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初秋:ヒガンバナ
先週までの涼しさに、秋に 『初』 をいつまでつけようか迷った。タイトルの話である。
しかし、今週は暑さぶり返し。
暑さ寒さも彼岸まで、というが、それならば、 『初秋』 のラストはこれだろう。
曼珠沙華、という有名かつカッコいい別名があるにも関わらず、やはりどうしてもヒガンバナ。
さらにはシビトバナと呼ばれることもあるとか。
昔、母から教えられて 「ひでぇ」 と思った記憶。
しかし、なんとなく暗く寂しい花である気もするのは、咲く場所のイメージからだろうか。
ホラーやミステリーの一節とかにありそうだ。
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「死人花? ずいぶんなネーミングだな」
「ほら、花が死人の指に似ているでしょ? だからだそうよ」
彼女はふふっと笑って、色が抜けて骨ばった指を、血よりも赤い花弁に添えてみせた。
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みたいなのが。
素直に見れば、華やかで美しく、好きな花のひとつである。
盛りは意外なほど短い。
雨の後、いっせいに咲いたと思えば翌日にはもう、しぼみはじめている。
彼岸花 会うたびごとに 父母は老い




