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晩春:たんぽぽ(綿毛)
花にほぼ興味の無い子どもたちが好きな花。それが、たんぽぽである。
彼らはなぜか、たんぽぽの花を見つけると 『母に捧げねば』 という衝動に駆られるらしい。
「はい、プレゼントだよ」
「ありがとう。 (その気持ちが) 嬉しいわー (けど、どうすんねんコレ……)」
取りあえずカバンにつける。
カバンで誤魔化そうとしたら、頭につけて、とリクエストされたこともある…… おいおい、あたしゃ大人なんだよ。
とも言えないから、しぶしぶ頭につけてスーパーに行く。
おそらくは、皆さん (10人いたらうち8人程度は) 微笑ましく眺めてくださるだろう、と己を無理やり納得させる。
そのうちプレゼントした方もされた方も、その存在を忘れ、いつの間にか花は消えている。
…… で、消えずに残った花を瓶に挿し、しぼんでも、捨てずに残しておくと。
なんと、綿毛になるのである!
「おおい。これ、吹いて遊ぶ?」
家の前にキラキラ綿毛を飛ばしたら、何となくミッション終了。
晩春は、子どもたちが綿毛を吹きながら道を歩く季節である。




