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秋:姫蔓蕎麦~ヒメツルソバ~
『花野』 というと春の野原のような印象を受けるが、その実は秋の季語である。
得々と語って 『そんなの知ってるわ』 とか思われたら、ちと恥ずかしいが、中学生の頃にそれを知った時には、確かに衝撃だったのだ。
秋の花が咲き乱れる野に、わざわざ名を与えて愛でる感性は、美しい。
その言葉と共に知った、とある和歌の意味合いは、『秋の野には紫色の花が多くてどこか寂しい』 といったもので、それと合わせて私の 『花野』 のイメージは出来上がった。
……が。
ヒメツルソバ。
道端のどこにでも咲く、丸く小さなこの花を見ると、なぜか 『花野』 と思ってしまう。
昔の女の子たちはこの花を摘んでお椀に入れ、ママゴトをして遊んでいたそうだ。
そうした話に感じる妙な懐かしさが、美しくも寂しい秋の野原と結びついたのだろうか。
私の 『花野』 は今、少し色褪せたようなピンクである。
しかし実は外来種だそう。