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初冬:ゆず
ゆず。
近所の庭の木に日の光を集めたような実がなる頃、我が家にもどさっと送られてくる。
スーパーに比べ色も形も良くないが、香りは反比例らしい。
置くと部屋中に柔らかく清々しい柑橘の匂いが満ちる。
「冬至まで置こうよ」 「すぐ使えばいいやん」
しばらくルームフレグランスにしておきたい私と、すぐに風呂に入れたい夫の攻防は、大抵夫の勝ちである…… 目を離した隙に、豪快に全部風呂につっこまれているのだ。
せめて少しずつ使って冬至まで持たせてくれればいいのに。
ジュース並みの色と香りを誇るある意味贅沢な柚子湯に浸かりつつ、少々複雑な思いになる、冬至前。
そして冬至の今日はスーパーで買った柚子の香りの入浴剤を使う……




