冬:寒椿と冬枯れ
幼稚園への道の途中に咲く椿。
冬の登園中のひそかな楽しみである。
この木、不思議なことに同じ枝に赤い花と白い花が両方つく。
……といいながら、なぜ白い花しか撮ってないかといえば、濃い緑の葉に沈んで赤が目立たぬゆえに……
そしてきっぱりとしたオチのないままに、やる気スイッチのイマイチ入らぬ下の子を押したり引いたりしつつ登園すれば、帰り道に目につくのが冬枯れで姿を表す繊細な枝ぶり。
冬といえば印象に残るのは、遠藤周作 『王妃マリー・アントワネット』 でフェルセンさんがマリー・アントワネットとの出会いの折りに語る台詞。
「フランス語の中でも、私はこの 『冬』 という言葉が特に美しく思えるのです」
仮面舞踏会で正体の分からぬ貴婦人その実アントワネットを、フェルセンさんは 『冬の貴婦人』 と呼ぶのだ。
超萌える。
もう1つは、清少納言 『枕草子』 の有名どころ 『冬はつとめて』。
『枕草子』 ちゃんと読んだ記憶はないが、ここが特に好きである。
冬の早朝の冷えきった澄んだ空気、その中で赤く起こる炭火。
あと、なんだったか。
子供の頃読んだ戯曲 『森は生きている』 も内容はすっかり忘れたが、そこに描かれた厳しくも美しい冬の情景が印象的だった思い出。
冬を美しい、といえる人間の精神を私は美しいと感じる。
とか言いつつ、幸せなのは家の中でぬくぬくダラダラ過ごす時間。暖房器具のない冬は絶対に要らない派である。
私が好きなのは冬じゃなくて 『冬もいいよね!』 って言える人なのだと思う。




