいち 『ぎゃぁぁぁ!』 と思っていたが…… 慣れた。
一方で、栗はといえば。
これは、最初からお手上げである。
栗が食べたきゃ、市販の 『剥いちゃいました』 的なのとか、屋台のポン栗を食せば良い。
飾りとしての見た目は好きだが、わざわざ多大な労力を使うだけの価値をその味に見出だせぬ。
昔の人も 『九里より美味い八里半』 なんて言っていたそうだが全くその通りで、同じ系統なら確実に、芋の方が美味い。
…… だが。
なぜか、夫は栗の方には情熱を燃やす。
送ってもらうと、熱心に湯がき皮を剥き、栗ご飯を拵えてくれる……
いや、そのままじゃダメだよ。ダシと酒は入れなきゃ美味くならないよ…… と言いたくなるが、黙って見守る。
私の仕事にしたくない、金輪際。
毎年、栗の味しかしない栗ご飯が食卓に並ぶのも、そろそろ我が家の風習になりつつある。
写真のドングリは子供と拾った。
これまた、多大な手間を掛ければ食べられるらしい…… 気になる。