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秋:オシロイバナ
オシロイバナ。
この町に来て、数十年ぶりに出会った。
珍しくはないが、庭に植えているのにはあまりお目にかからない。
公園の片隅、ちょっとした空き地に、ひっそりと生えている。
花の時期になって初めて 「ああ、お前だったのか」 と気づいた。
咲いていてさえ、地味めな方である。
子供の頃の私も、花を愛でたことはなく、目的はひたすら種であった。
種を割っては中の白い粉を取り出して集める…… 秋が深まると、学校帰りの道端で、そんな単調な遊びを熱心に繰り返していたのだ。
集めて、特にどうするというものでもない (本当に化粧品として使われていた時代があったことさえ、当時は知らなかった) 。
ただ集めることで、満足していた。
思えば無駄なことに膨大な時間を費やしたものだが、それもまた、子供ならではの贅沢だったのかもしれない。