初冬:落葉
落葉を踏む時のカサカサした音が好きだ。
子供の頃には堂々と、大人になってからは何食わぬ顔でコッソリと、枯れた落葉の上を歩いている。
子供たちにも教えてみたが、ひとまず喜ぶものの、あまり反応は芳しくない…… ふむ。
落葉など無視して駆け出すヤツらを、慌てて追いかける。晩秋から初冬にかけて、そんな攻防が続く。
子供らが興味を持つのは、むしろこちら。
季節には道を彩り、街路樹付近の住人たちにタメイキつかせるイチョウである。
しかし子供たちは、『キレイな黄葉』 として注目するのではない。
「この黄色いケーキ踏んだら負けね! はい、お母ちゃん負けー」
道いっぱいに落ちてるというのに、どうやって避けろというのだ。
もちろん、ヤツらも踏んでいる。
踏んでいるくせに気づいていない。
お互いに 「踏んでる、負け」 を言い合いつつ走っている。
…… 子供としたいのは、平和にキレイな葉っぱを拾い、押し葉にしたり工作に使ったり…… ということなのだが。
そんな日は来なさそうである。
仕方なく、ひとりで集めて玄関に飾っていると、夫が首かしげて曰く。
「それ、何に使うん?」
…… 風呂にでも、入れるか。




