春:つくし、たんぽぽ、キュウリグサ
子どもの頃の春の思い出というと、私の場合は、つくし一択である。
生まれてからもう何十年も都会っ子をしているが、春休みには田舎に行っていた。
レンゲが無くなった後も、ツクシは田の畔にドンドコ生えていたから、特に娯楽もない田舎で子どもたちは、つくしを乱獲して遊んでいたのだ。
何に使うのか、といえば食べるのである。
袋いっぱいにとったつくしは、一本一本ハカマをむく。胞子で爪の中も指先も真っ黒になる。
それを母が湯がいてアクを取り、甘辛く煮付けて食卓に出す。子どもにとっては、ほろ苦くてクセがあって美味しくない。
その都度 「京都の料亭では2、3本チマッと出てくる高級食材なのよ」 と母は主張していたが、だから何、って感じである。
しかし自分でとってきたから、仕方なく食べる。一応 『美味しい』 と感想も述べる。
しかし余る。
余った煮付けは卵焼きにリメイクしていた気がする。
それでも余る。
余っても、毎日とりに行く。
…… 今思えば、大人たちも消費するのが大変だったろう。
そして、タンポポ。
和むよね (えっそれだけ)
キュウリグサ。
といえば、連想するのが 梨木香歩 『西の魔女が死んだ』 だ。
主人公が祖母の元で 『ヒメワスレナグサ』 と名付けて育てていた花。祖母が亡くなった後で、近所のオッサンが言うのだ。
『キュウリグサがやたらと生えてるのお』 とか。
祖母の心情にしみじみくる、名シーンである。




